Yahoo!ニュース

偶然それとも戦略?現在も未契約状態が続く大物FA選手たちに潜む“ある”共通点

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
現在も未契約状態が続く大物FA選手たちの代理人を務めるスコット・ボラス氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【全30チームがキャンプインも今も残される未契約選手】

 現地時間2月15日に、菊池雄星投手が所属するブルージェイズら10チームがバッテリー組の集合日を迎え、これで全30チームが正式にキャンプインしたことで2024年シーズンが本格的に始動した。

 その一方で、大谷翔平選手や山本由伸投手の大型契約で話題が尽きなかった今オフだったが、昨オフと比較してFA市場は全体的に低迷し、今も多くの未契約選手が残されている。

 ただMLBでは2月14日から60日間の負傷者リストが解禁となり40人枠ロースターに空き枠を設けられるようになったため(40人の枠を超え60日間の負傷者リストに入った選手に代わり新たな選手を加えることができる)、ここ最近は各チームから契約合意のニュースが飛び込んできている。

 その中の1人が藤浪晋太郎投手だ。米メディアが2月2日の段階でメッツとの契約合意を報じていたが、前述の40人枠の関係で14日まで正式発表できていなかった。

 今後もしばらくは、駆け込み契約ラッシュが続くことになりそうだ。

【今からでも複数年契約が期待される未契約トップ4】

 韓国で開催される開幕シリーズのためキャンプインを早めたドジャースとパドレス以外は、バッテリー組の練習が始まったばかりなので、これから契約合意に至ってもシーズン開幕までの調整に大きな障害は生じないだろう。

 だが野手組が合流しチームの全体練習が始まる2月20日以降までずれ込むようなことになれば、契約合意が遅れる分だけシーズン開幕に間に合わないリスクが生じてくる。未契約選手にとって残り5日間が正念場になってきそうだ。

 特に米メディアの間で“未契約トップ4”といわれている選手たちはチーム戦力に影響を及ぼす存在であり、今からでも大型契約を獲得できる可能性を残している。

 それら4人選手とは、昨シーズンのサイヤング賞受賞投手、ブレイク・スネル投手(MLB公式サイトによるFAトップ25で3位)、昨シーズン打撃復活した2019年MVP受賞選手、コディ・ベリンジャー選手(同4位)、昨シーズン途中でレンジャーズに移籍しワールドシリーズ制覇に貢献した先発左腕、ジョーダン・モンゴメリー投手(同8位)、昨シーズンこそ17本塁打に止まったが常にある程度の本塁打が期待できる長距離砲内野手、マット・チャップマン選手(同10位)だ。

 いずれも所属チームさえ決まれば、主力として活躍が期待される選手たちばかりだ。

【これら未契約大物FA選手たちに共通しているもの】

 トップ4の他にも、大谷選手のドジャース移籍が決まった後、エンジェルスで彼の穴を埋める存在になれると目され、3度のシルバースラッガー賞を獲得しているDHのスペシャリスト、JD・マルティネス選手(同9位)も未契約の状態だ。

 これら5選手はすべて、MLB公式サイトのFAランキングでトップ10入りしている選手ばかり。彼らが現在も新しい所属先が決まっていないのは、やはり異常事態だと考えていいのかもしれない。

 ただ偶然か故意なのかは定かではないが、彼ら5選手には“ある”共通点があることを気づかれた人はおられるだろうか。

 実は彼ら全員の代理人を務めているのが、球界屈指の敏腕エージェントといわれるスコット・ボラス氏なのだ。

【今オフは鳴りを潜めてきた球界屈指の敏腕エージェント】

 ボラス氏といえば球界最大の顧客数を抱え、エージェントとしての収益が世界1位を誇る実力者だ。これまで数々の大型契約を成立させてきた交渉術から、「敏腕」、「辣腕」などと形容されてきた人物だ。

 現在は菊池投手、藤浪投手の他に、吉田正尚選手や前田健太投手と4人の日本選手たちの代理人を務めていることでも知られている。

 ただ今オフに関しては、上記5選手の契約がまとまっていないこともあり、昨年12月のウィンターミーティングでメディアの取材を受けて以降、鳴りを潜めているような状況だ。

 元々契約交渉はギリギリまで粘ることで有名ではあるが、さすがに選手の調整に影響を及ぼしかねない時期が差し迫っており、いよいよ待ったなしの状況に追い込まれようとしている。

 5選手が契約できていないのは単なる偶然か、それともボラス氏ならではの戦略なのか。いずれにせよ、ボラス氏がこのまま手をこまねいているとは思えない。今後の動向に注目していくしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事