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【富田林市】いよいよ寺内町の万里春でクラフトビール醸造が始まりました。レストランは11月上旬開業予定

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

10月と言えばハロウィンや運動会が思いつきますね。富田林ならあの大型のだんじりが動き、俄(にわか)が奉納される秋祭りが頭に浮かぶかもしれません。しかし、ビール通であれば、ビール祭り「オクトーバーフェスト」ではないでしょうか?

画像はイメージです
画像はイメージです

オクトーバーフェストはドイツで2週間行われる世界最大のビール祭りですが、最近は日本でも大小のオクトーバーフェストが行われています。そんなビール通がビールを美味しく飲むこの時期に、寺内町にある万里春酒造(株)にて、ついにビール醸造が行われると聞きました。

今年の夏訪問時
今年の夏訪問時

万里春(バンリノハル)醸造(万里春酒造株式会社)さんに関しては、1年半前に古い酒蔵をリノベーションしてクラフトビールのブルワリー(ビール醸造所)を目指すための意気込みに関する記事を書きました。

通称名は万里春醸造(ブルワリー)ですが、酒蔵時代からの伝統の名である万里春酒造という法人名(株式会社)は残しました。

今年の夏訪問時
今年の夏訪問時

今年の夏ごろにはほぼ工事が終わり、醸造設備も入っていましたが、肝心の醸造免許の認可が下りるのに時間がかかったそうで、認可が下りた10月初めにようやくビールの醸造が可能になりました。

そして、醸造する日に万里春醸造さんにお邪魔しました。

寺内町の古い街並みを歩いていくと万里春醸造さんが見えてきます。

古い蔵に見えますが、中には万里春酒造(株)さんのレストラン(万里春醸造ビアホール)ができています。

鉄筋の建物に醸造設備が置いてあります。中に入ってみましょう。

中の様子です。夏の時にすでに設置されていましたが、酒造免許の認可が下り、10月4日から仕込みがスタートしました。

機械が稼働している様子がわかります。それ以上に醸造担当者の南さんや代表の石田さんが非常に明るい表情で出迎えてくださったのが印象的でした。ようやく免許の認可を受け、ビールの醸造が始まったのですから、その気持ちが解ります。

醸造設備の横にはトイレも新設されていました。

トイレは今話題のジェンダーフリーのようです。

この日の仕込みが始まりました。この日は南さんの修業時代の仲間、愛媛の今治街中麦酒(外部リンク)の醸造長の中島俊一さんと醸造担当の吉崎稔さんの応援がありました。

こちらは麦芽(モルト)です。ビールの主原料ですね。

麦芽とは発芽した大麦のことです。このあと麦汁を取るために粉砕していています。

こちらは少し色が違いますね。ローストした麦芽です。ビールに色を付ける際に使われるもので、今回醸造するビールのスタイルはアンバーエールと少し赤い色のついたビールを仕込むということなので使われます。

前日はペールエールが仕込まれたとのこと。このあと仕込む予定のビールは、大麦麦芽と小麦を使用するヴァイツェンと、黒いビールでギネスビールと同じスタウト、それから今、世界中で人気のHazy IPAを醸造するそうです。

南さんが、あらかじめ計算していた麦芽を入れていきます。

入れているタンクの中にはお湯が入っていて粉砕した麦芽を入れて拡販することで麦汁が出来上がっていきます。

用意していた麦芽をすべて入れていきます。南さんの話では500L仕込むとのこと。

麦芽を入れ終わると撹拌していき、麦汁を出していきます。

常に中の様子を見ながら、間違いないかチェックします。

私も見せていただきました。タンクの中はこのようになっていて、麦汁が出始めているのがわかります。麦汁はやがて糖化していき、ビール酵母の好きな甘い汁になっていくわけですね。

拡大しました。下に見える塊は麦芽の粕です。

さて、仕込みには時間がかかります。私はぜひとももうひとつの主原料、ホップの投下まで見たいと思っていましたので、空いている時間に石田さんにレストランのほうを案内していただきました。

こちらは元酒蔵の醸造設備があったところですが、席が置かれています。元酒蔵の高い天井が上手く利用されており、完全にビアホールになっていますね。

レストランの厨房側です。映っているのはレストランのシェフ。レストランはまだ具体的な日程は調整中とのことですが、11月上旬にオープン予定。あと1ヶ月後には万里春醸造さんのビールと美味しい料理が味わえるのですね。

そして、こちらにはタップが並んでいます。これを見るだけでビールファンはたまりません。現在ビアホールのアルバイトを募集中とのこと。興味のある方は応募してみてはいかがでしょう。

また、立ち飲みスペースもあります。軽くビールを飲んでという人向けですね。

その逆にくつろげる場所として囲炉裏のある席もあるとのこと。レストランのほうはまだ途中ですが、どうなるのかオープンが待ち遠しくなりました。

ちなみに、レストランの入り口がこちらになる予定。

外から見るとこうなります。古い蔵の中にはクラフトビールが飲める空間、早くも寺内町観光の目玉になりそうです。

こちらは万里春醸造オリジナルビアグラス。石田さんの話ではまだ暫定の試作段階で内容が変わる可能性があるとのことでした。それでも「万里春」と大きく書かれたグラスで飲むビールは出来上がる前から美味しい気がするのです。

醸造施設側に戻りました。これは上から撮影した全景です。

ビールを発酵・貯蔵するタンクです。今回の仕込みでは5種類のビールを製造する予定。南さんによればまずはレストラン用のビールを仕込み、余裕ができたら缶ビールを販売するとのこと。

石田さんの話では新しい醸造設備を購入したそうです。

「ビールは旅をさせてはいけない」と聞いたことがあります。つまり仕込まれて醸造したその場で飲むビールが最もおいしいという意味です。万里春醸造さんはレストランで隣で仕込まれたビールが旅をすることなくその場で飲めるのです。

ここで醸造してその場で飲めるというのは期待が高まりますね。

さて、既に前日ペールエールを仕込んだタンクの下にホースがあり、バケツが置いてありますね。これは何でしょう。

泡が出ています。恐らくはタンクの中に入ったビール酵母が頑張っている証ですね。ビール酵母は甘い麦汁を餌にして、炭酸ガスとアルコールを放出します。炭酸ガスはこのように外に出て、アルコールはビールの味を決める重要な要素として液の中に溶け込みます。

ビールを作るのはビール酵母ですが、そのビール酵母が快適に仕事ができるように世話をするのが、醸造者の方々の役目だなと思いました。ビール酵母は他の細菌と比べて弱いといわれていますので、画像のように常に清潔にすべく消毒を繰り返しています。

そんなことを考えていると、農業とビール醸造は近い気がしました。農作物も植物である作物自身が成長することで出来上がるわけですが、その成長を促進するために日々草取りやら水やりの世話をするのが農家さんの仕事なので、ビール醸造との共通点を感じたのです。

「隣に井戸があるんです」と南さんが教えてくださったので隣の部屋に行くと、大きな井戸がありました。井戸は大きな石で囲まれていますが、これはかつての酒蔵だった元万里春酒造が仕込みに使っていた井戸です。

昔ながらの井戸がビール醸造で復活したのです。黄金の水が湧き出ると言われていた寺内町は昭和時代でいったん使われなくなりました。

寺内町センターの展示物より
寺内町センターの展示物より

しかし、令和に黄金の水が復活したわけですね。

井戸の中を見せていただきました。15メートル下に水が蓄えられているそうです。

では、井戸水はどのように醸造設備とつながっているのでしょう。

井戸からの黒いパイプが醸造設備に向かっています。

思わず天井を見上げて追いかけてしまいました。

追いかけると、確かに井戸水が醸造設備とつながっています。寺内町の水で仕込まれたビールと聞けば、さらに期待が大きくなりますね。

南さんが糖化が進んだ麦汁を持ってきてくださいました。

こちらです。ローストした麦芽を入れているので、色が濃い目、アンバー色になっています。まだビール酵母も入っていないのでアルコールも0の状態。実際に飲んでみると甘いドリンク、冷やし飴のような味がしました。

さて、装置の下のほうに蒸気が出ています。この蒸気は煮沸釜を加熱している蒸気です。これは、この後に隣のタンク(煮沸釜)に麦汁を移動(濾過)させるための準備です。麦汁をすべて移動させると元のタンクには麦芽かすだけが残るという仕組みですね。

この時間になると、手伝いの人が増えてきました。こちらの大西さんは千早赤阪村の上赤坂城跡近くで、campsite麓(外部リンク)を経営しているとのこと。その他、南さんの友達で石垣島から手伝いに来られていたサイクリストの姿もありました。

南さんが何か袋から取り出しています。それはホップです。

こちらがホップです。ビール醸造ではこちらのようにペレット状になったホップを使うことが多いです。

拡大しました。今から入れるホップは苦みを出すためのビターホップです。

ホップの投下前に麦汁の中にある灰汁をとります。

500L分の液体なので、灰汁の量も多いなと思いました。

いよいよホップが投下されます。この後、煮沸の行程があり、その後香り用のホップが投下され、麦汁が冷やされ、ビール酵母を入れるとビールの仕込みが終了します。

ホップ投下直後の様子を拝見させていただきました。

このように緑っぽい色に変わりました。それ以上にそれまでは甘い麦汁の香りだったものが、ホップの香りが混ざったさわやかな香りになりました。

ビールの仕込みはこの後も続きますが、夕方までかかりますし私も別の予定があったので、この段階で引き上げることにしました。後は美味しいビールが出来てレストランで飲める日が待ち遠しいですね。

奇しくも世界的にもステータスがある2023年のインターナショナルの受賞ビールが先日発表されました。その中には驚いたことに河内長野の奥河内A-YANビールのホナヴァイツェンが、フルーツウィートビア部門で銀賞を受賞しました。

南河内地域のクラフトビールが受賞したわけですが、厳密には大阪市内の醸造所で作られたものです。今回富田林寺内町で醸造される万里春のクラフトビールが、いつかビアカップで賞を取れるようなビールになる。南さんも「来年出したい」と意気込んでおられました。

万里春醸造(万里春酒造株式会社)(外部リンク)
住所:大阪府富田林市富田林町21-22
アクセス:近鉄富田林駅から徒歩10分、富田林西口駅から徒歩10分
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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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