ギリシャショックで原油相場も暴落
ギリシャが7月5日に実施した緊縮財政策の是非を問う国民投票で緊縮策の否決が確実な情勢となる中、コモディティ市場では原油相場が急落している。
NYMEX原油先物相場は、米市場が独立記念日の3連休を迎える前の7月2日終値が1バレル=56.93ドルだったのに対して、週明けの時間外取引では一時54.44ドルまで値下がりし、4月13日以来の安値を更新している。下落率は4.4%に達しており、原油価格の1日の価格変動率としては異常とも言える値動きになっている。ICEブレント原油先物相場も4月10日以来の60ドル割れとなり、直近高値70.92ドル(5月16日)からは10ドルを超える急落になっている。
ギリシャ政府の債務支払いが不可能な状況になっていることに加えて、預金引き出し制限を行っているギリシャの銀行の資金枯渇も警戒される中、ギリシャ発の金融・経済危機に対する危機感が、投機筋にリスクマーケットからの資金引き揚げを迫っている影響である。加えて、為替市場でユーロ売りの動きが加熱する中、相対的にドルが買われ易くなっていることも、ドル建てで取引されている原油価格に対しては強力な押し下げ要因になる。
石油輸出国機構(OPEC)が大規模な増産政策を展開する中、元々、国際原油需給バランスは緩んでいた。世界各地で在庫の積み上がりが報告されており、「原油相場急落→シェールオイルの生産鈍化」と「原油相場急落→石油需要拡大」という二つの大きな流れを以ってしても、需給緩和状態を否定するには至らなかった。特に今週のイラン核協議の結果次第では、日量100万バレル規模の増産余力を有しているイランが国際原油市場に復帰する可能性もあり(参考:イランショックを警戒する原油相場)、ドライブシーズンという夏の石油需要期を迎えているにもかかわらず、原油供給には余剰感が強くなっていた。
それにもかかわらず、米国におけるガソリン供給が一部で不足したことや、為替市場でドルが反落していたこと、チャートが戻り歩調を形成していたことなどが、原油相場をサポートしていた。WTI原油先物相場の場合だと、約2ヶ月にわたって60ドルの節目前後で膠着気味の展開が続いていた。
こうした中、ギリシャショックが原油価格の必要以上の高値是正を促すトリガー(引き金)になったと評価している。元々が、需給を無視した高値水準を維持していた相場であり、原油価格の本格反発はなお時期尚早であることが、今回のギリシャショックによって改めて露呈した格好になる。ドルインデックスの水準を考慮すれば、WTI原油が改めて50ドル割れを試しても違和感はない。