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北朝鮮の14回目の「ゴミ風船」に韓国軍は390発の射撃訓練で対抗!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国が引いた北方限界線(NLL)と北朝鮮が引いた海上境界線(筆者作成)

 北朝鮮が9月4日、5日と2日連続で韓国に向けゴミ風船を飛ばしていた。特に5日は午前と午後2度飛ばしていた。

 韓国の脱北団体の対北宣伝ビラ風船に対抗して北朝鮮がゴミ風船を飛ばしたのは5月26日。それ以降、6月に6回、7月に3回、そして8月は10日の1回だけだった。北朝鮮は8月10日を最後にストップしていた。

 その理由について韓国のメディアなどは金正恩(キム・ジョンウン)総書記をターゲットにした韓国軍の拡声器放送を止めさせるため「自粛しているのかも」とか「あまり効果がないから」とか、「物不足でゴミを集められないから」とか、あるいは豪雨に見舞われた平安北道や慈江道、両江道の「水害復旧に追われ、ゴミ風船どころではないのでは」と、様々な解説を流していたが、いずれも的外れだった。

 韓国当局は北朝鮮が25日ぶりにゴミ風船を飛ばした真意を計り知れないようだが、前例からして脱北団体が散布した対北宣伝ビラへの対抗措置ではないかと推察される。

 「自由北韓運動連合」をはじめとする脱北団体はこれまでは事前予告するとか、あるいは散布後に公表していたが、反対派地元住民の妨害を恐れ、また「軍事境界線での緊張を高めている」との野党の批判もあって8月からは非公開、それも誰にもわからないように深夜こっそりと実行していた。

 北朝鮮が8月10日に17日ぶりに飛ばしたのもその前日(9日)に脱北団体が非公開で対北ビラ風船を飛ばしたことと関係していたことがその後、明らかになった。

 今のところ、どの脱北団体も名乗り出ていないが、対北宣伝ビラはこれまでも金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)前総書記の誕生日や党創建日など北朝鮮の重要な節目の日に合わせて行われていたことからおそらく9日の建国記念日を念頭に散布されたものと推測できる。

 北朝鮮の延べ14回にわたる、それも「北朝鮮が耐えられないような措置を取る」として拡声器放送に踏み切ってから数えて13回目となるゴミ風船に韓国は所管の統一部が遺憾の意を表しただけだが、韓国軍は5日午後2時から1時間にわたって海の軍事境界線と称されている北方限界線(NLL)上にある延坪島とペクリョン島から自走砲と多連装ロケットを使って射撃訓練を実施し、計390発の砲弾を海上に放っていた。韓国軍のこのエリアでの海上射撃訓練は6月26日以来、実に71ぶりである。

 NLL西部諸島での海上訓練は2018年9月の南北首脳会談で締結された南北軍事合意により中止されていたが、韓国軍は北朝鮮の好戦的な対応に反発し、6月4日に効力の失効を宣言していた。

 韓国軍は6月の時も第6旅団と延坪部隊が自走砲や多連装ロケット、ミサイル「スパイク」、70ミリ誘導ロケットなど計290発を南西の公海上の標的に向けて発射し、北朝鮮を威嚇、牽制していた。

 NLLを認めていない北朝鮮は今年1月に開かれた最高人民会議で韓国との関係を一切断ち切り、韓国を「第1の敵国」に定めている。施政演説で金正恩国務委員長(総書記と兼ねている)は「我が国家の南の国境線が明白に引かれた以上、不法無法の『北方限界線』をはじめとするいかなる境界線も許されず、大韓民国が我々の領土、領空、領海を0.001ミリでも侵犯するならばそれは即、戦争挑発と見なす」と、これまた韓国を牽制していた。

 韓国軍が海上射撃訓練を行った昨日、北朝鮮の国防部は公報室長を通じて「情勢悪化にはそれなりの代償を払わせる」との談話を出していたが、上陸艇など艦艇40隻と「Fー35」など各種戦闘機を投入した海軍と海兵隊による米韓合同上陸訓練(双竜訓練)が明日(7日)終了することもあって鳴りを潜めている北朝鮮軍の出方が今後、注目される。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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