元々羊羹は羊のスープだった、和菓子の歴史
お菓子が好きな人は老若男女問わず多いです。
その中でも和菓子はユニークな歴史をたどっていき、江戸時代にその花が開きました。
この記事では羊羹の歴史について紹介していきます。
羊羹は羊のスープだった
羊羹とは、元々中国で「羊の肉を使った汁物」を指すものでした。
日本に伝わるとその形を大きく変え、和菓子としての羊羹へと進化を遂げたのです。
特に日本では精進料理の一環として、動物性の材料を使わず植物性の素材で作られる「もどき」料理として発展しました。
こうして羊の肉を使わない羊羹が誕生し、その後、江戸時代に菓子として広く知られるようになります。
『日葡辞書』によれば、16世紀末から17世紀初頭にかけて、羊羹はすでに豆と砂糖を使った甘い菓子として認識されていました。
最初の頃は「蒸羊羹」と呼ばれる形で提供され、板状の平らな菓子であったのです。
のちに「煉羊羹」が登場し、これが現在の羊羹の原型となります。
煉羊羹は、18世紀後期に寒天が取り入れられることでさらに進化したが、初期の頃は葛を使っていたようです。
その羊羹の記録は古く、1635年には後水尾天皇の御所に虎屋が納めた羊羹が文書に残されています。
また、1773年には加賀藩主前田治脩の日記に「ねりやうかん」との記述が見られ、18世紀後半にはすでに煉羊羹が一般化していたことがわかります。
幕府や朝廷へも献上されたこの菓子は、やがて贈答品としても広く使われるようになりました。
滝沢馬琴の記録にも、羊羹が贈答されたエピソードが記されています。
こうして、羊羹は中国から渡来し、日本で独自の進化を遂げた菓子として、その歴史を紡いできたのです。
参考文献
並松信久(2021)「和菓子の変遷と菓子屋の展開」京都産業大学『日本文化研究所紀要』第26号