非接種者にも予防効果?ファイザーとモデルナ副反応の違いは?心筋炎の頻度は?新型コロナワクチン最新知見
医療従事者、高齢者への新型コロナワクチンの接種が広がっています。
承認後も新型コロナワクチンに関する知見は増え続けており、明らかになってきた新型コロナワクチンに関する最新知見をご紹介致します。
mRNAワクチンとは?
現時点で国内で承認されているのはファイザー/ビオンテック社、そしてモデルナ社が開発したmRNAワクチンと、アストラゼネカ社が開発したウイルスベクターワクチンの3つですが、現時点では実際に接種が行われているのはmRNAワクチンのみです。
mRNAというタンパク質を生成するために使用する情報細胞を運ぶ設計図が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白、つまりウイルス表面のトゲトゲした突起の部分を作る指示を伝える役割を果たしています。
ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くのマクロファージに取り込まれ、細胞内のリボソームという器官がmRNAの情報を読み込み、スパイク蛋白を作ります。
その後、スパイク蛋白はマクロファージの表面に現れると、このスパイク蛋白に対する抗体が作られたりT細胞を介した免疫が誘導されることで、新型コロナウイルスに対する免疫を持つことができます。
生きたウイルスはワクチンの中には入っておらず、また遺伝情報を体内に接種すると言っても、それによって人間の遺伝子の情報に変化が加わることもありません。
新型コロナワクチンの「ぱねえ」効果とは?
感染そのものを防ぐ効果
当初、mRNAワクチンは「発症を防ぐ」のであって感染そのものを防ぐかどうかは分かっていない、と言われていましたが、感染を防ぐ効果も分かってきました。
リアルワールドにおいて、2つのmRNAワクチンは91%という「ぱねえ」感染予防効果を示した(ファイザー 93%、モデルナ 82%)とアメリカCDCから報告されています。
3,975人の医療従事者、ファースト・レスポンダー(救助隊・救急隊・消防隊・警察など)、エッセンシャル・ワーカーを対象に、17週間連続で毎週新型コロナウイルスのPCR検査が実施されました。
その結果、症状の有無にかかわらず、新型コロナワクチンの2回の接種から14日以上経った人は91%の感染予防効果が示されました。
発症を防ぐことと、感染を防ぐことと、何が違うのか、別に本人にとっては同じじゃないか、と思われるかもしれません。
確かに本人にとってはあまり大差ないかもしれませんが、ワクチン接種者が感染しにくくなる、ということは、接種者がその周りの人に感染を広げる可能性が低くなる、ということです。
若くて持病もない人の中には「どうせオレ、感染しても重症化しねえし・・・接種しても意味ねえし・・・」と思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の家族や周りの人を感染から守ることができるのであれば接種する意義は十分あると言えるのではないでしょうか。
接種者だけでなく、接種していない人にも恩恵が
実際にワクチン接種が進んでいる地域では、接種した人だけでなく、接種していない人でも感染者が減っているというデータも出てきています。
177の地域・集団を対象にワクチン接種率と感染者との関連を調査した研究によると、ワクチン接種率が高い地域では、接種を受けた人だけでなく、接種していない16歳未満も感染者が減っていることが分かりました。
接種率が20%上がるごとに、ワクチンを受けていない集団の新型コロナの感染が約2倍減少したとのことで、これらの結果は、ワクチン接種が、接種を受けた人を守るだけでなく、その地域の未接種者をも保護することを示しています。
お子さんがワクチンの接種対象年齢から外れており不安に思われている方も多いと思いますが、家族が接種することで間接的にお子さんを守ることにも繋がります。
感染したとしても重症化しにくい、周囲に広げにくい
さらに、ワクチン接種をしても新型コロナの感染をゼロにできるわけではありませんが、先ほどのCDCからの報告によるとワクチン接種後に新型コロナに感染した人は、ワクチン未接種で感染した人と比べて、
・排出するウイルスの量が少なく、排出する期間が短い
・無症候性感染者の割合が高い
・症状のある期間が短い
ということが分かっており、自身も重症化しにくく、周囲にも感染を広げにくいと考えられます。
変異ウイルスに対する効果は?
現在、世界中に広がっている変異ウイルスですが、今日本国内で主流となっているイギリス由来のアルファ変異ウイルス(B.1.1.7)については、ワクチンの効果はほとんど落ちないと考えられています。
ファイザーの接種後6ヶ月の解析結果では、変異株が大多数を占める南アフリカにおいても100%の予防効果を示したとされる一方、カタールからは75%まで低下したとの報告があり、まだ定まった見解がないところですが、少なくとも「ワクチン接種をしても変異ウイルスには効果がない」ということはないでしょう。
ファイザーとモデルナ 2つのワクチンの副反応の違いは?
従来のワクチン、例えばインフルエンザワクチンなどと比べると副反応の頻度は高いと言われています。
接種部位の症状として腫れ、痛み、発赤などがあり、全身症状としてだるさ、頭痛、筋肉痛、寒気、発熱などがあります。
1回目よりも2回目の方が副反応の頻度が高く、またアメリカCDCからの報告ではファイザー社よりもモデルナ社のmRNAワクチンの方がわずかに副反応の頻度が高いようですが、ファイザー社のワクチンの方を選ぶほどの差はないと考えて良いでしょう。
これらの副反応は接種後2日くらいまでにはほとんどの人で消失します。
また、日本国内での接種者では「若い人」「女性」でこれらの副反応が多いことが分かっています。
アナフィラキシーの頻度は
mRNAワクチンはアナフィラキシーが起こることがあり、何らかのアレルギーのある方、過去にアナフィラキシーを起こしたことのある方で起こりやすいことが分かっています。
また、これまでの報告では男性よりも女性でアナフィラキシーが多く、大半が接種後30分以内に起こっています。
いずれもmRNAワクチンの成分であるポリエチレングリコール(PEG)が原因と考えられており、PEGにアレルギーのある方は原則として接種できません。
アメリカではファイザー社のワクチンで4.7〜11.1件、モデルナ社のワクチンで2.5件となっていますが、イギリスからはモデルナ社のワクチンの方がアナフィラキシーの頻度が高くなっています。
日本国内では、ファイザー社のワクチン接種後のアナフィラキシーは100万人あたり89件、モデルナ社のワクチンは5月30日時点ではアナフィラキシーの事例は報告されていません。
mRNAワクチン接種後の心筋炎の報告
国内外で、mRNAワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を起こした事例が報告されています。
心筋炎は心臓の筋肉に炎症が起こり心臓の機能が低下したり不整脈が起こる疾患であり、心膜炎は心臓を包んでいる膜に炎症が生じる疾患です。
アメリカ、イスラエルからのそれぞれの報告はいずれも、ほとんどが接種後4日以内に生じており、20歳未満の男性に多く、1回目よりも2回目の接種で起こりやすいようです。
日本でも5月30日までに8件の心筋炎・心膜炎が報告されており、このうち7名が男性、6名が40歳未満とのことです。
軽症例が多く、また頻度も稀であることから、現時点では若年男性のワクチン接種の推奨は変わっていません。
以上、新型コロナワクチンについて分かってきたことをご紹介しました。
今後ワクチン接種が広がることによって、重症者が減ることが期待されます。近い将来の医療機関の負担を減らすためにも、ぜひ前向きにワクチン接種をご検討ください。