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アメリカで進む電子書籍の読書、中堅層から若年層へ拡大

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ ソファーでくつろぎながら読書。手元にあるのは文庫本では無く電子書籍リーダー

電子書籍リーダーやその代替品として使えるタブレット機、スマートフォンの普及により、電子書籍は加速度的に普及しつつある。書籍通販大手のアマゾンでは、紙媒体版と並びKindle版が併売されていることも珍しく無くなった。それでは電子書籍の普及面でも日本の先を行くアメリカでは、どの世代に電子書籍が受け入れられているのだろうか。

米大手民間調査機関Pew Research Centerが2014年1月に発表した調査結果では、直近の2014年1月時点で電子書籍を用いて読書をした成人は28%という結果が出ている。若年層・高学歴・高年収ほど高い割合を示しており、多分に購読環境の整備の有無が関わっているとの推測が出来る。

↑ 過去1年間で各媒体において読書をした人(米、18歳以上、2014年1月)(属性別)
↑ 過去1年間で各媒体において読書をした人(米、18歳以上、2014年1月)(属性別)

「電子書籍による読書」について、過去3年間の浸透状況を世代別に見たのが次のグラフ。1枚目のグラフと異なり、「紙媒体でも電子書籍でもオーディオブックでも良いので、とにかく過去1年間に読書をした人」、つまり本を読む人のうち、その読書が少なくとも電子書籍であった人の割合を示している。「電子書籍のみ」以外に「電子書籍以外に紙媒体などの書籍も読んだ」人も含んでいることに注意。

↑ 過去1年間で電子書籍で読書をした人(米、18歳以上、該当年で過去1年間に何らかの媒体で読書をした人限定)
↑ 過去1年間で電子書籍で読書をした人(米、18歳以上、該当年で過去1年間に何らかの媒体で読書をした人限定)

2011年の時点では49歳までの層で1/4程度でしかなかった電子書籍読書率だが、2012年には30歳~49歳の層で大きく伸びている。これはこの時期にKindleやKindle Fireなどのアマゾンが展開しているタブレット機が大ヒットし、タブレット機・電子書籍リーダーの所有率が大幅に上昇したタイミングと一致する。

↑ タブレット機/電子書籍リーダー所有率(米、18歳以上)
↑ タブレット機/電子書籍リーダー所有率(米、18歳以上)

この時期に、30歳~49歳の人達、つまりデジタル機器で新しいものを好み、アンテナを常に張り巡らし、比較的金銭面でも余裕のある層が、こぞってタブレット機や電子書籍リーダーを購入し、電子書籍を読み始めたであろうことは容易に想像できる。

その後さらにタブレット機・電子書籍リーダーは普及が進み、中堅層以外にも浸透しはじめる。18歳~29歳・50歳~64歳でも電子書籍による読書経験者は増加する。特に18歳~29歳の伸びは著しく、デジタル系アイテムの普及に火がつくと一気に加速する若年層の特性が表れている。他方65歳以上は伸び率が大人しく、直近2014年1月では逆に値を落としているのが分かる(統計上のぶれの可能性あり)。

今件のデータを見る限り、今後さらに電子書籍を読むプラットフォームが普及し、電子書籍のラインアップが充実し、電子書籍を読む環境が整備されるのは疑いようもない。そしてそれと共に、紙媒体と電子書籍の関係に変化が生じる可能性は高い。

しかし一方で、電子書籍を起因として紙媒体で読書をしなくなる人が増える可能性はさほど高くない。例えば直近の値では「読書はしたが電子書籍のみ。紙媒体での読書はしていないとの人は5%しかいない」「電子書籍の読者の87%は紙媒体での読書もしている。また29%はオーディオブックも聴いている」などの値が提示されている。

無論時間は有限である以上、電子書籍の購読で紙媒体の読書時間が減るかもしれない。一方で電子書籍経由で需要が掘り起こされ、紙媒体の購読率が上がる可能性もある(過去の作品を電子書籍で読み、その作者・シリーズの最新版を紙媒体版で購入するというパターンは良くある話。電子書籍を用いて過去の資産から需要を創生するというスタイルにおいては、日本ではJコミが先を進んでいる)。

さらに言えば紙であろうと電子書籍であろうと作品に違いは無く、作品が一人でも多くの人に読まれ、愛され、心に刻まれるのであれば、著者、出版社にとってはプラスに他ならない。電子書籍の浸透という現状に反発するのではなく、むしろそれを良い機会をとらえて活用する意気込みが、出版サイドには求められよう。

無論それは、アメリカだけの話では無く、日本においても言えることではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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