日本も景気後退に気を付けろ!「合意なき離脱」確率40% 英国すでに景気後退か「政界の道化師」が首相に
英国の成長率2四半期連続でマイナスか
[ロンドン発]難航する英国の欧州連合(EU)離脱交渉で、市民生活と企業活動を大混乱に陥れる「合意なき離脱」の確率は約40%もあり、EUに残留した場合に比べて国内総生産(GDP)は長期にわたり年5%程度小さくなるとの予測を英国の国立経済社会研究所(NIESR)が22日発表しました。
英国の失業率は3.8%と1974年以来、最低水準。しかし生産性は一向に伸びておらず、経済成長率が2四半期連続してマイナスになる「テクニカル・リセッション」に陥っている恐れがあるそうです。
保守党党首選で党首に選ばれ、24日に次期首相に就任する見通しのボリス・ジョンソン前外相は「合意のあるなしにかかわらず10月31日には必ずEUを離脱する」と息巻いています。
NIESRのジャジット・チャダ所長は「保守党党首選を争う2人の候補者は『合意なき離脱』を語っても、それがどんな結果をもたらすかについては語らなかった。『合意なき離脱』は間違いなく経済活動に重大な支障を来たし、慢性の不確実性をもたらす」と警告しています。
NIESRの発表は次の通りです。
【英国経済】
・今年第2四半期の成長率はマイナス0.1%。サービス分野が減速
・英国経済はすでに景気後退に陥っている確率が25%もある
・EU離脱はすでに脆弱(ぜいじゃく)になっている貿易と経済活動の車輪に“コンクリート”を投げ入れるようなもので、将来の計画を妨げる
・「合意なき離脱」の確率は約40%。離脱期限の延期と合意離脱の確率は合わせて約60%
・「合意なき離脱」になった場合、長期にわたってGDPは年5%程度小さくなる
・秩序ある「合意なき離脱」になっても通貨ポンドは対ドルで約10%下落、輸入品が値上がりするためインフレ率は4.1%に加速
・来年の経済成長率は約0%。おそらく今後数年、成長の可能性なし
・英中銀のイングランド銀行は年末までに政策金利を0.25%まで引き下げ。来年末には1.75%に引き上げ
・「合意なき離脱」なら来年、景気後退の確率は30%に膨らむ
・来年度の財政赤字を2%未満に抑える財政目標は達成できず、現在の対GDP比財政赤字1.2%が2022年までに3.8%に膨らむ恐れ
・「合意なき離脱」を避けることができれば、今年と来年の経済成長率は約1%
【世界経済】
・世界の国内総生産(GDP)の成長サイクルは2017年がピーク
・工業と貿易は昨年後半から弱まっている
・今年と来年の世界経済の成長率は3.5%を若干下回る
・1年前に比べ、世界経済の成長率を0.5%ポイント下方修正
・戦後最長の121カ月続く米国の経済成長はいずれ終わる
・ドイツの自動車生産の低迷、イタリアの財政赤字と政府債務など単一通貨ユーロ圏経済の減速。英国のEU離脱の不確実性が影響
・中国の新車販売は前年比で14%ダウン
【米国が自動車に25%の関税を発動した場合】
・GDPは5年にわたって年平均で0.1%縮小
・ハンガリーやスロバキアなどへの間接的な影響の方が直接的な影響より大きい
・報復関税などの貿易戦争に発展した場合、GDPは年平均で約0.4%縮小
・米連邦準備理事会(FRB)は0.25~0.5%の利下げの可能性
「合意なき離脱」に突き進む英国を他山の石に
昨年10~11月、元徴用工や元朝鮮女子勤労挺身隊員の戦時下動員を巡り韓国大法院(最高裁)が日本製鉄(旧新日鉄住金)や三菱重工業の差し戻し上告を棄却、損害賠償の支払いを命じたことをきっかけに、安倍政権も半導体材料の韓国向け輸出管理を強化しました。
日韓間の貿易摩擦が貿易戦争に発展すれば、世界のサプライチェーンに影響を及ぼす恐れが膨らんできます。「主権」や「歴史」「伝統と文化」に絡め取られたが最後、ナショナリズムのスパイラルに巻き込まれ、逃れることはできません。
貿易戦争に勝者はいません。経済が傷んで結局、苦しむのは政治指導者ではなく、国民です。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、日本の安倍晋三首相も、「主権」という魔物に取り憑かれ「合意なき離脱」に突き進む英国を他山の石とすべきです。
景気後退はもう目の前まで近づいています。
(おわり)