nintendogs新バージョンで使われるかもしれない任天堂のAR特許について
「任天堂がARを活用したスマホ向け『nintendogs』を開発中か?気になる特許情報が浮上」という記事を読みました。「2021年11月に申請され2023年1月17日に申請されたというこの情報は、”情報処理プログラム、装置、システム、および/または方法を格納する記憶媒体”カテゴリで申請されています。」と書いてあってよくわかりませんが、問題の特許が米国特許11557103号(2021年11月に出願され2023年1月17日に登録)であることは確かです。発明の名称は”Storage medium storing information processing program, information processing apparatus, information processing system, and information processing method”で、タイトルだけでは内容が把握しにくいです(意図的でしょうか?)。単なる公開ではなく権利化されています。
この出願は、2020年11月18日に出願された日本国内特許出願(特願2020-191511)に優先権を指定しています(米国特許の方はいくつか実施例が追加されていますが、基本的なアイデアは同じなので、米国出願の実質的出願日も2020年11月18日と言って良いでしょう)。発明の概要は日本国内出願の明細書を見た方がわかりやすいかもしれません。国内出願は現在審査中であり、拒絶理由通知において致命的な拒絶理由が挙げられていないことから、おそらくまもなく特許登録されることになるでしょう。
図面の絵(タイトル画像)として犬(なかなか可愛い図面ですね)が使われているので、すわnintendogs(任天堂DSでヒットしたバーチャルペットのソフト)のAR版(スマホ版)登場かという話になっていますが、この発明は、一般にゲーム内のAR的な表示に適用可能です。
Pokemon GoのAR+モードのように、コンピュータープログラム内の仮想キャラクターをスマホカメラで撮影した外界の映像と重ね合わせて表示する場合には、仮想キャラクターを映像上のどこに配置するかが問題になります。ただ単に重ね合わせて表示するだけですと、仮想キャラクターがそこにいるという感じにはなりませんので、外界の映像の水平な部分を発見し、そこに仮想キャラクターが乗っかっているという映像にすべきです(水平面にキャラクターの影を描くことでさらにリアルにすることもできます)。ここで、マーカー等が貼られているとすぐ置き場所を判別できますが、スマホゲームではどこが撮影されるかわかりませんので、画像を分析して平らな場所を探し出す必要があります。このためには、ユーザーにスマホを動かしてもらうことなどが必要で時間を要します。このタイムラグの間に仮想キャラクターがスマホ画面に表示されないと、ゲームのスピード感が削がれます。
この問題に対してポケモンGOではまず草むらを表示して、そのどこかをタップすると、隠れていたポケモンが飛び出して来るという方式で、ポケモンの世界観を維持しつつ、このタイムラグを感じさせない仕組みにしていると思います。しかし、バーチャルペットゲームの場合は世界観が異なるのでこの方式は使いにくいでしょう(猫の場合は家の中にいるはずなのにどこにいるかわからないという設定はまだありかもしれませんが、犬の場合は呼び出したらすぐ出てきて欲しいですね)。
ということで、このタイムラグを気にすることなくスピーディにゲームを進めるための方法がこの特許のポイントということになります。一般に、特許出願されているからといってその技術が製品化されるとは限りませんが、本特許の明細書の内容を見ると、いかにも製品プロトタイプ開発の過程で発生した課題を解決するための発明という感じがしますので、冒頭の引用記事における読みのように、任天堂がnintendog的なバーチャルペットゲームのAR機能付きスマホ版を提供予定である確率は高いのではと思います。
では、具体的な権利内容を見てみましょう。この米国特許の審査過程を見ると補正の限定なしで一発登録されており、範囲は広いです。AR系のゲームを設計しようと思うとつい抵触してしまいそうな感じです。
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