親が子どもを幸せにする方法
私が受け持ったある男の子(当時小学4年生)は、小さいころから機関車トーマスが大好きでした。お母さんはその気持ちを大切にし、電車の玩具や本を買ってあげたり、いろいろな電車を見に連れて行ったり一緒に乗ったりしていました。
そうした応援のおかげで彼は好きなことをたっぷり深められました。「電車の種類もたくさん覚え、路線も主だったものはほとんど覚えてしまった」というほどです。
その後、大学生になってからも電車への興味を失わず、その延長で観光学を学びました。ついには旅行関係の仕事に就き、今はツアーの企画立案の仕事をしています。過日約二十年ぶりに会ったとき、「楽しくてたまらない」と言っていました。
とはいえ、彼のように子どもの頃からずっと一貫して同じものに熱中して仕事にまで繋がるケースばかりではありません。好きな対象がどんどん変わっていく子もいますし、その方が普通ではないかと思います。
でも、それはそれでいいと思います。大切なのはその時々の本人のやる気の旬を応援してあげることです。それらは全て子どもの栄養になりますし、いろいろなことをやってみる中で自分の進む道をだんだん見つけていけばいいのですから。
いずれにしても、親がすべきことは親のやらせたいことを子どもに強いることではなく、子どものやりたいことを応援することです。私は親は監督ではなく応援団になることが大事だと思います。
子どもを親の自己実現の手段にしない
昭和や平成では、親が監督になって子どもの人生の線路を勝手に敷いてしまうことがよくありました。「巨人の星」という野球漫画はその典型であり、時代の雰囲気をよく表していました。
それは、星一徹という父親が自分が成し遂げられなかった夢を息子の星飛雄馬託して、息子を巨人軍のエースにするためにスパルタ指導をするというストーリーです。
これは当時の大人気漫画でアニメ化もされました。子どもだった私は毎回感動しながら見ていたものです。でも、今振り返ってみると本当にナンセンスでひどい話です。
父親は自分の夢を勝手に子どもに押しつけ、いかにもそれが息子自身の夢であるかのように洗脳しました。そして、今だったら虐待で逮捕されるようなスパルタ指導を続けました。
子どもの人生は子どものもの
父親は自分の夢の実現のために息子を手段にしたのです。息子はその理不尽な行為に対して何一つ疑うこともなく、父親の期待に応えようとして努力しました。息子が初めて疑いを感じて、自分の人生とは何なのだと考え始めるのは大人になってからのことでした。
これは親による子どもの人生の搾取であり、絶対に許されないことです。なぜなら、子どもの人生は子どものものだからです。
子どもは自分の人生を生きるために生まれてきたのであり、誰かの操り人形になったり、誰かの夢の実現のための手段になったりするために生まれてきたのではありません。
でも、星一徹のような親は未だに世の中にたくさんいます。習い事、部活、進学、就職などで自分の夢や価値観を強いる親…。星一徹ほど露骨ではないけれども、その分より巧妙に洗脳する親…。
子どもの気持ちが最優先
もちろん、例えば自分が野球をやっていたとか野球が好きというなら、それを子どもと一緒に楽しんだり子どもに教えたりしたくなるでしょう。それ自体は悪いことではありませんし、それもいけないというつもりはありません。
それによって子どもは野球というものを体験することができます。野球をする楽しさを味わえ、うまくなる喜びを味わえ、運動能力が向上し、運動によって脳の前頭葉も成長し、メンタルヘルスにもなり、親子の触れ合いにもなり、などなどいいことはいっぱいあります。
野球を例にしましたが何事でも同じことが言えます。親がやっていたなら子どもに教えることもできますし、道具などや環境も整っている可能性も高いでしょう。そういうアドバンテージを活かすのは悪いことではありません。
でも、子どもの反応によってその後の対応は変える必要があります。もし子どもがそれ以上やりたくないとか他のことをやりたいというなら、親の意思を押しつけてはいけないのです。
大事なことなので何度でも言います。「子どもの人生は子どものものです。親は監督ではなく応援団に徹しましょう」
親は監督ではなく応援団
今現在で特に好きなものややりたいことが見つかっていないという子もいるでしょう。そういう子にはいろいろお試しでやってみる機会を作ってあげてください。たくさん試せば見つかる可能性は高まります。
好きなことややりたいことが人生の早い段階で見つかる人もいれば、なかなか見つからない人もいます。実際、大人になってもなかなか見つからないという人もいます。でも、見つかるのが遅かった場合も、それまでの時間は全て栄養になるので無駄ではありません。
子どもがそれを見つけたら全力で応援しましょう。たとえ子どもが見つけたものが親の価値観と合わなくても応援しましょう。「監督ではなく応援団に徹する」と決意しましょう。そういう親なら、子どもは自分の人生を生きることができて幸せになれます。
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