やる気なく「もうパソコンで何も打てない」。そんな時には韓国の”光るキーボード”を。
ああ、もうこれ以上、一文字たりともパソコンで文字が打てない。
そういう時はないだろうか。年末のこの時期だと、なかなか年内の仕事が締まらない時。
エクセルやパワポでの資料作成の締切が迫っている。でも疲れてやる気が出ない。あるいはオフィスで皆が帰宅した後にひとり残業……やってられない。
そんな時に、これを。
「韓国で買える、”光るパソコンキーボード”」
これをパソコンのUSBジャックに差し込む。ピカ―っと光る。機種によっては、カチャカチャと音が出てリズムが生まれることもある。不思議と気分が上がってくる――。
筆者自身、「もう一文字も原稿が書けない」というときに使う小技だ。
作業に飽きがくるというのは、同じPCの使用に疲れる、ということでもある。あるいはPC内の使用フォントを替える(例:明朝体からメイリオ、など)というのもよいやり方だが、ここは思い切って「光るキーボード」の提案を。
旅行や出張で韓国に行った際、ソウル市内で少し足を伸ばせば、幅広い価格帯で面白みのある商品がたくさん手にできるのだ。
暗い場所だと、ここまで光るモデルも!
その正体とは……韓国では「おしゃれ家電」としての扱いも
なんか、韓国に行くたびにこれをよく目にするなと思っていた。デスクトップ用のキーボードが、赤や青の色を発して光るのだ。
”韓国のアキバ”、龍山(ヨンサン)の駅に直結する「HYUNDAI アイパークモール」の一階にも、これを多く取り扱う売り場がある。
スタッフの女性が商品を説明してくれた。
――どんな商品を扱っていますか?
「価格帯は1万5000ウォン(約1500円前後)からですよ。色合いとキータッチ音は大きく言って赤ベースで光るものか、青ベースで光るものかに別れます。なかには15万ウォン(1万5000円)に近い、高級なものもあります。パソコンのキーボードって、なんだかんだで毎日触れるものでしょう? だからいいものを買っていこうというお客さんもいます」
――韓国ではどんな需要が?
「10代~30代の男性。ゲーマーですよね。韓国ではPCでゲームをやることが多いですから」
見る人が見れば、すぐに分かるだろう。
これ、日本では「ゲーミング キーボード」と呼ばれるジャンルの商品だ。LEDが光る、というシンプルな構造だ。
確かに日本にも存在する。
ただ日本だと、アキバなどの専門店街やネット販売が主たる入手ルートの専門性の高い商品だ。
いっぽう韓国では日本よりも少しだけ一般性の高い商品だ。より身近に商品があり、より価格帯も豊富。日本では最低でも4000円前後からだが、韓国でも1500円程度と、安い価格帯のものが存在する。さらに日本では黒ベースがほとんどだが、韓国では色使いも多彩だ。
何より、売っている場所が豊富。前出の龍山(ヨンサン)「HYUNDAI IPARKモール」こそ、よく知られる観光・買い物コースからは少し外れるがそれでもソウル駅から二駅の、駅直結ビルにある。また、こんな場所でも販売されている。
K-POPのCD売り場のメッカでもある「教保(キョボ)文庫・光化門店」内。
ここでは、少し高級感のある家電とともに、「オシャレなキーボード」として扱われている。筆者自身、この売場で見つけて大いなる興味を持った。その他、ショッピングモール「E-MART」でも商品が置かれている。
じつは「韓国人の思い出と密接に繋がった商品」
売り場でも目にしたメーカーのうちのひとつ、「ABKO(エプコ)」本社に取材に行った。ソウル郊外、金浦空港に近い新しいオフィス街に位置する同社は、2001年設立。従業員110人の業界内トップレベルの企業だ。デスクトップのゲームングPCのカバーなど一部商品で日本に進出予定もある。海外事業部ブランド営業チームのキム・ヒョンセ主任が取材に応じた。
――韓国では、この光るキーボードを日本よりも多く目にする印象です。その理由とは?
「韓国のゲーム市場の規模によるものでしょう。規模の絶対数は確かに日本のほうが大きい。しかし人口比で考えると、韓国はかなり大きいと言えます」
確かに「Global Games Market Report 2018」によると韓国のゲーム市場規模は世界4位。米中日に続くものだが、韓国の人口ランキングが世界27位(約5100万人)ということを考えると、かなりのものだ。ちなみに市場規模は日本約1兆6000億円で、韓国約9300億円。
キムさんはさらに「日本とのゲーム文化の違い」についても話を続けた。
「日本では昔から、『ファミコン』、『プレイステーション』などゲーム機とソフトを買って遊ぶ習慣があるでしょう。いっぽう韓国は90年代後半からずっと「PCでのゲーム」が中心。通信で仲間と組んだり、対戦したりするゲームが人気を得てきたのです」
そこで需要があるのが、「気分を上げる、キラキラキーボード」ということ。
「じつは韓国の30代から40代というのは、子供の頃からゲームをやるために、『PCバン(PC房)※』に通ったという方が多いんです。※ゲームに特化したインターネットカフェ。『学校帰りに友達とPCバンに寄る』という記憶を多くの方が持っています。グループでの対戦ゲームが流行った時期には、日中から友達で集まって「放課後のチーム分け」を楽しんだりして。勉強でストレスが溜まる分、この時間は思いっきり楽しんだという思い出があるものなんですよ」
大人になってもこの光るキーボードを見て、「あ、PCバンで見たやつだ」と懐かしさとともに購入する層もいるのだそう。
PCバンでは、キーボードを叩くとカチャカチャと音がするモデルが人気だが、最近は音の出ないモデルも発売中。
韓国語のキーボードの配列では「@」の位置が「2」の上にある(つまりシフトキーと同時押し)、そして”<”や”>”などの位置が少しずれる点が少しだけ慣れが必要。ちなみに筆者自身、この原稿も韓国で買った「光るキーボード」で打っている。
インタビューの最後にキムさんに筆者の勝手な日本での使用イメージを伝えてみた。
”残業でもう、ほとほとテンションが上がらない。同僚も多くが帰宅してしまった。しかし、資料提出の締め切りが近づいている――。そんな時に、デスクからピキーンとこのキーボードを取り出して、USBポートに繋ぐ。キラキラ虹色に光ってるから、作業が楽しくなっていくんです”
”まさか、日本でそんな風に捉えられるとは”
それ、言われたかったことです。
日本側からの思わぬ観点で、韓国のいいものを活用するということ。
韓国の”光るキーボード”。それほど高くない金額で、日常の中でのほんの少しの遊びの要素として、ぜひ韓国に行った際にぜひとも手に。
まとめ
価格帯 日本 4000円前後から
韓国 1500円前後から
販売網 日本 秋葉原の一部専門店街もしくはネット
韓国 龍山駅直結のビル、教保文庫、E-マートもしくはネット
商品群 日本 白・黒の商品がベース。
韓国 黄色、赤、ピンク、また「オフィスっぽいデザインでありながら、光る」などカラー豊富※店舗では入手が難しい場合もあり。
ちなみに筆者が教保文庫で買った商品(ハンソン社製)は4000円台で光の色が切り替えられることが後日分かりました。「日本では4000円台で光が切り替わるものはおそらく存在しません」(アキバの専門店店員)。