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西欧では高齢者より若年の方が盛んにソーシャルメディアでニュースを確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者でもソーシャルメディアでニュースを確認する人がいないわけではないが。(写真:アフロ)

社会の日々の移り変わりや国内外のさまざまな動向を知るのに欠かせないニュース。そのニュースの情報源としてよく使われるソーシャルメディアの利用頻度について、西欧諸国の実情を年齢階層別に、アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月に発表した調査「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」(※)の報告書の内容を基に確認する。

調査対象国では差こそあれど、少なからぬ人が毎日1度以上の高頻度で、ニュースの情報源としてインターネットを利用している。

↑ 少なくともニュースの情報源として毎日1度以上利用する媒体は(複数回答)(2017年10~12月)
↑ 少なくともニュースの情報源として毎日1度以上利用する媒体は(複数回答)(2017年10~12月)

それではその高頻度での利用者の割合は、年齢階層別で違いがあるのだろうか。その実情をソーシャルメディアに絞って確認した結果が次のグラフ。インターネット利用者やソーシャルメディア利用者に限った上での割合では無く、該当する年齢階層全体に占める割合であることに注意。なおグラフの国順は、18~29歳と50歳以上との差異が大きい順となっている。

↑ 少なくともニュースの情報源として毎日1度以上ソーシャルメディアを利用する(年齢階層別)(2017年10~12月)
↑ 少なくともニュースの情報源として毎日1度以上ソーシャルメディアを利用する(年齢階層別)(2017年10~12月)

いずれの国も一様に、若年層ほど多くの割合でソーシャルメディアを使って高頻度にニュースを取得し、高齢層ほど割合は少なくなる。高齢層はニュースに関心が薄いというばかりでは無く、元々高齢層の方がソーシャルメディアを使わない率も高いため、それも影響しているのだろう。デンマークでは75%、イタリアでも74%の18~29歳層が毎日1度以上はソーシャルメディアを使ってニュースを取得している。ほぼ4人に3人となると、極めて高い割合となる。しかしそれぞれの国の50歳以上では28%、41%でしかない。もっとも両国とも50歳以上においても他国と比べると高い水準、特にイタリアは調査対象国では最大値を示しているのだが。

フランスはインターネット経由でのニュース取得の割合こそ低めに出ていたが、18~29歳層では高い値を計上している。しかし30~49歳では38%でしかなく、50歳以上になると17%に留まっている。30歳以上の層の低さが、全体値としての(インターネット経由そのものにおける)値を低く抑えてしまっているのかもしれない。

ドイツは18~29歳層でも50%に留まり、50歳以上では11%。すべての年齢階層において、調査対象国で最少値を計上している。ドイツはニュースそのものへの関心が低いのではなく、テレビやラジオ、紙媒体のような他メディアでの取得が盛んで、ソーシャルメディアをはじめとしたインターネットによるニュースの取得には及び腰なのだろう。

もっとも差が小さいオランダでも、18~29歳と50歳以上の間には31%ポイントもの差が生じている。他のメディアでもニュースは取得できる、さらにはニュースそのものを必要としない人もいるだろうが、スピード感や詳細の度合いなどの観点で他のメディアには追随が難しいインターネット、中でも情報取得において優位性を持つソーシャルメディアでのニュースの高頻度取得者率にこれほどの差が生じていると、年齢階層間における情報の取得度合い、理解度の観点で、大きな差が生じそうではある。

そしてこれは西欧諸国の例ではあるが、他国でも似たような状況であろうことは容易に想像できよう。

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※In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology

2017年10月から12月にかけて西欧諸国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス)を対象にしたもので、有効回答数は各国2000人強。RDD方式によって選ばれた18歳以上の自国居住者を対象に電話(固定電話と携帯電話双方)によるインタビュー形式で実施されている。結果の値にはそれぞれの国の国勢調査の結果を用いたウェイトバックが行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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