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「今年最強・長寿・迷走台風」5号のこれまでを振り返る

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
1日(火)台風5号の赤外画像 (画像:NOAA)

気象庁も頭を抱えるほど、台風5号は読めない動きを見せています。

ブーメランのように一回転したあげく、目覚ましい急発達をとげ今年最強の台風となった上に、長寿台風としても記録を生み出す可能性すら見せています。まさになんでもありの台風5号ですが、これまでの動きを振り返ってみたいと思います。

今年最強のスーパー台風

一時、中心気圧が930hPaまで下がり、地球上における今年最強の台風(ハリケーンも含む)となりました。日本の基準では「非常に強い台風」ですが、米軍合同台風警報センター(JTWC)の基準では「スーパー台風」となり、最強ランクにまで発達しました。

(国際宇宙ステーションから撮影された台風5号↓)

急速発達でスタジアム効果も

その発達の速度も驚きで、18時間で風速が40メートルも増加したとも言われています。

その急速な発達ぶりが、目の形にも表れています。「スタジアム効果(stadium effect)」と呼ばれ、高度が高くなるにつれ、目が大きく広がっています。競技場の形に似ていることからこの名称がつけられていますが、これは勢力の強い台風によくみられる特徴です。

長寿台風

杉江気象予報士も指摘しているように、5号は21日に発生し、それからすでに10日以上も海上を漂っています。一般的に台風の寿命は5.3日です。可能性が高いとは言えないかもしれませんが、仮に9日(水)まで台風の勢力を維持し続けるようなことがあるとすると、歴代1位(現在の記録19.25日)の最長寿台風となります。

(なお、世界最長記録はというと、ハリケーン・ジョン(1994年)の31日間です。ジョンは日付変更線をまたいで台風にもなりました。こちらの記録には届きませんね。)

「藤原の効果」で迷走台風

5号が長生きである理由は、台風を流す風の流れが弱かったこと、海水温が高い海域を進んできたことに加え、台風6号との相互作用で起きた「藤原の効果」による影響が挙げられます。

藤原の効果とは、複数の台風が接近して存在するとき、共に影響しあって複雑な動きをすることで、5号と6号はまるでダンスをしているかのような動きを見せました。(↓の画像をご覧ください。Noru=5号、Kulap=6号)

なおこの時、遠く離れた東部太平洋の海上でも二つのハリケーンが藤原の効果を起こしていました。同じ時期に複数の嵐がこの効果を示すのは大変稀なようです。

今後の動きに警戒

今後も5号は、暖かい海上を移動する見込みです。沖縄の南の海域の海水温は、7月としては過去最高の水温となったとも発表されているほどです。このため、5号は弱まるどころか、再び発達する可能性すらあり、5日(土)には「非常に強い」勢力のままで沖縄・奄美地方を、6日(日)から7日(月)には九州・四国や韓国などを直撃する恐れが出ています。

3日6時発表の予想進路図(気象庁)
3日6時発表の予想進路図(気象庁)
NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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