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鳴尾浜に戻ってきた4年ぶりの拍手と歓声《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
5月12日、有観客開催となった鳴尾浜。打席の原口選手と三塁側スタンドの風景です。

 5月12日の朝、西宮市の阪神鳴尾浜球場が朝からにぎやかでした。新型コロナウイルス感染症の影響で3年以上も閉鎖されていたグラウンド側の門が開き、入場整理券を受け取ってスタンドへ上がるお客様は、明るい笑顔で皆さんとの再会を喜んでいらっしゃいます。

 私も取材人数制限などで3年間で5度も行けていないため、ほぼお客様と同じようなもので、やはり埋まったスタンドを見ると懐かしい感じがしました。この日は479人という入場者数です。

 2020年は、2月26日に1軍のオープン戦とファームの教育リーグを無観客で行うことが決まり、6月に再開された練習試合も同下旬に開幕したウエスタン・リーグ公式戦もすべて無観客でした。よって鳴尾浜のスタンドにお客様が入られたのは2020年1月、キャンプ前の新人合同自主トレまでだったので、約3年ぶりのこと。

 さらに、試合観戦という点で言いますと、前年の2019年10月3日にあった社会人・大阪ガスとの交流試合が最後です。公式戦では9月27日のソフトバンク31回戦以来なので、これはもう約4年ぶりだったわけですね。

 その間、少しずつ事態は前進したものの、まだ鳴尾浜にお客様を迎えるところまではいかず…。毎試合どころか、試合のない日でも練習を見に通っておられた“小虎ファン”の方々は本当に寂しい思いをされていたはずです。きっと、この日を待ち焦がれておられたでしょう。

 というわけで、試合が始まる前にスタンドでお声を伺ってまいりました。昔からスタンドで一緒に観戦していた“おなじみ”の方々で、1軍の試合よりもファームが大好きだとおっしゃる皆さんです。

朝早くから行列ができていたとのこと。開門後はこのように穏やかな風景でした。
朝早くから行列ができていたとのこと。開門後はこのように穏やかな風景でした。

ネット裏おなじみのシニア軍団

 いつもスタンドの上段に座っておられた70代の男性陣。久々の鳴尾浜はいかがですか?と尋ねたら「ゆうべ寝られへんかったわ」「場所がどこにあったかな~と忘れてしもた」「それはボケてるからや!」なんていうやり取りが(笑)。

 皆さんはここ以外でも集っておられたそうですが、会うのも3年ぶりですか?「そうそう!毎年やっていた忘年会もなしで。3年でみんな歳いっとるんや~」。お元気で会えてよかったですね。「誰かおらんようになったんちゃうか」。いやいや、そんなこと。

 と言っていたら2025年に移転する尼崎の新球場の話になりました。「今度は駅から近いな」とか「小田南公園は年寄りの憩いの場所やねん。じいちゃん、ばあちゃんがベンチにズラーっと並んでるわ」とか。そして「わしらもその口やで、後期高齢者(笑)」というオチに。

 また「3年ぶりに来たらね、背番号と顔とが全然わからへん。テレビで見てるけど、ここに来たら、ほんまわからへん」という方がありました。それは私も同じです。新入団発表会にも3年間行けていなくて…。今から取り戻しましょう!

 そして、試合だけでなく練習の日も通っておられた方は「寂しかったよ。この日をずっと待ってた。長いね、3年は…。前を通ることはあったけど、中には入れないから通るだけで帰ったり。3年前までは毎日来ていたからねえ。試合がなくても練習を見に毎日」としみじみ。

 それは寂しかったでしょう。ことしは練習日に入れないのが残念ですが、それでも試合の日はこうやって今までと同じ席で選手を見られるのは前進ですかね。試合前のノックで、あらぬ方向へ飛ぶ打球に「わー!」「おいおい!」「どこに打ってるねん」など声が出るのも楽しいと、皆さん口を揃えていらっしゃいます。

試合後の整列も鳴尾浜では久しぶりですね。右から笑顔の和田豊監督、野村克則コーチ、田中秀太コーチ。
試合後の整列も鳴尾浜では久しぶりですね。右から笑顔の和田豊監督、野村克則コーチ、田中秀太コーチ。

「選手の成長が一番の楽しみ」

 鳴尾浜の試合はほとんど観戦され、終わると甲子園へ移動して1軍を観るという日々を送っておられた40代の女性。「嬉しいです。自分の場所に帰ってこられたのが嬉しい。知り合いに会えたこともよかったです」

 ここに来る楽しみは何でしたか?「選手を見られることと、その成長が楽しみやったかな。この3年間は見られへんかったから…全部忘れた。だからまた一からスタートです!きょうは富田くんが先発やから来てよかった。富田くん見たい。楽しみです」

 お隣にいらした60代の女性は「私、2軍の選手が好きというか、育っていく姿が好きやから。育成の頃から見ていた選手が1軍にいるのは嬉しい」というお言葉でした。

勝利した時のマイクパフォーマンス、甲子園では継続していましたが鳴尾浜では4年ぶり。マイクを渡され、無事に話し終わってお辞儀をする森木投手です。
勝利した時のマイクパフォーマンス、甲子園では継続していましたが鳴尾浜では4年ぶり。マイクを渡され、無事に話し終わってお辞儀をする森木投手です。

お世話になった“鳴尾浜幼稚園”

 最後は40歳の女性。「なんかもう感無量じゃないですけど(笑)、懐かしい感じがメッチャあります。みんなと久しぶりに会って、色々よみがえりました。あんなこと、こんなこと、あったなあって。私が1軍の試合に行かないと、ここでしか会えない人たちもいて。そんな人たちとも再会できた」

 いつも息子さん同伴で来ていたんですよね?「はい、ここに通い始めた時に2歳か3歳やった子が、今は小学3年生になりました!」。ひゃ~時の流れを感じる。きょうは?「子どもを学校へ送り出して、自転車で来て8時過ぎに並びました」。さすがです。

 「2軍はここ!ここがいい。鳴尾浜が好きで通っていた部分もある。思い出もここにいっぱいある。子どももここで育ててもらったようなものやし。あんなちっちゃい子、普通は邪魔やろうに迎え入れてくれたのもここ。甲子園だと肩身が狭かったけど、ここなら『いいよ、いいよ』と自由にさせてもらって」

 「“鳴尾浜幼稚園”って呼んでた(笑)。みんなが見てくれて安心でした。子どもの姿が見えなくなって慌てた時も、誰かが『あそこにいるよ。大丈夫、見てるから』と。皆さんが保護者で、皆さんに育ててもらった」。あーそうでしたね、思い出します。いつも元気に駆け回っていたのを。

 そして「待ちに待ったこの日!私にとっても、いわば鳴尾浜の初日やから気合を入れて綺麗にしてきました」と。いつか学校のお休みに、大きくなったお子さんも連れてきてくださいね。

これはビジターチームの一塁側ベンチ上。以前のようにギュウギュウ詰めではありません。
これはビジターチームの一塁側ベンチ上。以前のようにギュウギュウ詰めではありません。

◆逆転でソフトバンクに今季初勝利

 さて、この日の先発は既に1軍で7試合に登板してプロ初勝利も挙げているドラフト6位ルーキー・富田(とみだ)蓮投手でした。5月7日に登録を抹消され、このたびスターター転向の方針を受けての“プロ初先発”です。

【12日】

阪神-ソフトバンク9回戦 (鳴尾浜)

 ソフ 200 000 000 = 2

 阪神 000 000 13X = 4

▼バッテリー

 【ソ】有原(5回)-甲斐野(1回)-泉(1回)-●又吉(1敗)(1/3回)-高橋純(2/3回) / 渡辺陸

 【神】富田(4回)-○森木(1勝2敗)(4回)-S小林(1勝2敗6S)(1回) / 長坂-栄枝

▼二塁打 ソ:勝連、増田

     神:板山

▼盗塁  ソ:増田、緒方

《試合経過》※敬称略

 富田は1回、1死後に連続二塁打で1点、さらにタイムリーもあって2失点の立ち上がりでした。しかし4回は1死満塁のピンチをしのぐなど4イニングを投げ5安打無失点。次の森木は5回、ヒットと四球などで1死一、三塁とされながら併殺。6回も2四死球とするも後続を断って無失点。7回は連続三振もあり三者凡退でした!

 一方、ソフトバンク・有原に対して1回は前川と森下の連打、2回は板山が二塁打を放ちますが得点なく、3回からは3イニング続けて三者凡退に。しかし7回、原口の中前打と相手エラーで無死一、二塁。併殺で2死三塁となるも、長坂がタイムリー内野安で1点を返します。

 8回も森木がビシッと三者凡退に抑え、その裏に島田の四球と高寺の犠打、前川が中前タイムリーで同点!さらに森下と伊坪が連続死球で1死満塁となり、板山が右前タイムリー!ここで又吉をリリーフした高橋純から、片山が四球を選んで押し出し!

 この回2点を勝ち越した阪神。9回は小林が登板して三者凡退で締め、ソフトバンク戦今季初勝利(1勝8敗)となりました。

1軍からの志願出場だった原口文仁選手は、7回に先頭で中前打を放って反撃の口火を切り、甲子園へ。
1軍からの志願出場だった原口文仁選手は、7回に先頭で中前打を放って反撃の口火を切り、甲子園へ。

そのあと2死三塁となって、同じく1軍から参加の長坂拳弥選手がタイムリー内野安打!
そのあと2死三塁となって、同じく1軍から参加の長坂拳弥選手がタイムリー内野安打!

有観客で練習から違った空気

 では遅ればせながら、12日の試合後に聞いたコメントをご紹介します。まず和田豊監督です。

 ソフトバンクに今季初勝利だったことについて「まあここまで8連敗はしているんだけど、ほとんどが接戦。ちょっと隙が出たりするとやられて落とすゲームがあった。きょうは初回の2失点以降、森木を含めてピッチャーが頑張ってくれた。きょうはピッチャーの頑張りが非常に大きい」とのこと。

 初先発の富田蓮投手は?「もともと先発をしていたピッチャーなので勘を取り戻すというか。長い間やっていなくて初回はちょっと本人も感じがおかしかったんじゃないかな?2回以降はスッといけていたから投げるたびによくなっていくと思う。先発となるとスタミナも要るから、そこらへんは投げ込んで球数やイニングを伸ばしながら修正していくしかないよね」

 森木大智投手が4回を無失点。「まあ何とか抑えたっていう感じではあったけど、抑えて自信にもなるだろうし。あとはランナーを背負ってから。まだバタバタすることもあるので。課題はそういうところかな。球自体は悪くないし、また1つデッドボールを当ててから、そのあと崩れなかったっていうのは成長している」

 板山祐太郎選手が2安打!「遠征中もこっちに置いて打ち込ませたので、そこで形めいたものができてきたかと。でもゲームで結果が出ないことにはしっくりこないだろうから、そういう意味では少しずつ板山らしいバッティングができつつある。まあ彼の本来の力からすればまだまだだと思うけど、きょうの決勝打をきっかけに上げていってほしいね」

 また有観客での開催には「やっぱり人に見られているのは、いい意味でより集中して恥ずかしいところは見せられないっていう空気が伝わってきたよね。練習の時からね。やっぱりプロである以上ファンの皆さんが観てくれる環境でやることが成長の1つの要素なので、多くの方々に鳴尾浜へ足を運んでいただいて叱咤激励してほしいな」と締めくくった和田監督です。

逆転後の9回に登板して1イニングを三者凡退に切って取った小林投手。
逆転後の9回に登板して1イニングを三者凡退に切って取った小林投手。

変化球の精度と体力アップ

富田投手は登板を振り返って「テンポよく投げるのを目標にやったんですけど、やっぱり走者が出ると慎重になりすぎて守備のリズムが悪くなった場面もあった。そこは課題としてやっていきたい」と話しています。

 疲れはありますか?「疲労は全然。大丈夫です」。交代のタイミングは球数で?「そうですね、80球メドだったので、73球を投げたところで交代という形でした」

 先発として、攻め方は変化させた?「そうですね。1軍とは違い、変化に対応して振ってくる打者が少なく見えたので、変化球でカウントが取れればもっと有利になってくると思う。自滅しないようにもう少し精度を上げたり、体力はまた一から作っていきたいなと思います」

 先発調整するうえで大事になってくることは?「中継ぎみたいに毎日ブルペンに入るわけでもないから自分のルーティーンというのをしっかりと持って、あとは4回や5回もヤマになってくると思うので体力面というのは、もう少しブルペンで投げ込んだりして作っていきたいです」

“プロ初先発”の富田投手。次はいつになるのか、楽しみですね。
“プロ初先発”の富田投手。次はいつになるのか、楽しみですね。

青柳投手からの言葉

 続いて森木投手は「決して内容がいいとは思えないですけど、でもゼロで抑えられたのは自信になりました」と振り返り「(前回登板に比べ)気持ちの面で、真っすぐをゾーンでどんどん押していくのを意識しました。ひっかけたりするところもあったけど、それでも真っすぐをゾーン内で押していくこと」と言います。

 今回の登板までに監督やコーチから何かアドバイスは?「特にフォームのことでは、しっかり開かずに我慢してというのはあったんですけど、それ以上に僕は、青柳さんにお話ししていただいたことが…。『ゾーン内で勝負したらいい、ということだけだよ』と言ってもらって、すごく気持ちが楽になった。それでどんどん攻めていこうと思いました」

 前回登板(5日)の直後?「そうですね。雨で室内練習場で練習した時に青柳さんと10分くらい話して、すごくありがたかったです」。それは森木投手から?「いつか話ができたらいいなとは思っていたんですけど、青柳さんから。前回の登板を見てもらったみたいで『お前どうした』と言われて、僕が『やぎさ~ん』って(笑)。そんな感じです」。きっかけは作ってもらったんですね。「はい」

5回からの4イニングを投げた森木投手。7回と8回はともに三者凡退、最速は150キロでした。
5回からの4イニングを投げた森木投手。7回と8回はともに三者凡退、最速は150キロでした。

 きょうから有観客の鳴尾浜。今までと違う?「そうですね、モチベーションは全然違います。やっぱり応援してくれるファンのためにも勝ちたいって思いましたし、それを1軍でするために、ここでしっかりできないといけないと思ったんで頑張りました」

 鳴尾浜では久々となるマイクパフォーマンス、もちろん森木投手にとっても鳴尾浜で初めてですね。何と言ったか覚えていますか?「なんて言いましたっけ?」。きょうはありがとうございました、と最初に。「で、有観客になって初勝利できました、と多分言ったと思います。多分(笑)」

 なぜ森木投手が担当したの?「行けって言われて。僕は板山さんかなと思ったんですけど、行けと」。その会話が聞こえていましたよ。「森木、森木」「え、板さんが…」という声。「そうでしょう?いやほんと絶対に板さんだと思ったんですけどねえ」

 鳴尾浜でお客さんを見ること自体、森木投手にとって初めてですもんね。「初めてです。きょう朝、ビックリしました!すごい人だかりで。列も。とんでもなかったです」。本当の鳴尾浜はこんなもんじゃないですよ。「そうなんですか!…が、頑張ります」。一同爆笑の締めでした。

連続三振などで三者凡退だった7回、ベンチに戻りながら最初は難しい表情をしていたんですけど、周りに声をかけられて、ジワジワと笑顔が出てきた森木投手。
連続三振などで三者凡退だった7回、ベンチに戻りながら最初は難しい表情をしていたんですけど、周りに声をかけられて、ジワジワと笑顔が出てきた森木投手。

あとは長打…が出ました!

 左肩の状態もよくなってきた前川右京選手、12日は守備についての先発出場となりました。そして8回の同点打は又吉投手から打ったもの。「1年目のオープン戦で対戦させてもらって、インコースの真っすぐ、カット系を絶対に投げてくるなと思ったので、あれをとりあえずファウルにできて、そこでちょっと落ち着いたというか。何とかついていくという気持ちで前足を開かずに、うまく拾えたかなと思います」

 投手陣が踏ん張っていた中で出せた1本。「島田さんがフォアボールで出てくれて、高寺さんがバントで送ってくれたので、この回しかないなと。しっかり貢献しようという気持ちでいった結果で、よかったです」

 また「きょうも最後は2ストライクから打っていて、それまでに仕留める球を仕留めていくのが、これからの本当の課題。2ストライク後の対応は自分でも自信を持ってやっていけているので、2ストライクまでの1球を仕留めるという課題をつぶしたいなと思います」と話しました。

 バッティングの調子は上がっているかという問いに「まあ状態はだいぶ上がってきているとは思うので、あとはやっぱり長打がないのが…」と答えた前川選手。この日まで25安打で二塁打が2本だけでした。でも翌13日は3番DHで7回に右前打を放ち、2四球を含む2打数1安打。そして14日は6回に待望の長打、今季1号が出ています!

8回に又吉投手から同点タイムリーを放った前川選手。今ちょっと前髪がおしゃれになっていますね。ここでは見えませんけど。
8回に又吉投手から同点タイムリーを放った前川選手。今ちょっと前髪がおしゃれになっていますね。ここでは見えませんけど。

「まだまだです」と板山選手

 8回の勝ち越しタイムリーを含む2安打だった板山選手は、記者に囲まれて「チャンスを自分でつかむしかないと思っているので、引き続き頑張ります」と、表情は引き締めたままです。

 チーム遠征中は残留で打ち込んだとか。「落ちる(降格の)時に、1軍の球の速いピッチャーに対して真っすぐの空振りが、自分の中で目立っていたというか、あったので…(バットが)潜らないよう、レベルに回るように3日間しっかり振り込んで練習しました」

 いい仕事ができましたよね?と振っても「いえ、まだまだです」と言い残して室内練習場へ。

 そんな板山選手は翌13日の試合でも6回1死二、三塁の場面で、結果的に決勝打となる先制タイムリーを放っています。さらに14日はなんと、4回に逆転の満塁ホームラン!結果的に、この3連戦すべての決勝打が板山選手ということですね。

板山選手は8回に勝ち越しタイムリー!試合後も室内練習場でしっかり打ち込みました。
板山選手は8回に勝ち越しタイムリー!試合後も室内練習場でしっかり打ち込みました。

お尻に死球で「思わず声が(笑)」

 8回の初打席で初球デッドボールだった伊坪陽生選手にも少し聞きました。大丈夫?背中に当たったかと。「あはは、大丈夫です。お尻ですよ、お尻(笑)」。ドスッと、すごい音が…。「僕も思わず声が出ちゃいました。あー!って(笑)」

 直後にベンチから北川博敏コーチが「よし!」とか「ラッキー!」とか、さらには「痛くないよー、痛くない!痛いのは向こうだから」と大きな声で。聞こえました?「そうなんですか(笑)。全然聞こえなかったです」

 でも本当に、板山選手の勝ち越し打へとつながったわけですから、もちろん伊坪選手も痛かったけど、向こうにはもっと痛い1球になりましたね。

7回、原口選手の代走・伊坪選手。出たばかりなのに牽制球を3度放られ、あっという間に泥だらけです。
7回、原口選手の代走・伊坪選手。出たばかりなのに牽制球を3度放られ、あっという間に泥だらけです。

◆次の試合は無四球完封リレー!

 さて、鳴尾浜は翌日から予報が悪く、もしかすると週末のゲームは流れてしまうかも…と心配でしたが、なんと2試合とも行われたんですね。この土日を楽しみにされていた方も多く、雨の降る時間があったにもかかわらず13日が400人、14日も321人のお客様でした。

 13日は秋山拓巳投手からの完封リレー、14日は板山選手の満塁弾を含む3発で勝利!これで7連勝となった阪神ファーム。取材に行けなかったので、試合結果だけ書いておきます。

【13日】

阪神-ソフトバンク10回戦 (鳴尾浜)

 ソフ 000 000 000 = 0

 阪神 000 001 10X = 2

▼バッテリー

 【ソ】武田(5回)-●中村亮(1勝2敗)(1回)-椎野(1回)‐泉(1回) / 海野-吉田

 【神】○秋山(1勝1敗)(6回)-馬場(1回)‐岡留(1回)‐S島本(1敗1S)(1回) / 中川

▼二塁打 ソ:上林2、海野

     神:高浜、中川

《試合経過》※敬称略

 秋山は1回、3回、5回にそれぞれ二塁打を許したものの、これも合わせてすべて散発の4安打無失点で6回を投げ終えました。しかも4連続を含む10奪三振、無四球です。

 打線の方もソフトバンク・武田の前に5回まで散発4安打で9三振と得点なし。ようやく6回、代わった中村亮から高浜の二塁打などで1死二、三塁として6番・板山が右前タイムリー!7回は四球を選んだ高寺が、高山の犠打に続く北條の中前タイムリーで2点目。

 リリーフ陣は、7回の馬場が三者凡退、8回の岡留は1安打無失点、9回は島本が三者凡退で試合終了!4投による無四球完封リレーでした。

写真は12日の8回、タイムリーを打って一塁にいる笑顔の板山選手。13日も14日もタイムリーやホームランで、しかも3試合とも決勝打でした。
写真は12日の8回、タイムリーを打って一塁にいる笑顔の板山選手。13日も14日もタイムリーやホームランで、しかも3試合とも決勝打でした。

◆チーム3安打、しかしすべてHR!

【14日】

阪神-ソフトバンク11回戦 (鳴尾浜)

 ソフ 300 000 010 = 4

 阪神 000 050 10X = 6

▼バッテリー

 【ソ】●木村(1敗)(3回1/3)-中村亮(2/3回)-フェリックス(1回)-又吉(1回)-尾形(2回) / 渡辺陸

 【神】○川原(1勝2敗)(5回)-二保(1回)-岩田(2/3回)‐岡留(1/3回)‐渡辺雄(1回)‐小林(1勝2敗7S)(1回) / 栄枝-片山

▼本塁打

  ソ:リチャード 7号2ラン (川原)

  神:板山 1号満塁 (木村)

    栄枝 1号ソロ (木村)

    前川 1号ソロ (又吉)

▼三塁打 ソ:井上

▼二塁打 ソ:勝連

《試合経過》※敬称略

 この日も初戦同様、1回に先制されます。先発の川原がヒットと四球、犠打で1死二、三塁として4番・生海の中犠飛。続くリチャードの7号2ランで3点を奪われました。一方の打線はソフトバンク・木村に3回まで打者9人でピシャリ…。

 前の2試合と同じく遅めの反撃ではありますが、4回に先頭から3連続四球を選んで、1死後に5番・板山がライトへ今季1号の逆転満塁ホームラン!さらに栄枝も今季1号で続いて5対3としました。

 2回以降、追加点を与えなかった川原が5回まで投げ、6回は二保が1安打無失点。そしてその裏、先頭の前川が待望の今季1号!12日に同点タイムリーを放った又吉投手から、しかも初球を放り込んだものです。

 6回は岩田が味方エラーと2四球などで2死満塁で降板、代わった岡留がリチャードを見逃し三振に仕留めて無失点。しかし8回、渡辺雄が1死後に井上の三塁打を浴び、渡辺陸の遊ゴロで1点返されますが、9回は小林が内野安打2本を許しながら0点に抑えて勝利。

 阪神打線は3安打のみですが、これがすべてホームランで6得点!残塁は0という結果です。苦手ソフトバンクに8連敗のあと3連勝。これで6日のオリックス戦に勝ち、9日からの広島戦と今回のソフトバンク戦は負けなしで、今季初の7連勝となりました!

今季1号が出た前川選手!長打が…と言っていた2日後ですね。写真は3月17日のウエスタン開幕戦のもの。
今季1号が出た前川選手!長打が…と言っていた2日後ですね。写真は3月17日のウエスタン開幕戦のもの。

◆まだ続く?ホームラン攻勢

 7連勝でも、まだ34試合で15勝19敗と借金4つ抱えての4位ですが、昨年も似たような展開でしたよね。4月終了時は6勝15敗1分け(勝率.286)で4位だったのに、5月は17勝3敗1分け(勝率.850)と怒涛の巻き返し!

 しかも5月21日から6月9日にかけて13連勝があり、その間に首位へと浮上しています。ことしも昨年の今ごろと同じような数字なので、鳴尾浜のお客様に後押ししてもらって、どんどん勝ち試合を見せてください。

 きょう16日からは中日との3連戦で、早くも2本のホームランが出たようですよ。1回に森下翔太選手が“プロ1号”のソロ!4回には伊坪選手が3号ソロを放ったとか。30度近い気温となったナゴヤ球場は試合も熱く、中盤に追いつかれたものの9回に勝ち越し!と思ったら再び同点となって延長10回、4対4で引き分け。まだ連勝は止まっていませんね。

12日の試合後、ものすごくいい笑顔でじゃれあう同期の2人。左は12日に先発をした富田投手、右は16日の中日戦(ナゴヤ)で“プロ1号”を放った森下選手です。
12日の試合後、ものすごくいい笑顔でじゃれあう同期の2人。左は12日に先発をした富田投手、右は16日の中日戦(ナゴヤ)で“プロ1号”を放った森下選手です。

  <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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