「200年に1人の逸材」と呼ばれた男の内山高志評
「具志堅用高が100年に1度のボクサーなら、亀田昭雄は200年に一人の天才だ」。現役時代、亀田は当時の協栄ジム会長、金平正紀にそう言われた。
日本タイルマッチ前日に徹夜でマージャンをしていても、週に2度しか汗を流さなくても、あるいはまったくロードワークをしなくても、日本人が相手なら負けることはなかった。
そんな彼はトップコンテンダーとして、現在も「63.5キロ史上最強のチャンプ」と謳われるアーロン・プライアーに挑み、KO負けを喫する。ファーストラウンドに無敵王者からダウンを奪いながらも、5度、キャンバスに沈められた。
「ボクシングはペースを握った者が試合をコントロールできる。僕はいつも、第1ラウンドは相手のパンチの軌道を見るんだ。でも、プライアーにはそれが通じなかった。バンバン打ってこられて、応戦するしかなかった…」
亀田はそのファイトが、どこか先日の内山高志vsジェスレル・コラレスと似ている、と語った。
「コラレスはガンガン来たね。内山はその攻撃を捌くべきだった。いつもの彼なら出来た筈。一発喰らって足にきたのなら、守りのラウンドにしてしまえばよかった。中途半端に打ち合ってしまったのが敗因だと思う。ボクシングはペースの握り合いだからね。自分が攻め続けていても相手のペース、ってこともある。
コラレスが、初回からあんなに飛ばすとも思っていなかったんだろう。準備が整わないうちにズルズルと後手に回ってしまった。心に余裕を持って、もう一度戦えば、この間よりいい試合が出来ると思う。
内山が勝つかどうかは、その時の運もあるから断言はできないけれど、前回より間違いなくいいパフォーマンスを見せられるよ」
2008年夏、私はアーロン・プライアーと亀田昭雄による26年ぶりの再会をセッティングした。その模様を1冊の本にまとめたーーー。米国オハイオ州シンシナティーが終着点の、長い旅だった。亀田の話を聞きながら、内山の中でコラレスは、四半世紀後も忘れることのできない男になるだろうと感じた。
内山高志は再戦を希望しているそうだ。
悔いの無いよう、ボクサーとして生き切ってほしい。