「北朝鮮の風刺画」を載せたらどうなるのか?
フランスのパリで起きた「シャルリー・エブド襲撃事件」をきっかけに「表現の自由」「風刺画」などの議論が巻き起こっている。報道に関わる一人として考えさせられることが多い事件だ。ましてや、北朝鮮当局から何度か名指しで批判されているデイリーNKとしては他人事ではない。
デイリーNKは、2009年末に北朝鮮で電撃的に行われた「貨幣改革」を世界で最も早くスクープしたり、北朝鮮体制に批判的な主張を展開していることから、北朝鮮当局から目の敵にされているメディアの一つである。このことから2013年には、北朝鮮の公式メディア「わが民族同士」から「デイリーNKは人間のゴミの集まり」「問題提起の突撃隊のデイリーNK」と非難されている。
もちろん我々の報道姿勢が、北朝鮮からすれば「無慈悲な懲罰に等しい」ことは百も承知だ。報道内容の多くが、「最高尊厳に対する冒涜」に値するだろう。ただし、いつの時代、どこの国であれ為政者たるものは民衆から揶揄されてしかるべきである。逆に、為政者が民衆を揶揄することは決して許されるべきではない。
そこで、今回のテロ事件で犠牲になった5人の風刺画家への哀悼の意を込めてデイリーNKジャパンで公開したのが上記の風刺画(作画りむ・ちゅぬん)である。
壁に貼ったロッドマンのポスターと床に転がったバスケットボール。そして、最近話題になったアメリカ映画「ザ・インタビュー」のDVDが破壊されている様子。そしてiMacを操作する金正恩氏を1枚のイラストにまとめた。
北朝鮮は、連日のようにアメリカを「米帝国主義」と非難しているが、どうも故正日氏、そして今の最高指導者である正恩氏も「実はアメリカ文化が好きではないか?」と思わせるふしがある。
金正日氏はMac Book Proを愛用していた。正恩氏はたびたびiMacを操作している様子が北朝鮮メディアを通じて公開されている。昨年の正恩氏の誕生日にはNBA選手のロッドマンが訪朝し、二人ではしゃぐ様子が労働新聞の1面に写真入りで公開された。
ところが、このアメリカ文化が好きと思われる最高指導者は、庶民に「反米精神」を強制的に植え付け、公にアメリカ文化を楽しむことを認めず、場合によっては罪となるのだ。こうした身勝手な姿勢は風刺されるに値する。事実、金正恩氏や三代世襲を風刺したり揶揄する北朝鮮庶民の声はあちこちから伝わってくるのだ。
いつの日か、北朝鮮でも自由な風刺画が描かれることを願うばかりだ。