ロシア海軍タランタルⅢ型コルベット「イワノヴェツ」撃沈、ウクライナ自爆水上ドローンによる戦果
1月31日から2月1日の夜間、ウクライナ国防省情報総局(GUR)の特殊部隊「グループ13」が自爆水上ドローンを用いて、クリミア半島のドヌズラフ湖(ドヌズラフ湾)の周辺を哨戒していたロシア海軍黒海艦隊のタランタルⅢ型コルベット「イワノヴェツ」を攻撃し、撃沈しました。
ウクライナ国防省情報総局の公開した動画からは、「イワノヴェツ」に対し自爆水上ドローン複数隻が突入して損傷を与え爆発する様子が確認できます。最後には艦首を上に、艦尾を下にして、沈んでいきました。
これはウクライナ自爆水上ドローンによる対艦攻撃の戦果としては最大の物になります。タランタルⅢ型コルベットは満載排水量約500トンで、大型ミサイル艇に分類される場合もあります。
ウクライナ自爆水上ドローン部隊の戦果の損害評価
- 2022年10月29日:掃海艇「イワン・ゴルベッツ」 ※中破
- 2023年07月17日:クリミア大橋 ※橋桁がずれる損傷
- 2023年08月04日:揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」 ※小破
- 2023年11月10日:小型揚陸艇「アクラ」型と「セルナ」型 ※大破以上確実
- 2024年02月01日:コルベット「イワノヴェツ」 ※撃沈確実
※この他にも幾つかウクライナ自爆水上ドローンによる戦果が主張されているが、フリゲート「アドミラル・マカロフ」や情報収集艦「イワン・フルス」など無傷で港に帰ってきたことが確認されており、損害評価を誤認したもの。
※クリミア大橋への攻撃はSBU(ウクライナ保安庁)の作戦でGUR(ウクライナ国防省情報総局)とは別組織。このため戦果報告で分けられる場合がある。
当初はウクライナ自爆水上ドローンによる対艦攻撃の最大戦果と思われていた揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」は浸水し大傾斜するも、ノヴォロシスク港の浮きドックに入渠してから3週間で修理復帰して、意外にも損傷は軽く小破だったことが判明しています。この時は追撃が加えられず沈没を免れました。
一方、コルベット「イワノヴェツ」に対しては複数隻の自爆水上ドローンが突入しており、追撃を加えることで撃沈に到っています。揚陸艦を仕留め損なった戦訓が反映されているのかもしれません。
基本的に遅い自爆水上ドローンは対艦ミサイルのように突入後に船体に食い込んでから起爆することができず、船体に接触するかしないかの位置で起爆するので、炸薬量を増やしても破壊効果が低い問題があります。満載排水量約500トンの小さな水上戦闘艦を確実に撃破する場合でも、複数隻の突入が必要になったのでしょう。
【追記】
「The War Zone」誌インタビュー記事でキリーロ・ブダノフGUR局長の説明では、「イワノヴェツ」撃沈に要した自爆水上ドローンの突入は実に6艇の直撃にも及んでいます。使用した自爆水上ドローンは「マグラV5(MAGURA V5)」、弾頭重量は320kgです。
推定沈没座標について:Стали відомі координати де була здійснена атака на ракетний катер “Ивановец” | Мілітарний
日語:R-334「イワノヴェツ」
露語:Р-334 «Ивановец»
宇語:Р-334 «Івановець»
英語:R-334 "Ivanovets"
※タランタル(Tarantul)はNATO側の名称でロシア語でタランチュラの意味。ソ連/ロシア側の名称は1241計画モールニヤ(Молния)。改良型のタランタルⅢは12411計画モールニヤMに相当する。