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アルゼンチン人コーチが語る「日本に完敗したU24祖国代表」

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
林大地の先制ゴール(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 一昨年の末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を振るう彼が、3月29日のU24日本代表vs.同アルゼンチン戦を振り返った。

撮影:著者
撮影:著者

 アルゼンチンのメディアやサッカーを分かっている人は「日本に0-3で負けちゃダメだろう!!」って言っています。アルゼンチンの選手が手を抜いていたってこともありません。100%を出していました。それは、フェルナンド・バティスタ監督も認めています。彼は「日本は上達している。日本の方が良かった」とコメントしました。

 日本がいいサッカーをやったからこそ、完璧な内容で勝利したんです。

キャプテンの板倉滉がヘッドで2ゴール
キャプテンの板倉滉がヘッドで2ゴール写真:森田直樹/アフロスポーツ

 アルゼンチンは3日前に1-0で勝って、9人新しいメンバーにしましたね。特に10番のマティアス・バルガスと7番のフェルナンド・バレンスエラを先発で使わなかった。せっかく地球の裏側まで来たんだから、少しでも多くの選手に経験を積ませようと考えたんですね。監督としても見たかったのでしょう。

 そこを日本に突かれました。確かに日本を舐めている部分がありました。でも、後半の頭からチームの中心である彼ら2人が入って、流れを変えようと奮闘した。それでも、日本のカウンターにやられたような感じですね。日本は限界まで走ったし、スライディングもしていたし、精神面も充実していました。

 アルゼンチンはオーバーエイジのGK、ヘレミアス・レデスマが良くなかったですね。0-3で日本に負けるというのは歴史的な敗戦ですから、アルゼンチン国内では結構叩かれていますよ。

アルゼンチン国内で高い評価を得た相馬 勇紀
アルゼンチン国内で高い評価を得た相馬 勇紀写真:西村尚己/アフロスポーツ

 バティスタ監督が最も評価した日本人選手は相馬勇紀です。僕も同じ意見です。彼がボールを持つと何かが起きそうな感じがしました。相馬のドリブルは光っていましたね。何回も突破していました。久保建英よりも数段上ですよ。

 マークされながらもヘディングで2ゴールした板倉滉は、アルゼンチンでも話題になっています。それから、食野亮太郎も存在感がありましたね。

A代表の経験もあるバルガス
A代表の経験もあるバルガス写真:西村尚己/アフロスポーツ

 バティスタ監督は色々な反省材料を活かして東京五輪に臨むでしょう。代表メンバーも変えると思いますよ。この時期に課題が見えたことが良かったです。U24日本代表も、自信を得たことが大きな収穫ですね。

 本番までにどのような準備をすべきか。両チームとも課題と向き合い、いい調整をして本番を迎えてもらいたいです。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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