日本の長期金利はどこまで上昇するのか。いずれ2%が視野に入ることも
財務省は2日に入札された7月発行の10年国債(375回債)で、表面利率を1.1%と6月までの0.8%から引き上げた。10年国債の利率が1%台を付けるのは2012年3月以来、1.1%となるのは2011年12月以来となる。
10年国債は年間4銘柄(4・5・6月発行分は4月債、7・8・9月発行分は7月債、10・11・12月発行分は10月債、2023年1・2・3月発行分は1月債)でのリオープン発行となっており、7月債は回号とともに利率も実勢に応じて変わることから、1.1%に引き上げられた。
10年国債の実勢利回りが1.1%に接近していた要因としては、ひとつは日銀による金融政策の正常化観測がある。
7月30、31日の金融政策決定会合では、国債買入の減額の具体的な方針が決定される。それとともに0.25%までの利上げも検討される可能性が高い。
これには円安による影響も大きいとみられる。ドル円は7月2日時点で161円74銭近辺と1986年12月以来およそ37年半ぶりの水準を付けた。
これは欧米の長期金利が再び上昇してきたことも背景にある。
米国や英国、ドイツの長期金利は6月10日あたりの水準に戻してきているが、フランスの10年債利回りは昨年10月の水準にまで上昇してきている。政局による財政悪化への懸念がフランスで強まり、それが他の欧州の国債にも伝播した。
さらに米国での大統領候補と予想されるバイデン現大統領とトランプ元大統領のテレビ討論会をうけて、トランプ氏有利かとの見方が、米国の財政拡大への懸念を強めることになった。
米国の物価も前年比の上昇幅は一時縮小したものの、その縮小ピッチは後退しつつある。FRBの利下げ観測も後退し、これらにより米長期金利には再び上昇圧力が強まって、円安とともに日本の長期金利の上昇圧力ともなってきた。
これに対応するには日銀は物価に応じた利上げを急ぐ必要もある。
神田財務官は7月末付けで退任するが、7月末の日銀の金融政策決定会合を経て、今後の円安対応は介入というよりも、日銀の金融政策にバトンタッチされる可能性もあるのではなかろうか。
日銀の利上げと国債買入の減額により、日本の長期金利を引き上げ、国内金融機関による国債への購入意欲を高めるとともに、少しでも日米金利差を縮小することで円安にブレーキをかける。
日銀の利上げは年内2回程度を予想している。7月の会合と12月あたりでの日銀の金融政策会合で無担保コール翌日物金利を0.5%程度まで引き上げるのではなかろうか。日本の長期金利は、1.5%あたりまで上昇してくる可能性はありうるとみている。
しかし、日銀の利上げがそこが終了するとも考えづらい。さらなる利上げが視野に入るとともに、日銀の国債買入減額によって長期金利にさらなる上昇圧力が加わる可能性がある。日銀による国債買入によるストックとフローの効果によって長期金利は1%程度抑えられていると日銀は指摘している。その効果が後退することもあり、日本の長期金利の大きな節目といえる2%が視野に入る可能性もありうる。