岸田内閣 金融所得課税の見直し延期でも拭えない預金利息への増税
岸田文雄新総理は総裁選のテーマの1つであった「金融所得課税の見直し」に関して、すぐには着手しないことを発表しました。投資に縁のない人からすれば、無関係に聞こえるかもしれません。しかし、金融所得は預貯金の利子への課税も含まれます。現在の税率20%は将来上がるのでしょうか。自民党の高市早苗政調会長は総裁選挙の際、年間50万円以上の金融所得課税を30%に引き上げたいと掲げていました。増税議論はしばらく静かになりそうですが、いつ何時増税の話が湧いてきてもおかしくない状況です。金融所得課税が増税になると、私達の生活に影響はあるのでしょうか。
■日常生活への影響は直ちにない?実は元本保証の商品にも影響
実は金融所得課税が増税されると、預貯金の利子についても増税となるため手取りが減少します。
現在、銀行の普通預金利息は0.001%となっています。これは100万円預金すると10円の利息が受け取れる計算ですが、利子に関する税率は所得税・住民税合計で20%(復興所得税除く)となっています。そのため、利息10円のうち2円は天引きされて、8円が手取りになります。これが、税率30%になると手取り7円になります。
金額が少ないと1円しか違わないことになりますが、税率で考えると1.5倍増え、手取りは10%以上減ることになります。金額が増えたり、長期間で考えるとそれなりの影響が出てくるでしょう。
他に、個人向け国債の利子に対しても同じ様に考えることができます。投資に縁がなくても、全国民に影響があります。段階税率を適用する場合は、それなりの事務負担もありますので、今後どのような政策になってくるのか注目したほうがよいでしょう。
■iDeCoとNISA、つみたてNISAなどの投資優遇制度はどうなる?
将来の自己年金としてのiDeCoの場合、加入期間中の売買益が非課税になりますから、制度への影響はありません。ただし、増税によって株価が低下すると考えると、運用金額の評価が下がることが予想されます。また、iDeCoの場合は将来受け取るときの所得税としての課税は、今後手直しが入る可能性がゼロではありません。
NISA、つみたてNISAに関しては、売買益の非課税制度ですから、利益が出ている人にとっては、税率が30%になったとしても、引き続き非課税が堅持されます。他の投資と比べて有利な面が出てきそうです。ただし、増税によって株価下落の懸念があります。
■他の投資方法への影響はある?
単純に増税によって個人投資家の意欲はそがれるでしょう。また、増税が現実的になったタイミングで、株価が下がるでしょうから、投資から撤退する個人投資家が出てきそうです。
個人投資家は、日本の株式市場に投資している場合、増税の方針が固まる前に手を引くことも検討しておきましょう。待っていると損する可能性もあります。
法人で投資する場合は、課税所得800万円以下であれば、実効税率が20%程度ですので、個人よりも法人で投資することのメリットが出てきます。また、法人の利益は経費で相殺できますから、実質非課税にすることも可能です。
不動産投資については、高所得の人ほど税率が上がり投資効果が低くなりますが、金融所得課税が30%になれば、金融資産への投資の優位性が下がるので、部分的に不動産投資に資金が流れる可能性もあります。
大きなお金で考えると、GPIFという日本の年金機関が運用する日本株式の下落にともない、年金の運用成果が若干下がり、財政再計算に影響するかもしれません。
また、海外の金融関係者が日本での営業を活発化させる懸念もあります。海外では金融所得が非課税の国もあります。日本人は全世界課税なので、海外での利益も課税対象なのですが、うまく隠せるといって投資勧誘をしている実態があります。
もしかすると、すでに将来の増税懸念を利用して投資勧誘している可能性もありますので、金融庁や国税庁あたりから注意喚起を促したほうがいいでしょう。