【プリンスリーグ】崖っぷちの浦和&横浜FM。その死闘は、痛み分け
ピラミッドの2番目に位置するリーグ
10月5日、埼玉スタジアム第2グラウンドで行われたJFAプリンスリーグU-18関東の浦和レッズユースと横浜F・マリノスユースの一戦を取材した。
同大会は、ちょうど10年前の2003年に創設された高校年代のリーグ戦。全国を9つの地域(北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国、四国、九州)に分割し、原則としてホーム&アウェイの2回戦総当たりで優勝チームを競う形となっている。3年前からこの上部に東西の2リーグで構成されるプレミアリーグが創設されており(図参照)、最終的にはこの東西リーグの王者が対戦するチャンピオンシップで「リーグ戦での高校年代日本一」を決める形式となっている。
必然的にプリンスリーグの位置付けは「プレミアリーグ昇格を懸けた戦い」という色が濃い。上位3チームが、昇格を懸けたプレーオフに出場できるため、多くのチームの目標が「3位以内」だ。また現在、関東地区のプリンスリーグは1部・2部制を採用しているが、来季からは関東2部リーグが撤廃されることとなったため、1部の下位チームは都県リーグへと降格する。降格の枠はプレミアリーグから落ちてくるチームの数などによって変動し、最大で5つ(全10チーム)。非常にシビアな大会となっている。
「一つも気を抜けない本当に厳しいリーグですよ。ウチなんて上(昇格)も下(降格)もある状況ですからね」と苦笑を浮かべながら語ったのは、横浜FMユースの松橋力蔵監督だ。この試合前、横浜FMの順位は6位であり、3位・大宮アルディージャユースとの勝ち点差は「5」。残り3試合なので、まだ見込みあり。一方、下位は現時点で降格の可能性を残し、なおかつ勝ち点差もほとんどないというひっ迫した状況である。プレミアリーグ昇格を目指したシーズンで降格となっては目も当てられない。そんなシチュエーションだ。
一方、対戦相手の浦和ユースの選手たちからは、より強い緊張感が感じられた。それもそのはず。試合前の時点で浦和ユースは10チーム中9位に位置しており、紛れもない降格危機。これ以上の負けは許されない状況にあり、サポーターが掲示した横断幕には「残り自分たちのすべてをかけて」という文言が踊る。いやが上にもテンションの上がる試合となった。
60分で終わったトリコロールの時間
そんな激戦必至の試合において、立ち上がりから主導権を握っていたのはトリコロール軍団、横浜FMユース。何人か選手を欠いていたが、その影響は感じられない。機敏なプレーが連続し、23分には早くもセットプレーからDF斉藤海が先取点。このカードの前半戦の対戦も観ているのだが(3-0で横浜FMユースが快勝)、今回もその再現ではないかと思える試合展開。後半に入っても、57分にはスローインから相手のスキを突いての素早いパス交換でサイドを切り崩し、最後はFW武颯が2点目を奪取。早くも勝負あり? そんな気配も漂う展開となった。
だが、試合はここからだった。横浜FMユースのFW深澤知也が3点目を奪う絶好機を逸すると、試合の流れは激変する。「どうしても波があって、ガクッと来てしまうことがある」と松橋監督。その直後の64分に1点を返した浦和ユースは、受け身に回り、混乱も見られたトリコロール軍団を圧倒していく。さらに、負傷から復帰のエース関根貴大をピッチへ送り出すと、その勢いは再加速。79分にMF條洋介が同点ゴールを叩き込み、以後も攻勢をゆるめなかったが、関根のシュートがバーに嫌われるなど運もなく、2-2のまま試合終了となった。
「双方ともに勝ち点1を分け合った」というよりも、双方ともに「勝てた試合だった」と振り返ったであろうドローゲーム。残留を狙う浦和ユースにとっても、昇格をうかがう横浜FMユースにとっても、悔恨を残す一戦となった。
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セットプレーの3次攻撃で生じた混戦から生まれた浦和の同点ゴール。執念が結実したような展開だった。
U-18日本代表を負傷で辞退していた関根貴大(昇格内定)は、70分から登場。プレー感覚を確認するような振る舞いを繰り返した交代早々の時間帯を過ぎると、巧みなターンに正確なシュートなど存在感を発揮。「けが明けで“アレ”ですからね」と敵将を苦笑させるプレーぶりだった。