臆測報道を警戒? MLBが5月からのアリゾナ単独開催報道を全面否定へ
【MLBが発表した声明の中身とは?】
MLBが現地時間の4月7日、以下のような声明を発表した。
声明の内容は以下の通りだ。
「MLBは、安全に試合を実施できる環境まで公衆衛生が改善された際に合わせ、積極的に様々な緊急事態プランを協議し続けている。そのプランの1つとして、1つの場所での試合実施も話し合っているものの、まったく合意していないし、詳細部分についても何も決まっていない。
現在も政府や公衆衛生機関と継続的に情報交換を行っているが、連邦政府、州政府、地方行政、さらに選手会から何一つ賛同を求めていないし、得てもいない。我々スタッフ、選手、ファンを含めた社会全体の健康と安全が最も重要なことだ。現在新型コロナウイルスの影響で公衆衛生が劇的に変化している中、現時点で試合実施に向け、具体的な案を推進していく段階ではない」
【次々に飛び出す憶測報道を懸念か】
声明の内容を見て、MLBが何を言いたかったのかを誰もが理解できるだろう。4月6日辺りから日米メディアが大々的に報じている、MLBがアリゾナ州フェニックスに全チームを集め、5月中旬から無観客試合を開始するという報道を全面否定するためだ。
MLBがこのように、特定の報道を否定する声明を発表するのは珍しいケースだ。それだけ新型コロナウイルスの影響で不測の事態に陥っている米国社会への影響を深く考慮しているということなのだろう。
改めてMLBが指摘しているように、米国内で新型コロナウイルスが猛威を振るい今も感染者が増えている中で、シーズン開幕について具体的に動けるような段階でないのは明々白々だ。
すでに有料記事で指摘させてもらった通り、今回のアリゾナ単独開催報道に限らず、これまでもメディアは様々な現象を捉えて、「○月まで開催できない可能性が出てきた」とか、「○月開催で進んでいる」などの憶測報道が続いていたことを懸念していたが、今回の声明は、MLBがメディアに対し注意喚起を行ったものだと考えていいだろう。
【MLB関係者も「全く聞いてない」】
冷静に振り返れば、今回のアリゾナ単独開催報道はESPNなどの主要メディアも報じているものの、MLB公式サイトはまったく追随していない。
こうした報道も情報筋があるのは間違いないとは思うが、自分の長年の知人である現場で働くMLB関係者に今回の報道について確認したところ、「まったく聞いていないです」という返事だった。
しかもMLBが5月中旬以降の開幕延期を決めたのも、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が3月に発表した8週間のイベント自粛要請を求めるガイダンスに従ったからだ。そのCDCが現状の中で、5月中旬以降のイベント開催を認める方向に方針転換するとは到底思えない。
そもそもMLBや選手会のオフィスがあるニューヨーク市は、最も新型コロナウイルスの影響を受け、緊急事態宣言下にある街の1つだ。組織自体が少なからず組織運営に影響を受けているのに、具体的な案を話し合っていけるような状況にはないはずだ。
【メディアもパニックに陥っている?】
米国内で広がる新型コロナウイルスのパンデミックは、国中をパニックに落とし入れている。スポーツ界もすべての競技が活動を停止するという未曾有の事態を迎え、それを取材する立場のスポーツメディアも通常の取材ができないため、何らかの情報を得ようと必死になってある意味パニック状態にあるのかもしれない。
今MLBに関して正しい情報を有しているのは、協議を続けているMLBと選手会の当事者だけのはずだ。その両者からの発信以外は、なかなか信用できない状況になってきた。
今後も多少なりとも憶測報道は続くのだろうが、まだ米国がスポーツイベント実施を受け入れられるような環境にないことだけは確かだ。