子供の飛び出し事故の実情を統計データからさぐる(2019年公開版)
子供に装着するリード(ハーネス、ひも)に関する賛否両論はことあるたびに持ち上がる。そこで子供の事故に関する統計を通し、飛び出し事故のリスクがどれほど存在しているのかを確認する。
具体的には交通事故総合分析センターにて公開されている各種公開資料から(現在2017年分まで公開中)、歩行者の違反別・年齢階層別交通事件数(第一当事者)(※)をたどり、状況を精査する。
次に示すのは、過去10年間における未成年者などの歩行者の年齢階層別、交通事故における交通違反の内容(第一当事者)のうち「飛び出し」の件数、そして5年分を累計した上での全歩行者による交通事故の違反内容別比率。もちろん交通事故は歩行中以外でも発生しており(自転車やバイク、自動車乗車中)、これがすべてでは無いことに注意する必要がある。
子供が歩行中に「起こした」(≒第一当事者)交通事故のうち、12歳までに限れば6割強が飛び出しによるもの。7~12歳の方が6歳よりも件数が多くなるのは、それだけ行動的になるからなのに加え、自由行動ができる状況で外出機会が可能となる人数が増えるからだと考えられる(6歳以下と7~12歳は同じ6年分区切りだが、1歳児や2歳児が自分の意志で外出して交通事故に遭うリスクはほとんど想定できない)。また7歳になると小学校に入学するため、行動可能・許容範囲が大きく広がるのも一因だろう。
一方、13歳以降になると飛び出しの数・比率は大幅に減る。ある程度自制心や、世の中のリスクに対する認識が深まるからに他ならない。代わりに信号無視や横断歩道以外の場所の横断が増えてくるが、保護者とともに、あるいは同意の上で信号無視などを行う状況は考えにくいことから、多分にこれらは一人行動による事故発生と見なすことができる。他方飛び出しは保護者随伴の状態でも一人行動でも発生しうる。
実際に子供がいる世帯、あるいは自動車運転手で実経験をしている人なら理解はできるはずだが、子供は大人には想像もつかない、突拍子もない行動を不意に行うことがある。周囲へ向ける注意力が大人ほどしっかりとしていない、一つの物事に極度の集中をしてしまう、世の中のリスクに対する備えが十分まだ習得されていないなど、理由はさまざま。
自分にとって関心の高い事柄が目に留まると、他の物事は視界から消え去り、それのみに注意が向けられる。そしてそれこそ大人には想像もつかないささいな事柄でも、子供が興味を持つものであれば、それに向けて一目散に走り出すリスクはいつでも存在する。
例えば親子で買い物に出かけている最中に、子供が道の反対側に子猫が居るのを目に留めたとする。道路には多数の車が行き来し、そこを横断することは危険極まりないのだが、その常識は瞬時に頭の中から消し飛び、子猫が気になる、さわりたい、もっと近くで見たいとの衝動が頭一杯となり、駆け出してしまいかねない。その瞬発力は保護者の想像を絶する力となりうる。
無論保護者の多くもそのリスクは認識している。だからこそ普段から外出する際には堅く手を握るなどして、極力その可能性を軽減すべく努力はしている。しかし子供は時として保護者が想像もできないほどの力で、手を振り払うこともある。さらに手を握っている間は保護者の精神的圧迫も高度なものとなる。手を握ることは愛情を確かめる行為ではあるが、同時に負担でもある。
昨今問題視されている子供向けのリード(ハーネス、ひも)は、子供に対しては命綱となる(「保険」との表現もあるが少々異なる。「保険」はリスクが体現化してからの負担軽減の手段であり、今件はむしろ「防災」の概念に近い)。そして保護者にとってもリスク軽減による安心感を得られるため、育児の上で大きな負担軽減ツールとして有益なもの。子供の歩行中の交通事故において、飛び出しの事案が多数に及ぶとの実態がある以上、使える手立ては何でも使って対処する。その行為に誰が非難をできようか。
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※第一当事者
最初に交通事故に関与した(車両の)該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側。厳密には第二当事者(第一当事者以外)の集計も必要とする考えもできるが、公開資料では第一当事者の値のみが公開されているので、それを用いて精査する。
今件は子供の飛び出しリスクに関する考察であり、飛び出しでリスクが生じた≒交通事故が発生した場合、おおよそは飛び出した側が過失を有することは容易に想像ができることから、大きな問題にはなり難い。
なお統計値は絶対数では1ケタ・2ケタの数字を示す項目もあるため、今回は「飛び出し」以外も合わせた比率計算の際には、単年でのぶれを抑えるために直近5年分を累計して計算を行っている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。