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6万個のグローブ推定コストは18億円 大谷翔平を選手ではなく現在価値をM&AのDCF法で算出してみる

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:ポルシェ・ジャパン株式会社

KNNポール神田です。

大谷翔平選手をスポーツ選手としてみるだけではなく、ITベンチャー企業の価値として捉えてみたいと思う。
なんといっても、7億ドル(約1,019億円@145)の契約で97%にあたる6億8000万ドル(約990億円)が“後払い”というのが、大谷翔平株式会社としての買収金額が実質いくらだったのかが、とても気になったからだ…。

大谷翔平選手、なんと背番号17番をゆずってくれたチームメイトのジョー・ケリー選手の奥さんアシュリーさんにポルシェ・タイカンをプレゼント。推定価格は、2000万円だ。

https://twitter.com/Dodgers/status/1738810171315589423

大谷翔平は、日本の『ポルシェジャパン株式会社』の『ポルシェドライビングアスリート』でもある。
2022年8月4日より、ブランドパートナー契約を締結している。
スポンサーとしても、今回のポルシェのプレゼントの露出はうれしい限りだろう。


https://www.porsche.co.jp/pip/drivingathlete/


■野球しようぜ!6万個のグローブプレゼント推定18億円

大谷翔平選手 日本全国の小学校へ6万個の野球グローブを寄贈

出典:Newbalance
出典:Newbalance

■株式会社ニューバランスジャパン(本社所在地:東京都千代田区、代表取締役社長 久保田伸一)は、2度のMLBオールスター、2021年アメリカンリーグMVPに輝くニューバランス契約アスリートの大谷翔平選手が、国内の約20,000校の小学校に約60,000個のジュニア用グローブを寄贈することを発表いたします。
■大谷翔平選手は、幼少期から野球を楽しんでいた経験から、日本全国の各小学校へ3つのジュニア用野球グローブ(右利き用2個、左利き用1個、小学校低学年用サイズ)を寄贈
■2023年12月より2024年3月までを目途に、全国の小学校への寄贈を順次スタートいたします。
*:国公私立の小学校、義務教育学校、特別支援学校を含む
**:全国の教育委員会、国公立大学法人および私立の小学校へニューバランスジャパンより配送
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001099.000029460.html


ポルシェのタイカン約2,000万円のプレゼントもかなりの太っ腹だが、この『ニューバランス』の野球グローブのプレゼントは、ケタ違いだ。ひとつ3万円としても6万個なので18億円のコストが発生するからだ。
ニューバランスとの大谷翔平との契約料は、当時の彼の年俸3000万ドル(39億円)以上と報道されている。つまり、年俸以上の契約スポンサーが数社いることが容易に想像がつく。

「オオタニはお金に興味はなさそうだが、スターにはお金が集まる。最近契約を結んだニューバランスも彼に巨額を投じており、恐らく今季の彼の年俸3000万ドル(39億円)を超える契約を結んだ」とした。
「オオタニはお金に興味はなさそうだが、スターにはお金が集まる。最近契約を結んだニューバランスも彼に巨額を投じており、恐らく今季の彼の年俸3000万ドル(39億円)を超える契約を結んだ」とした。
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202302240000295.html

■なぜ大谷翔平選手は18億円以上もの『寄付』ができるのか?

大谷翔平の節税プロモーション効果の測定

6万個のグローブプレゼント 3万円×6万個として、ざっくり18億円

7億ドルの10年間契約だと年あたり7,000万ドルの球団側の『ペイロール(給与支払いシステム)』だが、後払いのおかげで、大谷翔平の『現在価値』は、年間4,000万ドルくらいに落ちつくという

□米スポーツ専門チャンネル「ESPN」のジェフ・パッサン記者によると、後払いはドジャースのペイロール(給与支払いシステム)に負担をかけないよう大谷選手側から提案されたものとのこと。
□メジャーには各チームの戦力均衡化のため「ぜいたく税」と呼ばれる制度があり、毎年決められている年俸総額を超過すると追加の負担金が課せられます。

□ぜいたく税の対象となるペイロールを算出する際、各選手の年俸は「現在価値の年平均額」で算出され、10年7億ドルで合意した大谷選手の場合、年平均7000万ドルがドジャースのぜいたく税のペイロールに、10年間にわたって加算されることになります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1371d05e69ac86e8f324ee80b194ca2371ccc185


年俸4,000万ドル 1ドル140円としても、年収規模は56億円
カリフォルニア州の高額所得者の年収の半額が税金とすると28億円。 

■年俸の半分以上は税金で差し引かれる
アメリカのスポーツ選手の税金に詳しいとされているロバート・パイオラ氏(※)(Robert Raiola)は、X(旧Twitter)で大谷選手が獲得する年俸に対し、約53.75%の税金が課されるとの見解を示しています。
税金の内訳としては、連邦政府への税金で37%、カリフォルニア州の州税として13.3%、公共医療保険のメディケアに2.35%、そして州の傷害保険の1.1%です。
日本の所得税と復興特別所得税、住民税を合計した税率は最高55.945%ですので、日本の方が税率はわずかに高いです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/240b74f6308d6beda2e4537fde3fd754c2efb8db


今回のグローブプレゼントを全額寄付とすると、56億円▲18億円で、38億円の収入に。これを半額税金とすると19億円となり、28億円から19億円に税金が減ると、9億円の節税効果を生む

米国に治められる税金が、日本国内の野球少年に還元でき、大谷翔平経済効果にも寄与でき、スポンサーである、ニューバランスにも18億円の売上を計上することができる。

もちろん、ドジャースにとっても、年間にして本来大谷選手に7,000万ドル(98億円)支払うところが帳簿上は4,000万ドル(56億円)になるので、3,000万ドル(42億円)のゆとりを生むことができるので、大谷予算で、新たな選手を獲得するために動けるというものだ。

オリックスの山本由伸選手が12年契約で3億2500万ドル(約455億円)でドジャース入りも、一年あたりで計算すると3250万ドル(45.5億円)なので、大谷選手の年俸の範囲内でおさまる計算だ。

□オリックスからポスティングシステムで大リーグ移籍を目指す山本由伸投手(25)がドジャースと契約合意したと21日、MLB公式サイトなど複数の米メディアが報じた。12年契約で3億2500万ドル(約463億円)だという。
□ドジャースには今オフ、大谷翔平がスポーツ史上最高額の10年総額7億ドルで入団。その大谷は、山本とドジャースの面談に立ち会い、山本の勧誘に一役買った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9e19446991a2fd26c3ad6c55831c15b768b2914f

自分の年俸にかかる税金を節税するだけでなく、チームの補強力にも貢献でき、自分の仕事がしやすい環境を整えることが可能だ。ドジャースに対して、資金を貸しつけている状態ともいえる『大谷翔平株式会社』というベンチャーとしても考えることができる

■大谷翔平の7億ドルの給与後払いは、ドジャースの年間利息だけでも2,800万ドルの収益。大谷の年俸200万ドルの14倍


米スポーツ専門チャンネル「ESPN」のジェフ・パッサン記者によると、後払いはドジャースのペイロール(給与支払いシステム)に負担をかけないよう大谷選手側から提案されたものとのこと。

大谷翔平投手がドジャースと結んだ10年総額7億ドル(約1019億円)の契約は、約97%にあたる6億8000万ドル(約990億円)が“後払い”という形となったことが注目を集めた。チームの補強戦略に影響することのないよう、来季から2033年までは年俸200万ドル(約2億9000万円)でプレーする。
https://full-count.jp/2023/12/18/post1488754/

実質、大谷選手の年俸は、ドジャースのペイロールの4,000万ドルではなく、200万ドルなので、1/20ですむ。しかし、11年目に6.8億ドルがかかるのでその分をドジャースは、貯蓄しておく必要はある。

しかしだ…。アメリカの国債の利回り率を4%で年利換算すると毎年、2024年度の初年度だけでも7億ドルの原資であれば2,800万ドル(39.2億円)の利息がつく。つまり契約10年分を国債で回すだけでも大谷翔平選手の年俸200万ドル(2.8億円)の14倍以上の収益となるのだ。

しかもそれが複利で増え続けるとなんと10年目には、実質金利は48.02444%で、1,508億円となる。
そして最終的に10年後に、ドジャースが、大谷翔平に約990億円払っても、518億円も手元に残る計算が成り立つ。

出典:カシオ keisanより
出典:カシオ keisanより


https://keisan.casio.jp/exec/system/1248923562

■大谷翔平株式会社というベンチャー企業の価値をDCF法で算出する

どうやら、大谷翔平選手をスポーツ選手として換算すると、規模が違いすぎるので、ITベンチャー企業として、デューデリジェンスしてみたい。

IT企業のM&Aは、現在価値と将来価値を比較検討して、買収するかどうかの判断をつける。そのひとつの手法が『DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)』だ。

米国国債で4%の利息がつくものとして、シミュレーションしてみた。

割引率は4%だ。

出典:筆者推定のDCF法スプレッドシート
出典:筆者推定のDCF法スプレッドシート

大谷翔平7億ドルのDCF法による現在価値 

事業価値 6.9億ドル 

企業価値 13.9億ドル

株式価値 13.9億ドル 

となった。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1a5eaaz9uEenh0IkYx9HB8ppR2wksxEjwDE77cSzxq4A/edit?usp=sharing

『WACC(加重平均資本コスト)』で求めた。

出典:DCFシミュレーターより算出
出典:DCFシミュレーターより算出

事業価値は1兆6,101億1,400万円です。

資産価値は1兆6,101億1,400万円です。

株式価値は1兆6,101億1,400万円です。となった。

DCFシミュレーター
https://oneinvest.jp/dcf-sim/

■ドジャースは、7億ドルの大谷翔平株式会社を3.89億ドルの55%の半値でM&Aしたことになる。

割引現在価値』で計算すると、7億円の買収金額の大谷翔平株式会社をドジャースは実質3.89億ドルで買収したことにもなる。

出典:大谷翔平の年俸から学ぶ割引現在価値より
出典:大谷翔平の年俸から学ぶ割引現在価値より

https://bespoke-pro.jp/2023/12/16/npv_otani/

出典:大谷翔平の年俸から学ぶ割引現在価値より
出典:大谷翔平の年俸から学ぶ割引現在価値より

□無利子・10年後からの分割受領・割引率3%で現在価値の目減りは36%
この考え方は様々な事象の分析に応用できる。例えば、米メジャーリーグの大谷翔平選手がドジャースと結んだ7億ドルの契約を考えてみよう。大谷選手は、全額の97%を10年後以降に受領するという。話を簡単にするために、10年後に7億ドル全額を受領すると仮定し、割引率(米国の10年国債の利回り)が現状の4%前後から10年間平均3%で推移すると仮定した場合、大谷選手が10年後に受領する7億ドルの現在価値は5.21億ドルと、26%も目減りしてしまう
なお、日本経済新聞などによると、大谷選手は、現役の10年間は毎年200万ドル、11年目からの10年間は毎年6800万ドルを受領するという。その場合の現在価値は、割引率を同じく3%とすると4.49億ドルとなり、目減りは36%とさらに大きくなる。いずれにしても、米国のように市場がインフレ(物価高)状態にあると、無利子10年後払いは選手にインフレリスクを負わせることになると言える。一方、ドジャース側から見ると、20年掛けて後払い部分を多くすることによって“実質的”な支払い額を抑え、世間には“太っ腹”なところを見せることに成功したと言える。
https://infrabiz.co.jp/5111/

ある意味この提案は、大谷選手側からの提案ということで、それ以上の、ドジャースのファイナンスにゆとりがうまれ、環境が変わり、成績を残しやすく、グッズ関連のビジネスから、広告ビジネス。さらに、今後10年においての節税面やその赤字計上できる事業などと、ファイナンス面でのいろんな資金調達手法を考えると、もはやスポーツ選手ではなくITベンチャーの経営手法としてみなすべき事案であると思う。

すでに、関西大学の宮本勝浩名誉教授は大谷翔平投手のドジャース移籍による2024年の経済効果を約535億5,200万円と試算したと発表しているほどであり、年俸では測れない価値を持つ日本人選手の活躍だ。

なんといっても、大谷選手一人のM&A金額が、7億ドル、1019億円という単位であることも数値化するのにわかりやすい。

■大谷翔平電卓をChatGPTで作ってみた

出典:Shohei電卓
出典:Shohei電卓

https://chat.openai.com/g/g-KhqvSCV9a-shoheidian-zhuo

GPTs』で『Shohei電卓』で億単位の金額をShiei何人分かで計算する電卓としてリリースしてみた。

億単位の金額でも、大谷翔平選手何人分かで可視化すると理解しやすいと感じたからだ。

AdobeがFigmaの200億ドルの買収に失敗!!

米Adobe(アドビ)は現地時間12月18日、欧州連合(EU)と英国の独占禁止法規制当局からの承認が得られそうもないことを理由に、以前から計画していたデザインコラボレーションツールを手掛ける米Figma(フィグマ)の200億ドル(約2.9兆円)規模の買収を断念すると発表した。
提出書類によると、アドビはフィグマに10億ドル(約1400億円)の契約解除料を支払うという。アドビの株価は、この発表を受けて約1.4%上昇した。
https://forbesjapan.com/articles/detail/68115

200億ドルの買収失敗で、10億ドルの慰謝料とのこと

円安や円高でコロコロと変わる価値よりも、大谷翔平ドルで考えたほうがわかりやすい。

200億ドル 28.5大谷翔平ドル 28人分

10億ドル の慰謝料 1.4大谷翔平ドル  1.4人分である。

日本の一般会計予算112兆円 も大谷翔平ドルでは、1,099人分である。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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