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実は天皇ご一家はスケート上級者 アスリートの陛下とモスクワ仕込みの雅子さま 知られざる素顔

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇陛下と雅子さま(写真:ロイター/アフロ)

■皇室とウィンタースポーツ

 深まる秋とともに、今年もウィンタースポーツの季節がやって来た。

 コロナ禍の影響で多くのスポーツ競技が中止や縮小が続く中、フィギュアスケートはすでに9月から国内各地の大会を無観客で開催している。スピードスケートも、予定通り行われる見込みという。

 実はアイススケートは、天皇ご一家が長年熱心に取り組んで来られたスポーツでもある。

 そんな皇室ご一家のスケートを50年にわたって指導してきたのが、昭和31年、全日本スピードスケート選手権大会の全種目において日本新記録を達成し、完全優勝を果たした女子スピードスケート界の草分け的存在、元オリンピック選手の長久保初枝さんだ。

 長久保さんは美智子さまから依頼を受け、天皇陛下が小学4年生の時から、陛下と秋篠宮さまお二人のスケートのご指導にあたり、ご結婚後は雅子さまや愛子さまにも教えてきたという。

 そこで長久保さんに、アイスリンクで触れ合った天皇ご一家の微笑ましいご様子を伺った。

■スピードスケートに熱心に取り組まれた天皇陛下

「スピードスケートは、ぐっと腰をおろして中腰で全力疾走するため、体力をとても消耗するスポーツなのですが、陛下は子どもの頃からとても真面目で、腿の筋肉が張って疲れても、泣き言ひとついわずに取り組んでいました」

 と、長久保さんは当時のご様子を振り返る。

 陛下は鋭いスタート・ダッシュや、低い重心のカーブワークもすぐに習得され、まさにアスリートの滑りを見せ、長久保さんもその成長の早さに舌を巻くほどだったという。

 一方、一緒に練習されていた秋篠宮さまは、マイペースに練習することを好まれ、おおらかに滑られていたとか。

 陛下は20歳になられた時、成年を迎えるにあたっての記者会見で、「青春とは、どういう時代と思われますか?」と記者から質問され、スピードスケートになぞらえてこう話された。

「(青春とは)あらゆるものに挑戦し、それから自分の力を試す、また模索する時期ではないかなと考えています。(中略)スピードスケートは、できるだけ速い時間で回ればそれに越したことはないので、リンクを回る時に、自分のありったけのスピードでもって回りたい。けれども、あまりスピードを出し過ぎると、コーナーから弾き飛ばされてしまう。(中略)そういったものを受け止めていくことが、ぼくの青春なんじゃないかなという感じを受けるんです」

 それを聞いた長久保さんは……

「陛下はスピードスケートをそのように受け止められ、人生や生き方に良い影響をもたらしていたことが分かり、とても嬉しく感無量でした」

 

■雅子さまのスケーティング

 天皇陛下が結婚された後は、雅子さまもご一緒に練習されるにようになったという。

 長久保さんも、雅子さまのためにいろいろ指導プランを立てていたのだが、アイスリンクで雅子さまと初めて会った時、驚きの事実を知った。

「雅子さまは、すでにきちんとしたスケーティングができていらっしゃいました。それはもう教える必要がないほど、上級者レベルだったのです」

 直線滑走も美しく、コーナリングのクロスワークも完璧。長久保さんも惚れ惚れするほどだった。

 なぜ雅子さまがこれほどまでに上手なのか、長久保さんがその理由を尋ねると、こう答えられたという。

「小さい頃、父のモスクワ赴任にともなって家族で暮らしていたんです。モスクワでは冬に赤の広場でスケートリンクが作られていましたので、そこで毎日のようにアイスホッケーのスケート靴を履いて遊んでいました」

 それを聞いて、長久保さんは膝を叩いて納得したという。

 自由自在にリンクを滑られる、陛下と雅子さま。お二人は同じ上級者スケーターとして、仲睦まじく、いつまでもグルグル回っておられたとか。

■愛子さまのスケート上達ぶり

 愛子さまが初めてスケートを体験されたのは、幼稚園に通われていた時。

 長久保さんのご主人・文雄さん(元オリンピック選手で現在はスケートコーチ)の2006年1月の日記には、愛子さまの初スケートのご様子がこのように書かれていた。

「初めて滑った時は、愛子さまを膝に抱っこして、少しスピードがついたところでリンクに下ろして差し上げたのですが、愛子さまは怖がっておられました。それでも練習のたびにスケートがとても上手になっていき、アウトエッジに重心がちゃんと乗るようになられました」

 と、長久保文雄さんは綴っている。 

 愛子さまは12月から3月にかけて冬のシーズンに、お友達と一緒にグループレッスンを受けられた。

 練習が終わる10分ほど前に「リレーをしましょう」と提案すると、愛子さまはとても喜ばれたとか。2チームに分かれて競争すると、楽しみも倍増し、上達スピードも上がっていったという。

 しかし、今年は、新型コロナウイルス感染症防止のため、3月の練習は中止を余儀なくされた。

「愛子さまは高校最後の思い出として、スケートをされる予定だったのではないでしょうか。それだけスケートが楽しくていらっしゃったと思うと、残念ですね」

 コロナの流行がおさまり、アイスリンクで愛子さまと再会する日を、長久保さんは楽しみにしているようだ。

この記事の後編→https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20201015-00202131/

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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