過去22年間で0.16%。公文書改ざんをめぐる情報開示の審査で財務省が審査会の答申内容を踏みにじる
財務省がまたしても前代未聞の決定(裁決)を行った。
近畿財務局に勤めていた赤木俊夫さんは財務省本省より公文書の改ざんを強要されたことを苦に2018年3月7日、命を絶った。
残された妻・雅子さんは夫の死の真相を知りたいと財務省と近畿財務局に対して情報公開請求したところ、黒塗りの書類が出て来るどころか、「文書があるのかないのかすら言わない」という回答だった。
不服があるため情報公開・個人情報保護審査会に審査請求したころ、本年3月29日、「その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は取り消すべき」との答申書が出された。
通常、諮問庁は審査会の決定には従う。
2001年から2022年までの過去22年間で1万5070件の裁決が行われているが、99.84パーセントは答申通りとなっているという。(2024年4月9日 衆議院総務委員会での宮本岳志議員の質疑による)
ところが財務省は情報公開・個人情報保護審査会の答申を踏みにじり、棄却の裁決を行ったのである。
財務省が文書隠蔽を続ける理屈とは
2023年9月14日、大阪地裁は同じ情報開示をめぐる訴訟で、「国の不開示決定は適法だ」と判示した。情報公開・個人情報保護審査会の答申とは正反対の内容だった。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/63b6cfb23de28658609f780d84c4b2ad808046c6
原告側は控訴し、現在、大阪高裁にて審理されている。
今回、財務省が出してきた裁決書の内容は、この訴訟においての論旨と同一のものだった。「当該答申を踏まえて」という一文はあるものの、情報公開・個人情報保護審査会の答申の論旨に深く触れることはなく、従来の主張を繰り返していた。
いわく、捜査機関に任意提出した文書があるかないかと言うだけで、刑事事件に関する様々な情報が推知されてしまうこと、押収品目録と実質的に同内容のものとなってしまうので、刑事事件に関する文書と同じ取扱いをすべきこと、罪証隠滅や捜査手法が知られてしまい、将来の刑事事件の捜査に支障を来してしまう、というような趣旨のことを縷々述べている。
国はいつまでほおかむりを続けるのか?
財務省は2018年6月4日、「改ざん調査報告書」なる代物を出したのだが、そこには誰の指示でなんのために、どのような指揮系統で改ざんが行われたのか一切書かれていなかった。改ざんを強要され自死した赤木俊夫さんについての記述もない。
「真実を知りたい」と、赤木雅子さんが起こした国家損害賠償請求訴訟において、国は遅延行為を繰り返した挙げ句、裁判長が証人尋問に前向きな姿勢を示すや、認諾という手続で訴訟を強制終了させてしまった。
改ざんに関わった官僚たちは順調に出世を遂げている。
そして今回、情報公開・個人情報保護審査会設置法によって設置された機関において、3人の専門委員が2年間にわたって審議を重ねて出した結論を財務省は完全に無視した。
裁決書においては、答申内容に反する結論を出した理由すら書かれていない。弁護団は理由に触れないと言うこと自体、法律違反だと述べている。
雅子さんは会見で「国がやっている、とんだ茶番劇だなと思いました」と話した。
公文書改ざん事件の真相究明のための戦いは続く。