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【アイスホッケー男子日本代表】 君が代を最後に聞いてから23年も経ってしまった…

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
長野五輪で22年ぶりの勝利をもたらした八幡真(Photo:Jiro Kato)

1972年の札幌に続き、日本で二度目の冬季大会となった長野オリンピックから23年が経つ。スマイルジャパンの愛称で親しまれている女子アイスホッケー日本代表が、ソチ、平昌(ピョンチャン)と二大会続けて出場権を勝ち取ったのとは対照的に、男子は開催国出場権を得た1998年の長野大会以来、いずれも予選で敗れている。

▼最後の勝利をもたらした男

男子日本代表が勝利を飾り、オリンピックで最後に君が代を聞いたのは、「1998年2月12日」。この日に生まれた子供の中には、パパやママになっている人も少なくないだろう。

そんな一日に"氷上の主役"となったのが、八幡真 (やはたしん=タイトル写真)だ。

残念ながら熱心なアイスホッケーファンでも、彼の名前を憶えている人は、少なくなってしまったに違いない。

だが、彼の名前は、「日本のアイスホッケー界に、22年ぶりとなるオリンピックの勝利をもたらした選手」として記されている。

▼日本に開催国出場権

スウェーデン人の父親と、日本人の母親の間に生まれた八幡にとって、大きな転機となったのは、長野オリンピックの開催が決まったことに他ならない。

日本アイスホッケー連盟の堤義明会長や、冨田正一国際アイスホッケー連盟副会長(いずれも当時)らの尽力が実り、競技を統括する国際アイスホッケー連盟は、14チームしか参加できない長野オリンピックにも、「開催国出場権」を与えたのだ。(現行の方式と異なるが当時の日本の世界ランキングは24位)

▼母の故郷・日本へ

日本アイスホッケー連盟は、この決定が届くのに先駆け、日本代表の強化策として、国外で生まれ育った者よりも、帰化手続きが進みやすいと言われていた日系人選手を中心にリストアップ。

その中に記されていたのは、後に日本代表の守護神を担った芋生ダスティ(日本名)=元KHLクンルン レッドスターGKコーチ)、 アジアリーグの初代MVPに輝いた桑原ライアン春男 (はるお=現OHLフリント アソシエイトコーチ)、さらには、19歳で来日したユール・クリスら帰化選手を招へい。

さらに、父親は祖国のスウェーデン生まれながら、母親が日本人の八幡も、日本国籍を持っていたことから、母の故郷を自らのステージに選び、オリンピックをはじめ、世界選手権で攻守の要として活躍。

なかでも特筆すべきは、長野オリンピックで日本代表の最後の試合となった13位決定戦で、ゲームウィニングショット(=サッカーのPK戦に相当)を決め、オーストリアを下して、日本に22年ぶりの勝利をもたらした立役者となったのだ。

▼NHLチームのスカウトに転身

引退後の八幡は、北欧の投資家がアジアリーグに参入した際のチーム(ノルディック バイキングス)や、NHLのサンノゼシャークスが、アジアリーグのチーム(チャイナシャークス)を中国に新設した際の初代GMに就任。

しかし、経営難に陥ったバイキングスは1季のみで解散。

一方でリーグの運営権も手にしようと画策を続けたチャイナシャークスも、方向性の相違から、アジアリーグに加盟したのは、2季だけに終わってしまった。

その後、八幡はアジアにとどまらず、サンノゼの次代を担う選手を発掘するスカウトに就任し、今季で13季目に。

加えて祖国のスウェーデンでのコネクションを活かし、ヨーロッパ担当スカウトのスーパーバイザーとなって4季目を迎えた。

▼八幡が推したドラフト1巡目指名選手

サンノゼは世代交代の時期に差し掛かり、昨季は5季ぶりにプレーオフへ進めなかった。しかし、このような時こそスカウトの腕の見せどころだとばかりに、八幡は自らが生まれ育った北欧を中心に、次代の主力選手の発掘に尽力し続けている。

そんな八幡が白羽の矢を立てた代表格は、チェコのトップリーグ(エクストラリーグ)在籍時に自らがスカウティングの中心となりドラフト1巡目(全体17番目)で指名をしたトーマス・ハトル (FW・当時19歳)だ。

また、故郷は異なるがフィンランド生まれのヨナス・ドンスコイ(一昨季にサンノゼからコロラドへ移籍/FW・28歳)も、アマチュア時代に八幡がスカウトとして視線を注いでいた選手で、FWのレギュラーとして活躍している。

▼ニルスのふしぎな旅

東京で育った八幡の母親は、スウェーデンの児童文学書「ニルスのふしぎな旅」に魅了され、スウェーデンへ留学した時に、夫(=八幡の父)と出会ったという。

1998年の今日、長野オリンピックは、チェコが金メダルを手にして全日程を終えた。

アイスホッケーの神様は、君が代を最後に聞いてから23年も経ってしまった日本代表に、いつ勝利を呼び込む出会いを、もたらせてくれるのだろうか。

※ Special Thanks :@Sheng_Peng

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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