”環八通り”を舞台に交差する、六つの恋物語 女優陣が名曲を歌うドラマ『感情8号線』とは?
川栄李奈、倉科カナ、貫地谷しほり、真飛聖、小野ゆり子、堀田茜、六人の女優が織りなす、”環八”恋物語
「環状8号線(通称環八通り(かんぱち))」といえば、東京都の住人、車を運転する人にはおなじみの道路、通りだ。全長約44キロ、東京都大田区羽田空港付近から、世田谷区、杉並区、板橋区、練馬区を通り、北区赤羽まで至る、主要道路と交差し、交通量が非常に多い東京都の大動脈だ。その環八沿いの街、荻窪、八幡山、千歳船橋、二子玉川、上野毛、田園調布に住む6人の女性の物語を描いた物語がドラマ化され、話題になっている。
女性から圧倒的な支持を得ている畑野知美原作の『感情8号線』(祥伝社)がドラマ化され、CS放送フジテレビTWO ドラマ・アニメ枠で1月15日から放送される(23時30分スタート※以降、毎週日曜同時間に全6話放送)。環八沿いの6つの街に住む、6人の女性の、6つの物語が交差するストーリー。それぞれが置かれた境遇も環境も違えば、悩みも違う女性のリアルな心情、もがく姿を、女性目線で繊細かつ大胆に描き、誰もが共感できる内容になっている。
登場する街と演じる女優は、第1話「荻窪 真希」/川栄李奈、第2話「八幡山 絵梨」/倉科カナ、第3話「千歳船橋 亜実」/貫地谷しほり、第4話「二子玉川 芙美」/真飛 聖、第5話「上野毛 里奈」/小野ゆり子、第6話「田園調布 麻夕」/堀田 茜と、錚々たるラインナップだ。
先日、第1話が無料先行放送され、観た。脚本の面白さはもちろん、川栄李奈の演技に引き込まれた。感情を抑え、陰を強調した、表情で見せる演技は、女優・川栄李奈のさらなる進化を感じさせてくれた。ネットでもこの感想が飛び交い、反応は上々のようだ。
荻窪在住。ワンルームのアパート暮らしの劇団員で、役者を目指して3年前に静岡から上京。同じ餃子屋でアルバイトをしている劇団員の男子への思いを言えずに、ずっと抱えている――そんな真希という女性を演じた川栄は「一話一話いろんな人と絡んで話がつながっているのが面白いところだなと思いました。真希は好きな人に思いを伝えられず前に進めない女の子で、私も言えないタイプなので、すごく共感できます。今回餃子を作るシーンがありますが、家でも作ることがあるのですぐできるようになりました。女性なら共感することが多いし、一話だけじゃなくて全話つながっているので最後まで見てほしいです」と見どころを語っている。また、共演している堀井新太、杉野遥亮の他にも、3話に登場する町田啓太など、若手俳優陣の演技にも注目したい。今年ブレイク必至の逸材が揃っている。もちろん、脇を固める田中圭、三浦貴大、眞島秀和といった実力派俳優陣の演技も見逃せない。
川栄=ドリカム、倉科=尾崎豊、貫地谷=ユーミン、真飛=超スタンダード、小野=キョンキョン、堀田=小沢健二、女優陣が名曲をカバー
このドラマのもうひとつの観どころ、“聴きどころ”は、劇中で主人公がそれぞれの思いを重ねながら歌を口ずさむシーンがあり、エンディングでも披露している。女優陣がここまで歌を披露しているドラマは、今までありそうでなかった。川栄李奈「何度でも」(DREAMS COME TRUE)、倉科カナ「僕が僕であるために」(尾崎豊)、貫地谷しほり「幸せになるために」(松任谷由実)、真飛聖「ひょっこりひょうたん島」、小野ゆり子「あなたに会えてよかった」(小泉今日子)、堀田茜「ぼくらが旅に出る理由」(小沢健二)と名曲を披露している。どの曲も、シンプルなアレンジが施され、女優陣の声、歌が強調されている。
川栄の歌はかわいらしさと真っすぐさを感じさせてくれ、倉科は凛とした女性らしさを、貫地谷は耳元で囁くような、でも力強さを感じさせてくれる。真飛は誰もが知っているスタンダードナンバーを、女性らしい優しさで表現、小野の歌は素直でせつなく、堀田の声はフワッとした柔らかさの中に、しっかりとした意志を感じる。共通しているのは、透き通るような美しい声でしっとりと歌っており、スッと耳と心に入ってくるところ。選曲の妙もありつつ、いい曲というのは往々にして歌うのが難しいものが多いが、6人は自分の声質をきちんと生かし、歌にそれぞれのカラーをしっかりと投影させ、昇華させている。演じる事に長けている人は、歌も素晴らしいと思わせてくれる。この貴重な歌声をまとめたダイジェストバージョンの動画が公開されている。
交差する6人、繋がる物語
女性が、仕事や恋愛、人生における大きな話題、問題において、その分岐点に立たされ何かと悩みが増えてくるのは、20代半ば頃からではないだろうか。心も身体もなにかと忙しくなる頃。自分の意思に反して、変化する周りの状況や環境、その波に巻き込まれ、影響される事も多々ある。外見も年齢と共に当然変化し、人知れず焦燥感に襲われたり、時には取り残されたような気持ちになったりすることもある。『感情8号線』はそんな、20代、30代の6人の女性の恋模様と心の機微を様々な角度から描き、微に入り細をうがった阿久津朋子(第24回ヤングシナリオ大賞「Dearママ」「ドラマサザエさん4」ほか)の脚本が、女性のリアルな心模様を浮かび上がらせている。様々な幹線道路、小さな通りと交差する環八通りのように、物語の中で6人の女性は交差し、そして繋がっている。6話通して観るとその絡み方、繋がりの面白さが発見できるというオムニバススタイルになっている。
このドラマに登場する環八沿いにある6つの街は、直線距離にすると非常に近いが、実は一本の電車行けるのは二子玉川と上野毛だけだ(東急大井町線)。その他はターミナル駅で乗り換えが必要になり、電車だと遠回りになる。そして同じ環八通り沿い、わずか44キロの距離の中でも、北と南では街の雰囲気も、生活のレベルも違うというのも興味深い。そんな事を踏まえてこのドラマを観ると、物語が持つ“温度感”がより伝わってくる。さらに6人の女性の恋愛と人生に寄り添っているような名曲達も、今日という日を遠回りしながら生きている女性たちの物語の中で、 “温もり”という最高のスパイスになっている。