【土浦市】あの農作物が原料!県内の農業廃棄物を活用して染め上げる工房「フタシバ」が板谷に移転オープン
2021年8月、土浦市板谷に「futashiba248」という工房が誕生しました。コンテナハウスを活用したお店には、やわらかな色合いの服がずらり。実はこの服たち、県内の農業廃棄物を活用して染め上げたもの。「あの野菜や果物からこんなきれいな色が?」という驚きの連続です。
多くのメディアも注目する手染めで丁寧に仕上げる「futashiba248」
「futashiba248(フタシバ)」は、デザイナーである関さんご夫妻が手がける工房です。工房名の由来は、「ふたり」で始めた取り組み、農業廃棄物を「ふたたび」活用することの「フタ」と、茨城県の形が柴犬が遠吠えしているように見えるということから、またおふたりが柴犬が好きということもあって「シバ」。ふたつが合わさって「フタシバ」と名付けられました。「フタシバ」を数字で「248」とも読めることから「futashiba248」に。
コンテナハウスを活用したお店は、縦に長く奥へ進むと商品がずらりと並んでいます。
ハンガーに吊るされているのは、ロングワンピースやTシャツ、リラックスパンツなどの服類。
ストールやバッグなどの小物類も、ニュアンス感のある色合いで素敵です。
棚にはマスクや靴下なども並んでいます。
ピアス・イヤリングなどのアクセサリーも関さんご夫妻の手作りです。
服や小物すべての原料はなんと県内の農業廃棄物を活用したもの!
とっても素敵な色合いの服たちですが、これらすべてが県内の農業廃棄物を原料にしています。
おふたりが着ている服も「futashiba248」が手がけたものなのですが、この洋服の原料のベースはなんだと思います?
答えは笠間市の栗。
ストールもシャツもパンツもオール栗。
淡い色から重ねて染めていくことで濃い茶に仕上げることもできますし、栗で染めた後にヤーコンや漆を加えるなど違う草木を混ぜて染めることもできるのだそうです。
店内に飾ってあるガラス瓶は、原料の栗がどのように活用されているのかを示したものです。右から「栗の鬼皮(くりのおにかわ)」「染液(せんえき)」「媒染(ばいせん)」「コンポスト」。捨てられるはずの栗の鬼皮が活用され、新しいモノへと生まれ変わります。
真っ黒で見えづらいのですが、大きな鍋の中に浮かんでいるのが栗の鬼皮。笠間市で栗作りと加工も行っている生産者さんから廃棄するはずだった栗の表面の皮をいただき、1日をかけてじっくりぐつぐつと煮込んでいきます。
煮込むことでできあがるのが「染液」。鍋から皮ごとすくいだして濾していきます。
皮の部分も最後の一滴まで丁寧に絞り出します。
「媒染」は染液に染めるものを浸した後、天然染料を布などに定着させるために行う工程となります。金属(鉄やアルミ)の液体を水に溶かし、染液に浸した布などを入れて化学反応を起こさせ色を止める工程です。
絞り出した栗の鬼皮も捨てずに再利用できないかと思案中です。
その一案として実践しているのが「コンポスト」。専用の機械で乾燥・粉砕したものを堆肥として再利用できないかとさまざまな素材をもとに実験中です。
大子町の生産者さんからいただいたという漆の木は、煮込んで色が出やすくなるように薄く削っていきます。漆というと朱赤のイメージが強くありましたが、ひと皮むいてみるとこんな淡い黄色の美しい姿が隠れていたんですね。
え、あの野菜や果物からこんな色がでるの?
先ほどは栗の鬼皮の染めるところを見せてもらいましたが、このニュアンス感のあるブルーのワンピースの原料はなんでしょうか?
答えはブルーベリー! 小美玉市の生産者さんが作っているブルーベリーを活用してこんなきれいなブルーの服が出来上がりました。
このラップカーディガンもブルーベリー。上のワンピースは2回染めしたもので、こちらは1回染めの色合いです。
おいしく実ったブルーベリーでも種が多い実はジャムにすることもできないらしく、廃棄対象になってしまいます。そうした実をいただいて服やヘアアクセサリーという形で新しい命を吹き込むのが関さんたちの使命です。
では次の問題です。写真左側のベージュ色の服の原料はなんでしょうか?
答えはりんごです! 大子町ではリンゴ栽培がさかんに行われているのをご存じでしたでしょうか。
関さんが現在のような草木染めという天職に出会うきっかけになったのが大子町にリンゴ狩りに出かけた時のこと。おいしいリンゴが茨城で作られていることをもっと知ってもらえるお手伝いの一環を担いたいとリンゴの枝をいただいて色を作ったのが始まりでした。
右の真っ白な服が染める前の本来の色。関さんご夫妻がデザインや型紙を作って、おふたりが信頼をおいている腕利きの仕立て屋さんが縫製しています。使用する糸は綿糸です。洋服を作る場合多くはポリエステルなどの化学繊維を用いるのですが、それだと染まりにくくなるのだそうです。
裕子さんが着用している服も手にしている2着もすべて原料は笠間市の栗の鬼皮。重ね染めや違う原料を混ぜ合わせたり、媒染に使う金属の種類を替えたりするとこんなに色遊びが楽しめるんです。
長く愛用できるように重ね染めなどのアフターサービスも!
気になる価格帯は、ロングワンピース(ラップドレス)は3万9050円、Tシャツは6930円と少しお高めですが、オーガニックコットンを使用して手染めで丁寧に仕立てているのでそうした手間暇を考えると良心的な価格帯です。
また、買ったらそれっきりではなく、「洗濯をして色が淡くなってきた」「違う素材も混ぜてほしい」といったリクエストにも重ね染めという形で対応してくれます。(1色につき2480円)。
関さんご夫妻が醸すやわらか雰囲気も素敵なので服のメンテナンスを兼ねて何度でも会いに行けるのも楽しみです。
茨城県44市町村を「農color」で染め上げたいという夢に向かって挑戦中!
県内の農業廃棄物を活用した染色を行っている関さんご夫妻には、茨城県44市町村の色を作るという目標があります。
大子町のリンゴや漆、小美玉市のブルーベリー。茨城は農業大国でありながら、実は県民であっても「え、それも茨城で収穫されているの?」と驚くこともあります。
「時間はかかると思いますが、それぞれの街の魅力を伝えていきたいです」と、将史さん。「農color(農カラー)」と名付けられたブランドは、現在クラウドファンディングにも挑戦中です。Tシャツなどが返礼品でいただけるので興味のある方はぜひご覧になってみてくださいね。
クラウドファンディングはこちら→https://linktr.ee/futashiba248
<店舗情報>
futashiba248
場所:茨城県土浦市板谷1-4003-23 MAP
電話番号:050-5372-2803
営業時間:11:00~16:00
(催事出店など不在の場合があるため、事前に連絡の上ご来店ください)
定休日:不定休
駐車場:あり(無料)
ホームページ:https://www.futashiba248.com/
Instagram:futashiba248