ふるさと納税で展望列車を貸切れる秋田内陸線 車窓を眺めながらの同窓会に参加してみた
応援したい自治体に寄付をすると、魅力ある返礼品を受け取ることができるふるさと納税。近年は、特産品などの「モノ」の返礼品ではなく他では体験できない「コト」を返礼品にする自治体も増えてきている。その中には列車の貸切権を返礼品としているところもある。「みちのくの小京都」角館や田沢湖を擁する秋田県仙北市と、世界文化遺産・伊勢堂岱遺跡やマタギ発祥の地・阿仁地区を擁する北秋田市だ。いずれも仙北市と北秋田市に跨って走るローカル線・秋田内陸線の貸切権を寄付に対する返礼品としている。
秋田内陸線(秋田内陸縦貫鉄道)は秋田新幹線・田沢湖線と接続する角館駅から奥羽本線鷹ノ巣駅に隣接する鷹巣駅までを結ぶローカル線で、その名の通り秋田県内陸部の山岳地帯を縫うように走っている。車窓には田園風景や緑の山々、渓谷美を楽しむことができ、自然豊かなだけに季節を変えて何度でも来たくなるような路線だ。
貸切ることができるのは座席定員43名の展望列車「秋田縄文号」。平成12(2000)年に製造された車両AN-2001を令和3(2021)年2月に改造したもので、沿線にある伊勢堂岱遺跡(世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」)にちなんだ内外装となっている。元々イベント用車両として造られただけあってカラオケ装置や冷蔵庫も備えており、車内で宴会やパーティーの会場にもピッタリだ。
角館~鷹巣間94.2キロを定期列車に増結される形で往復することができ、片道の所要時間は約2時間(急行列車に増結の場合)。途中下車はできないが、片道だけの乗車も可能だ。主にグループ旅行等の利用を想定しているが、1名からの乗車もできる。
また、既存のヘッドマークに無料でメッセージを入れることができ、オリジナルヘッドマークも5000円でつくることができる。「こころのふるさと号」のヘッドマークも参加者の一人がデザインした。
筆者が乗車した「こころのふるさと号」が運転されたのは7月6日。1002D「急行もりよし2号」および1003D「急行もりよし3号」に増結する形で運転され、角館11:05→鷹巣13:07着、鷹巣14:40発→角館16:41着というダイヤだった。参加者は23名、主催者は筆者の所属していた大学鉄研の先輩で、実質的には鉄研OBの同窓会旅行という感じである。
弁当の手配も可能ということだったので、筆者も含めた多くの参加者は「秋田内陸線オリジナル鉄めし」を事前に注文。BSフジのテレビ番組『植野食堂』と鉄道ファンでおなじみの俳優・六角精児さんがタッグを組んで開発した「植野食堂おつまみ弁当」(1800円)を頼んだ人が多かったようだ。
車窓には田んぼアートやかかしコンテスト、シャボン玉を飛ばしながら手を振るおじさんなどが次々に現れて、興味は尽きない。地元のアテンダントさんによる地域の紹介アナウンスにも耳を傾けながら、友人たちと話に花を咲かせ、片道2時間、往復4時間もあっという間だった。
ローカル線をのんびり一人旅するのもそれはそれで楽しいものだが、気の置けない仲間たちと時間と思い出を共有するグループ旅行にもまた違った魅力がある。ふるさと納税でローカル線を応援したいけれども、どこに寄付をするか決めかねているという方は、仙北市・北秋田市に寄付をして内陸線の展望列車を貸切って旅をしてみるのもいいだろう。ちなみに、内陸線はふるさと納税以外でも貸切可能でその場合は、どの車両でも片道50,000円、往復70,000円だ。貸切列車で一味違う旅を楽しんでみるのはいかがだろう。