非正規雇用が多い若年層の賃金事情は…正社員・非正社員別、世代別の賃金動向をさぐる
日常生活、遊興、そして蓄財などさまざまな行動の原資となる賃金は、若年層においてどのような変化を示しているのだろうか。内閣府が2017年6月に主に若年層に関する公的資料を取りまとめた白書「子供・若者白書」の最新版をもとに、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータを用いて確認を行う。
直近年分となる2016年においては、正社員の方が正社員以外と比べて賃金は高い。非正社員は正社員に対し、男性で7割近く、女性で7割強の賃金に留まっている。
これを細分化した「年齢階層別」「正社員・非正社員別」の平均賃金の推移が次のグラフ。女性より男性、非正社員より正社員の方が賃金は高額だが、一律に歳を経るほど高額になるとは限らない状況にあるのが分かる。
男女とも非正社員の賃金は歳を重ねてもほぼ横ばいのまま推移している。特に女性は30代がピークとなっている。これは正社員における「社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ」が、非正社員には無い事を意味する。
さらに残業代やボーナス、社会保障の面では正社員が優遇されているので、手取りの観点では正社員との差はさらに大きくなる(企業側の社会保障が無い場合、自ら負担する必要が生じる)。
特殊な技術・資格を持ち、それこそ「渡りの職人」「孤高の匠」のような立場ならば話は別だが、通常の非正社員には正社員と同じような「積上げ」を得ることは期待できない。結果として賃金もそれ相応のものになる結果が、グラフのカーブ具合に現れている。
見方を変えると、女性の正社員と男性の非正社員の賃金体系は近しい間柄にある(繰り返しになるが、「残業代やボーナスの面では正社員が優遇されている」ので、現実には女性正社員の方が優遇される)。女性就労者の現状を語る一面と見ることもできよう。
なお今件は「子供・若者白書」に関するもので余談となるが、高齢層における非正規社員の場合は、将来に向けた蓄財をする必要も無く、支える世帯家族数も少なく、さらに年金の補助として就労している場合が多分を占めている。若年層の正規・非正規問題とはまた別の話であることを付け加えておく。
余談となるが、2015年から2016年の賃金変移を算出したのが次のグラフ。
40代で下げている属性が多々見られるのが気になるが、男女ともに大よその年齢階層で賃金上昇の動きが確認できる。特に20代から30代では押し並べて増加しているのは注目に値する。
昨年までの数年間は、若年層、特に男性は低い動きに留まっていた(≒中堅層以降の賃金引上げに若年層が割を食った構造)ことと比較すると、良い動きには違いない。
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