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ソーシャルメディアの利用目的、その実態をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 人と人のつながりを可視化するソーシャルメディア。その利用目的は

目的は「知人との交友が8割強」

今では電話や手紙同様のメジャーな意思疎通手段と評しても過言ではないソーシャルメディア。人はなぜソーシャルメディアを使うのか。総務省が2016年8月に詳細値を発表した「通信利用動向調査」を基に、その実情を確認していく。

今件における「ソーシャルメディア」だが、補足説明の用語集では「インターネット上の交流を通して社会的ネットワーク(ソーシャルネットワーク)を構築するサービスのことである。Facebook やTwitter、LINE などが代表的」(ソーシャルネットワーキングサービス(SNS))とある。LINEなどのようなチャット系コミュニケーションサービスは厳密には定義から外れるが、社会全般的には同一視されていること、質問の上でもそのような区分がなされているため、該当するものとみなす。他方、広義では含まれることになる掲示板や動画投稿・共有サイト、ブログは他項目で別途言及されていることもあり、該当しないものとする。

今調査によればソーシャルメディアの利用率は、インターネット利用者においては49.0%(無回答者除く、以下同)。見方を変えると、インターネットにアクセスできる機会を持ちながら、ソーシャルメディアの類を使っていない人は5割強に及ぶことになる。

↑ ソーシャルメディア利用者率(インターネット利用者対象)(2015年末)
↑ ソーシャルメディア利用者率(インターネット利用者対象)(2015年末)

世代別では20代がもっとも利用率が高く7割超え、40代までは過半数で、50代でも4割を超えている。むしろ60代以降でもインターネット利用者の2割前後が利用している実態には驚かされる。

それではソーシャルメディア利用者は、何を目的としてアクセスしているのか。全体的な回答が次のグラフに示されているが、最上位の同意率を示している項目は「従来からの知人とのコミュニケーション」。つまり利用者のうち86.3%は、ソーシャルメディアで身近な知人とのお話、交流を望んでいることになる。

↑ ソーシャルメディアの利用目的(ソーシャルメディア利用者限定)(複数回答)(2015年末)
↑ ソーシャルメディアの利用目的(ソーシャルメディア利用者限定)(複数回答)(2015年末)

これは手紙やメール、電話と比べると利用ハードルが低く、気軽にコミュニケーションができるのがポイントとなり、多くの人に使われていると見て良い。また、自分の状況を披露しておくことで、自分の知人に間接的な意思表示(例えば「忙しい」「元気だ」「明日は暇だ」)をすることも可能となる。

次いで多い目的は「知りたいことについて情報を探す」で38.6%。ソーシャルメディア内で知的好奇心の充足を望んでいることになる。昨今ではソーシャルメディア上で情報を直接、あるいは間接的に(URLなどでガイダンスする形で)公知する場合も多く、これらをたどることで望んだ情報を取得できることになる。あるいは関連する情報を得られそうなアカウントに追随し、日頃からチェックをする場合もあろう。

一方、はっきりとした目的意識は無い「暇つぶし」との回答率も3割近く。交通機関を使った移動の際に雑誌や新聞を読み進めるような、あるいは休日の午後、特にすることも無く外出するのも面倒な時の時間の経過を過ごす際に、ソーシャルメディアをざっと眺めて場の雰囲気を楽しむ人は案外多い。

やや回答率は下がるが、「同じ趣味や嗜好を持つ人を探す」も2割近く。いわゆる「類友」「同好の士」を探す主旨。趣味が同じならば有益な情報交換もでき、共に語らうことで有意義な時間を過ごせる。さらにこれと類するものだが、相手を特定せずに情報発信をし、自己顕示欲の充足やストレス解消と共に、「自分と同じ立場にある人」を探す(探してもらうきっかけを作る)動きもある。

震災以降その役割が重要視されるようになった「災害発生時の情報収集・発信」は8.7%と1割に満たない。普段から意識して利用する、明らかな目的として認識した上で注視する人はさほどいないとの意味であり、使うことが無いわけではあるまい。

年齢で変わる利用目的

続いていくつかの属性別で再計算を行い、その動向を確認する。まずは年齢階層別。

↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)
↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)

どの世代でも「知人との交友」が最多回答項目であることに違いは無いが、歳と共にその値は下がっていく(6~12歳でやや低めなのは、実社会でも交友範囲が限定的なのが原因)。他方「情報探索」は歳を経るに連れて上昇していく動きがある。一番高い値を示しているのは、意外にも70代。シニア層にとってソーシャルメディアは、情報の名前を冠する宝物が散在している場所に見えるようだ。

「同好の士」を探す動きも「知人との交友」と同じ流れで、若年層ほど高い。ソーシャルメディアを使い、新規にしても従来のつながりにしても、積極的にコミュニケーション網を広げていこうとする意志が見える。

一方値そのものは低いが「自分の情報や作品の発表」は13歳以降世代間の格差があまりない。70代以降で減退を見せる程度。世界へ向けた情報発信への意欲、期待は年齢を超えている。これはシニア層においては、注目、そして評価すべき流れと言える。

「災害発生時の情報収集・発信」だが、こちらはシニア層の方が高い値を示している。70代が最大値で2割に迫る勢い。先の震災時には千差万別ではあるが、情報の確認や発信にソーシャルメディアが役立ったことは誰もが認めるところ。特に高齢層はそのありがたみを強く覚えたようだ。

男女の違いと同じ部分と

次いで男女別の動向。こちらは同一性別内における世代別の流れを見やすくするため、上記のグラフとは項目の表記を変えてあることに注意。また「上位陣」と「下位陣」では回答率に差異がありすぎるため、縦軸の区切りも変更してある。

↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(男女別、上位陣)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)
↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(男女別、上位陣)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)
↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(男女別、上位陣)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)
↑ ソーシャルメディアの利用目的(複数回答)(年齢階層別)(男女別、上位陣)(ソーシャルメディア利用者限定、2015年末)

「知人との意思疎通」をはじめとしたコミュニケーション系は全般的に女性の方が高め。女性がデジタル・アナログを問わずコミュニケーションを好むことはすでに知られている通りだが、それがソーシャルメディア内でも結果として表れている形。一方で「情報探索」は中堅以降では男性の方がやや高くなるが、若年層ではやはり女性の方が高い。特に13~19歳の差異は印象的。

コミュニケーションのテーマとして用いられることが多い、趣味趣向に関して「同好の士」を探す動きではやや男女間の差異は大きい。若年層は女性が、中堅層以降は男性の方が高い値を示している。一方「暇つぶし」は男女の差があまり見られない。やや中堅以降で男性が高めを示す程度の違い。

また上位陣では13~19歳で「知人との意思疎通」以外の項目にて女性の値が大きく男性を抜きんでる結果が出ており、この年齢階層における女性のソーシャルメディアの利用目的が多様に及んでおり、積極的に活用している様子がうかがえる。

「災害発生時の利用は、シニア層が高いが、特に男性は歳を経るほど利用する人が多くなる」「自作品や自情報の発信意欲、昔の知人などの探索は女性では若年層で特に強く、男性は成人でほぼ同じ割合」「ストレス解消は全般的に女性の方が高め」などの動向が確認できる。

法的に、そして規約的に問題が無い限り、ソーシャルメディアをどのような利用目的で使おうと、他人がそれを束縛する権利はない(無論、昨今問題視されている盗用コンテンツの悪用や、詐称的なリンク掲載による釣り行為は問題外である)。一方、ソーシャルメディアはあくまでもツールでしかなく、そのツール経由で伝達される情報の真偽性は、ソーシャルメディア自身が担保しているわけではないことに注意しなければならない。例えば「世界最大規模のFacebookで語られていた話だから、この情報は絶対に真実だ」と盲信すると、痛い目にあう可能性は十分にある。

情報の「確からしさ」を精査するには、経由されたサービス以上に、どこを情報発信源としているかについて、確認をすべきであることはいうまでもない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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