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落ち込む雑誌と伸びる雑誌と…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2024年7~9月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
ゲームにも専門誌は必要不可欠な存在?(VRChat内坪倉家で撮影)

部数公開誌は4誌のみ継続中…部数現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

まずは最新値にあたる2024年7~9月期分と、そしてその直前期にあたる2024年4~6月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2024年4~6月期と7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2024年4~6月期と7~9月期)

ゲーム・エンタメ系雑誌の中で最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で13.8万部。このポジションは前期から変わりなし。

現在印刷証明付き部数を公表しているゲーム・エンタメ系雑誌は、今期でも今グラフに表示されている4誌にとどまっている。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している)。

精査対象を足そうにも、類似の趣旨を持つ雑誌が(印刷証明付き部数の公開誌では)存在しないのが悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「週刊ファミ通」「電撃Nintendo」「Nintendo DREAM」「MC☆あくしず」などが挙げられるが、印刷証明付き部数は非公開なのが実情ではある。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2024年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2024年7~9月期)

ゲーム・エンタメ系雑誌において前期比でプラスを示したのは「声優グランプリ」「アニメージュ」の2誌で、両誌とも誤差領域(プラスマイナス5%)を超えたプラス幅。一方マイナスを示したのは「PASH!」と「Vジャンプ」で、両誌とも誤差領域を超えたマイナス幅。

ゲーム・エンタメ系雑誌では最大の部数を誇る「Vジャンプ」は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にあった。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らないパターンが続いている。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式として定着している。

しかし長期的な部数動向を見るに、その方程式が必勝とは言い難い状況だった。昨今では15万部が底のような部数動向となっていたが、3年ほど前からはその底すら抜けてしまった。今は15万部をはさんでのもみ合いの流れと解釈できる動きをしている。前期では付録カードが部数をけん引したようで大きく伸びたが、今期ではその反動で大きな減少。むしろ前期のイレギュラーな部数から元に戻ったような雰囲気すらある。

今期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の前期比で最大のプラス幅を示したのが「声優グランプリ」。

↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)

「声優グランプリ」は部数動向で時折大幅な増加を示す傾向があるが、これは注目を集める付録によるところが大きい。実際、2期前は付録の声優名鑑(3月号で女性編、4月号で男性編)が人気を博し、大きく部数を伸ばしている。一方、中期的動向を見ると、2018年あたりから部数は失速し、段々と減少度合いが加速しているようにも見られる。あまりよい傾向とは言い難い。今期の動きから、1万3000部あたりで底のようにも解釈できるのだが。

プラスは2誌の前年同期比

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2024年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2024年7~9月期)

前年同期比ではプラス誌は「PASH!」のみで、誤差領域を超えたプラス幅。残り3誌はマイナスで、「アニメージュ」が誤差領域を超えたマイナス幅を示している。

前年同期比で大きなプラスとなった「PASH!」の部数動向は次の通り。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

「PASH!」は特集記事や付録による部数への影響が大きく、部数変動が他誌と比べると大きくなる傾向がある。例えば2016年1~3月期は「おそ松さん」特需、2016年10~12月期は「ユーリ!!! on ICE」特需によるもの。2018年ぐらいからは2万部を底とする部数動向を示している。グラフを見ると、2023年1~3月期においてそれまで底値と推測できた2万部から急に落ち込み、その後は2万部への回復は果たしていなかった。

しかし前期では大きな伸びを示し、2万部台を回復(2024年4月10日発売号で「崩壊:スターレイル」の特別付録(クリアファイル)や応募者負担ありだが応募者全員プレゼントが功を奏したようだ)。今期はその余韻もあり、前期比では減少しているが、2万部台は維持できている。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見い出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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