「体に優しい温泉」が一目でわかる方法!
ご覧いただきありがとうございます。温泉入浴指導員のひかさでございます。さて、皆さんは体に優しい温泉というと、どのような温泉をイメージしますでしょうか?
体に優しいといいますと、美肌の湯なんてイメージしませんか?美肌の湯はお肌に良いから、体にも優しそう。あえてその考えは「誤り」と言っておきます。じゃあ、なにが「体に優しい」のか。それは温泉分析書のある部分を見るだけでわかるんです。
専門的な知識がいるんでしょ?いえいえ、全くです。
この記事を最後までお読みいただくと、どこをなぜ見るべきなのかがわかります。
Point1 見るべきポイント「浸透圧」だ!
浸透圧って?
浸透圧ってご存知ですか?
私はあまりかかわりがありませんが、化学用語だそうで、濃度を一定に保とうとして2つの水分のうち、濃度の薄い側から濃い側に移動をする圧力のことだそうです。
これがなぜ温泉に関係があるのかというと、温泉は様々な成分が含まれています。その成分は入浴をすることによって、人間の体に入ってくるわけですよね。どの程度体に入ってくるのかというとこれは浸透圧によって異なるということなんです。
温泉分析書には「高張泉」「等張泉」「低張泉」の3つで記載されます。どこに書かれているかといいますと、泉質名の部分にカッコ書きで書かれていることが多いでしょう。
【例】泉質名:アルカリ性単純温泉(低張泉ーアルカリ性ー冷鉱泉)
この浸透圧の基準は「溶存物質」によるんです。何度も先ほどから出てきているこれです。
温泉1kg中にガス成分を除く溶存物質が
8000mg未満のもの…………………………低張泉
8000mg以上10000mg未満のもの…………等張泉
10000mg以上のもの…………………………高張泉
さて、ここでクイズです。「低張泉」「等張泉」「高張泉」のうち1番体に優しいのはどれだと思いますか?
浸透圧の本当の意味
答えは、「等張泉」です。
え、「低張泉」でしょ!溶存物質が少ない方がいいでしょ!
お気持ちはよくわかります。ですが、それは漢字をそのまま読みすぎです。浸透圧は「濃度を一定に保とうとして2つの水分のうち、濃度の薄い側から濃い側に移動をする圧力のこと」です。先ほど確認したようにその基準は「温泉1kg中にガス成分を除く溶存物質が8000mg未満のものを低張泉、8000mg以上10000mg未満のものを等張泉、10000mg以上のものを高張泉」でしたが、これは根拠なく数値が決められているわけではなく、人間の体液に従って決めています。その人間の体液に近い数値が「等張泉」になるように設定されているんです。すると、人間の体液に近い濃度であればあるほど刺激が弱いんです。
低張泉が体に優しいとは言えない理由
ここで疑問が生じるかと思います。それは、低張泉という名前から成分が低いんだから体にも優しいだろうと。しかし、そうではありません。わかりやすい例が「水道水」です。水道水は成分をほとんど含まない水です。もちろん成分は含みますが、微量です。では、水道水を目に入れたらどうなりますか?小学校などでのプールの授業で目を洗ったとき痛くなりませんでしたか?つまり、成分が少ない水道水でも体には痛みを与えるわけです。だから、低張泉は体に優しいとは言えないのです。
ちなみに、高張泉の例は海水です。まあ、お察しの通り目に入ると痛いですし、皮膚が荒れることまでありますね。刺激が強いのは間違いないです。
Point2 「美肌の湯」だから「体に優しい」ではない。
美肌の湯とは
さて、先ほど「美肌の湯」が体に優しいと思っていませんか?なんてお伝えしましたが、そもそも皆様は「美肌の湯」の定義をご存知ですか?別に法律上で「美肌の湯」の定義があるわけではないのですが、美肌効果を感じられる泉質は決まっています。
その代表格といいますか、美肌効果を感じさせる泉質は「アルカリ性単純温泉」というものです。マニアックな話で恐縮ですが、正確には温泉法上(鉱泉分析指針)で定める10個の泉質のうち「単純温泉」に該当し、かつアルカリ性のものが該当します。
まだ抽象的ですね。定義をお伝えします。ガス成分を除く溶存物質が1000mg未満かつ、pH値8.5以上という決まりがあるんです。ちなみに、溶存物質は温泉に含まれる成分だと思ってください。この定義によれば、「アルカリ性単純温泉」は体に優しいと言えます。そのため、「美肌の湯」は体に優しいというのは間違いないのですが、「美肌の湯」だから「体に優しい」というわけではないということをおつたえしたいのです。
ちなみに美肌効果は、アルカリ性の作用により肌の角質を取ってくれることから、つるつるのお肌になるということで言われております。主に山陰エリアなんて美肌効果の宝庫でしょう。
アルカリ性なら体に優しいのか
そうか、美肌効果はアルカリ性だからお肌にいいんだ!という考えは違います。アルカリ性でも体への刺激が強い場合もあるわけです。アルカリ性というのはあくまでも水素イオン濃度の話であって、成分の濃さを表すものではありません。したがって、低張泉のアルカリ性もあれば、高張泉のアルカリ性だって存在します。前者は体に優しくても、後者はそうとは限らないということになります。
単純温泉なら体に優しいのか
皆さんよく「硫黄泉」だとか「鉄泉」だとか聞いたことがあると思います。日本には先ほどお伝えしたように10個の泉質があるんです。「酸性泉」「硫黄泉」「二酸化炭素泉」「放射能泉」「含鉄泉」「含よう素泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「単純温泉」の10個ですが、これらそれぞれにはしっかり定義があります。今回は省略しますが、これらは基本的にはガス成分を除く溶存物質が1000mg以上であることが条件になっています。(単純〇〇泉を除く)
したがって、単純温泉というものはこれらの条件に満たない溶存物質の少ない温泉のことなのです。溶存物質が少ないということは、浸透圧の話が関係してきますね。
温泉1kg中にガス成分を除く溶存物質が
8000mg未満のもの…………………………低張泉
8000mg以上10000mg未満のもの…………等張泉
10000mg以上のもの…………………………高張泉
単純温泉は溶存物質が1000mg未満でしたから強制的に「低張泉」になります。成分の濃さは薄めになっても、最初にお話ししたように水道水のような刺激が考えられるため「体に優しい」とは断言できません。
「美肌の湯」は「体に優しい」わけではなかった
アルカリ性と単純温泉の定義を確認してきましたが、これを踏まえて美肌の湯は別に体に優しいとは言えないことがわかるかと思います。体に優しいというのはあくまでも刺激が弱い状態ですから、肌の角質を取るという刺激の強い要素は体に優しいとは言えないわけです。
Point3 なぜ「美肌の湯」=「体に優しい」と思われるのか
あえてその考えは「誤り」とした理由
そうか、今の話を聞くと美肌の湯は体に優しくないんだ!と思われるかと思います。ここで最初の私の言葉「あえてその考えは「誤り」と言っておきます。」が効いてきます。
私が話したように数値などに基けば確かに美肌の湯の代表格「アルカリ性単純温泉」は体には優しくないわけですが、実際には「体に優しい」と捉えることができます。
それは、「相対的に見て」です。要するに他の泉質と比べたら優しいんです。確かに理論上、浸透圧だけで判断すれば体には優しくない。ところが、他の泉質の比較することによって、体に優しいと捉えることができるんです。
後ほど書きますが、私が最初にあえて「美肌の湯はお肌に良いから、体にも優しそう。」という考えを否定した理由は、この美肌の湯ことアルカリ性単純温泉が他の泉質に比べて刺激が弱いことにより、相対的に見ると体に優しいと言えるためです。
浸透圧だけで体に優しいかを判断しない理由
ここまでご覧の場合、いや、浸透圧だけで体に優しいかを判断すればいいだろと。相対的に見る必要なんてないだろと思われるかと思います。実は、日本の温泉の特徴が影響します。
そもそも日本の温泉の多くは低張泉です。ですから、多くの場合は低張泉の中で体に優しいかどうかを判断するわけです。では何を基準に体に優しいかを考えるのか。それは「泉質名」です。
例えば、「酸性泉」「硫黄泉」ここら辺はやはり殺菌効果が特徴です。殺菌効果があるのは嬉しいのですが、その一方で皮膚にとても強い刺激を与えてしまいます。したがって体に優しいとは言えないでしょう、それに比べて単純温泉や塩化物泉、炭酸水素塩泉はそのような強い刺激がないわけです。よって、泉質で「体に優しいか」を判断することが多いわけです。
まとめ 優先順位をつけて考えると良い
ここまでご覧いただきありがとうございました。これを受けて皆さんは温泉をどう楽しめばいいのかをまとめておきます。
体に優しいかどうかは計画を立てるときに使える知識です。そのため、当日ではなく行きたい温泉地を決める際の要素になります。
手順1 施設の公式サイトなどの「温泉」ページで泉質を確認する
手順2 泉質が「等張泉」であるかを確認する。→等張泉であればOK
手順3 泉質名が「単純温泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」であるかを確認する。
この順番で考えれば良いです。
※お持ちの病や体質によってはこれだけで判断するべきではない場合もあります。詳しくは泉質別禁忌症や温泉医療にくわしいお医者様にご相談ください。
ということで、また次回の記事もよろしくお願いいたします。