すぐに終わる方がいいか、じっくり出来る方がいいか:時間の見積り
1日の終わりに、「今日は思ったより仕事に時間がかかった」と感じることがあります。あるいは逆に、「もっとかかると思ってたけど、意外に早かった」と感じることもあります。
こう感じるのには、「時間の見積り」という頭(認知)の働きが関係しています。時間の見積りは、自分が取りかかることにどのくらい時間がかかるか、予測を立てることなどを指します。思ったより時間がかかったと感じるのか、あるいは意外に早かったと感じるのかは、時間の見積もり方で変わる部分があります。
思ったより時間がかかったと感じる場合は、時間を実際に必要な量より少なく見積もっていた可能性があります。例えば、仕事で報告書を作るとき、「だいたい30分くらいで出来るだろう」と見積ってから取りかかったものの、実際には1時間くらいかかったような場合です。見積もった時間よりもたくさん時間がかかると、焦るものです。その一方で、30分で終わるのか、それとも1時間で終わるのかで、取りかかる前に感じる「大変そう」さが違います。そのため、時間を少なく見積もると、作業に取り掛かりやすくなるといえます。
これとは反対に、意外に早かったと感じる場合は、時間を実際に必要な量より多く見積もっていた可能性があります。例えば、報告書を作るとき、実際には1時間くらいで終わるものを、「だいたい2時間くらいかかるかな」と見積もって取りかかるような場合です。こうすると、余裕を持って作業を仕上げられ、また、早く終わると得をした気分になるものです。その一方で、締め切りが迫っているのにトラブルが起こった場合などで、その処理時間を実際に必要な量より多く見積もると、それによって焦りが増すこともあります。
時間の見積もり方法は、人によって傾向があるようにも感じます。これは、その人が時間に関して何を好み、何に安心するのか、何を避けたいと思っているのかなどを、反映している部分もあるのではないでしょうか。例えば、少なく時間を見積もりやすい人の場合、「すぐに終わると思うとやる気になる」とか、「たくさん何かをやらなければいけないのは嫌だ」といったことを考えているかもしれません。反対に多く見積もりやすい人の場合、「じっくり出来て、仕上げるのに安心だ」といった考え方をしているのかもしれません。
どちらの見積もり方法が良いということではないように思います。制限時間の有無や、作業の慣れによって見積もりは変わるでしょうし、自分だけの作業か人が関わる作業かで、実際にかかる時間も変わるでしょう。
しかし、もし「いつも思ったより時間がかかって嫌だな」といったことを感じるなら、見積もり方法を変えてみるのは一つの手でしょう。例えば意識的に反対のことをしてみるのは、どうでしょう。もし時間を少なく見積もる傾向があるなら、多い見積もりも一緒にして、「この作業は最短だと30分、最長だと1時間くらい?」といった具合に見積もってみます。そして、終わった後どちらが近かったが確かめます。こうすることで時間を見積もるスキルが磨かれていくと思います。もちろん全ての作業でこんなことをやったら疲れてしまいますが、大事なことに関してやってみるのはありかもしれません。