Yahoo!ニュース

イスラエルのネタニヤフ首相、ハマスからのロケット弾を迎撃しているアイアンドームを訪問し兵士に感謝

佐藤仁学術研究員・著述家
(イスラエル政府提供)

「既に10000発のロケット弾が発射されています」

2023年10月7日に、イスラエルに向けて武装組織ハマスから大量のロケット弾が発射された。イスラエル国防軍によるとハマスが攻撃してから2週間で7000発以上のロケット弾がイスラエルに向けて撃ち込まれていた。現在でもハマスからの執拗なロケット弾攻撃は続いており、イスラエル軍ではハマスからの大量のロケット弾の攻撃に対して、朝から晩までアイアンドームで迎撃してイスラエル領土をロケット弾から防衛している。最近では弾道弾迎撃ミサイルの「アロー」などで迎撃している。

アイアンドームはイスラエルの軍事企業のラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズとイスラエル国防軍で共同開発し、2011年に完成した。アイアンドームは地上にいる人たちや建物への攻撃を回避させダメージを最小化させることが目的。アイアンドームは上空のロケット弾やドローンをレーダーが察知すると、地上からミサイルが発射されて、地上の標的が攻撃されて大惨事になる前に、敵のロケット弾や攻撃ドローンを上空で爆破させている。コストパフォーマンスは決して高くはないが、現在のイスラエルにとって国土と市民の安全な生活の防衛のためには不可欠な兵器になっている。

アイアンドームでハマスからのロケット弾を迎撃しているシーンを撮影したショート動画は多くSNSに掲載されている。昼間では太陽が出て明るいので、アイアンドームで迎撃しても白い煙が映っているだけだが、夜間でのアイアンドームでの迎撃は空が暗いので、迎撃してロケット弾を破壊しているシーンが鮮明である。

2023年11月にはイスラエルのネタニヤフ首相がアイアンドームを訪問してコントロールセンターでハマスからのロケット弾を迎撃しているイスラエル軍の兵士らと会った。ネタニヤフ首相は兵士らに対して「アイアンドームでハマスからのロケット弾を迎撃するために戦ってくれている皆さんはイスラエル国家の盾です。ハマスが攻撃をしてきてから既に10000発のロケット弾が発射されています。多くのイスラエル国民が犠牲になっています。あなた方はハマスからのロケット弾から国民を守ってくれている神聖な仕事をしてくれています。そこが武装集団ハマスとイスラエル軍の兵士の違いです。武装集団ハマスは市民を脅迫して紛争地帯へ連れていき、そこから出ることを許可しませんし、さらに襲撃していますが、イスラエル軍の兵士は市民を守っています。我々イスラエルは、野蛮な敵と直面していますが、我々が何者であるかを決して忘れてはいけません。イスラエル政府は、ハマスとの紛争でイスラエル国家と国民を守ってくれているイスラエル軍の兵士の皆さんに大変感謝しています」と感謝を伝えていた。

▼アイアンドームを訪問するイスラエルのネタニヤフ首相

イスラエルとハマスの間で衝突が起きて緊張関係が高まり、パレスチナの上空からのミサイルやロケット弾、攻撃ドローンが飛来してくると、アイアンドームで迎撃している。2021年5月にも約3000発のハマスからのロケット弾や攻撃ドローンの9割を迎撃したと報じられていた。2023年4月7日にもパレスチナからのロケット弾34発中、25発をイスラエルのアイアンドームで迎撃したと報じられていた。2023年10月のイスラム武装集団ハマスからのロケット弾は、何発をアイアンドームで迎撃して命中率が何割かは現時点では明らかにしていない。武装集団ハマスからのロケット弾での攻撃は続いており、ハマスのロケット弾の在庫は尽きていないようだ。

イスラエルにはロケット弾や攻撃ドローン迎撃のためのアイアンドームやアイアンビーム、さらには地対空ミサイルなどが充実している。以前からパレスチナ、ハマスからの攻撃ドローンやミサイルを迎撃してイスラエルの国土防衛に大きく貢献している。2023年10月には米国ブリンケン国務長官に次いで、オースティン国防長官もイスラエルを訪問してネタニヤフ首相、ガランド国防大臣らと会談し、イスラエルへの強力な支援を明らかにしていた。そしてアメリカ政府はイスラエル軍にアイアンドームで使用するミサイル「タミル」を提供していることが報じられている。

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻してから、ロシア軍はイラン製軍事ドローンやミサイルなどでウクライナ軍や民間施設などを奇襲している。ウクライナ政府にとってはイスラエルが所有しているアイアンドームは喉から手が出るほど欲しい防空システムだ。今までにもゼレンスキー大統領らが何回もイスラエル政府にアイアンドームの提供を要請していた。だがイスラエル政府はウクライナにはアイアンドームは提供していない。

▼アイアンドームでの迎撃

▼アイアンドーム

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事