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「200年に1人の逸材」と呼ばれた男の内山高志評

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
指名挑戦者として最強王者プライアーに挑んだ亀田昭雄。2人は26年ぶりに再会した

「具志堅用高が100年に1度のボクサーなら、亀田昭雄は200年に一人の天才だ」。現役時代、亀田は当時の協栄ジム会長、金平正紀にそう言われた。

日本タイルマッチ前日に徹夜でマージャンをしていても、週に2度しか汗を流さなくても、あるいはまったくロードワークをしなくても、日本人が相手なら負けることはなかった。

そんな彼はトップコンテンダーとして、現在も「63.5キロ史上最強のチャンプ」と謳われるアーロン・プライアーに挑み、KO負けを喫する。ファーストラウンドに無敵王者からダウンを奪いながらも、5度、キャンバスに沈められた。

「ボクシングはペースを握った者が試合をコントロールできる。僕はいつも、第1ラウンドは相手のパンチの軌道を見るんだ。でも、プライアーにはそれが通じなかった。バンバン打ってこられて、応戦するしかなかった…」

亀田はそのファイトが、どこか先日の内山高志vsジェスレル・コラレスと似ている、と語った。

「コラレスはガンガン来たね。内山はその攻撃を捌くべきだった。いつもの彼なら出来た筈。一発喰らって足にきたのなら、守りのラウンドにしてしまえばよかった。中途半端に打ち合ってしまったのが敗因だと思う。ボクシングはペースの握り合いだからね。自分が攻め続けていても相手のペース、ってこともある。

コラレスが、初回からあんなに飛ばすとも思っていなかったんだろう。準備が整わないうちにズルズルと後手に回ってしまった。心に余裕を持って、もう一度戦えば、この間よりいい試合が出来ると思う。

内山が勝つかどうかは、その時の運もあるから断言はできないけれど、前回より間違いなくいいパフォーマンスを見せられるよ」

2008年夏、私はアーロン・プライアーと亀田昭雄による26年ぶりの再会をセッティングした。その模様を1冊の本にまとめたーーー。米国オハイオ州シンシナティーが終着点の、長い旅だった。亀田の話を聞きながら、内山の中でコラレスは、四半世紀後も忘れることのできない男になるだろうと感じた。

内山高志は再戦を希望しているそうだ。

悔いの無いよう、ボクサーとして生き切ってほしい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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