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「危険だから行きたくない」北朝鮮、ウクライナ派遣の労働者を選抜

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 北朝鮮は本当に、ウクライナ東部に労働者(一部は兵士)を派遣するかもしれない。

 ロシアのアレクサンドル・マツェゴラ駐北朝鮮大使は7月18日、ロシア国内メディアとのインタビューで「北朝鮮と共和国の協力の可能性は非常に幅広い」と話した。マツェゴラ氏が言及した「共和国」とはウクライナ東部で親ロシア派勢力が独立を宣言した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」のことだ。北朝鮮は13日、ロシアとシリアに続き両地域を国家として承認した。

 また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が今月1日付で報じたところによると、ドネツク人民共和国のオルガ・マケエバ駐露大使は最近、北朝鮮の申紅哲(シン・ホンチョル)駐露大使とのオンライン会議で、ドネツクの指導者デニス・プシーリン氏が「北朝鮮を訪問して金正恩総書記に会う準備ができている」と伝えたという。

 RFAによれば、プシーリン氏は先月21日、ロシアの国営テレビとのインタビューで「ドンバス地域の再建を熱望しており、現在はマンパワーと建設業者が必要だ」とし、「北朝鮮はそれらを持っており(ドンバス再建を)ともに取り組んでいく」と明らかにした。

 同氏は、「北朝鮮も新たな財源確保に関心を示すだろう」としながら「北朝鮮とドネツク人民共和国は(ドンバス再建で)相互利益を見出すだろう」と語ったという。マツェゴラ氏は前述のインタビューで、北朝鮮とドネツクとルガンスクの両共和国との鉱工業製品や農産品の交換の有用性について説いていた。

 これはつまり、「労働者を送れば対価をモノで払う」というロシアからの提案だ。経済難に苦しむ金正恩氏が、これに応じる可能性は小さくない。

 実際、デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によれば、北朝鮮当局はすでに、ドンバスに送り込む労働者の選抜を行っている。

(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘

 北朝鮮は、既にロシアで働いている労働者をまずドンバスに送り込み、ロシア政府から要請があれば、北朝鮮国内から追加で人員を送り込む計画だ。

 北朝鮮は2020年1月以降、新型コロナウイルス対策で国境を封鎖し、一切の出入国を許していないが、そんな中でもロシアに労働者を派遣している。そして、その一部は軍に所属する兵士だ。

 一方、労働者の間では、ドンバスは戦争状態にありリスクが高いのに、危険な労働を強いられるばかりで報酬が高くないとの噂が流れ、「行きたくない」という人も多いとのことだ。

 そのため、平壌では思うように人員が集まらず、派遣待機リストのほとんどが地方出身者で埋められている。ただ、今のところ派遣命令は出されていない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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