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「温泉は疲労回復効果がある」は本当?温泉の噂を大解説!

温泉旅バカひかさ温泉入浴指導員、YouTube動画クリエイター

記事を開いてくださりありがとうございます。温泉入浴指導員のひかさです。さて、今回のテーマは「温泉に関する噂」でございます。例えば「温泉で疲労回復」「温泉に入ると痩せる」などがよく聞くものですよね。今回はこれらが本当に正しいのかを説明していきます。

※今回は医者ではなく温泉入浴指導員による解説です。具体的な医学的な見解はお医者様にご確認ください。

【1】「温泉で疲れが取れる」は本当?

◆結論

さて一つ目は、温泉による疲労回復効果。温泉に入れば、リラックスできて、疲れも取れる!そんなイメージがあるかと思います。ただし、調べてみるとそれは嘘だというような記事も見られます。「温泉で疲れが取れる」は本当なのでしょうか?

結論は「温泉で疲れが取れる」というのは「一部誤り」です。

濁したようで申し訳ないのですが、しっかりここから説明をしていきますね。

◆「温泉だから疲労回復効果がある」というわけではない!

まず、早速ですが大正製薬様のある記事をご覧ください。

入浴には、リラックス効果があり、ストレスなどで疲れた体を休めてくれる効果があります。

さらに、温浴効果によって手や足先などの末梢(まっしょう)神経が拡張し、血行が促されたり、筋肉や関節が柔軟になったりすることで、体の疲れをとる効果があります。

また、湯に浸かった時の水圧も血液やリンパの流れに一役買っています。
【引用】「入浴で疲労回復 湯船に浸かる効果」/大正製薬           https://brand.taisho.co.jp/contents/tsukare/170/
※本記事において重要箇所のみ太字にしています。

これでお伝えしたいことは「入浴」そのものに疲労回復の効果が認められるということなのです。言い換えると「温泉だから疲労回復効果があるというわけではない」ということです。お家にお湯をためて、入浴しても同様の効果があるということになります。そのため、温浴効果というのは身近で恩恵を得やすいものなのです。

◆温泉には疲労回復効果があるものとないものがある!?

そこでもう一つご覧いただきます。

療養泉の一般的適応症
筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進

ご覧いただいたのは療養泉における一般的適応症です。また、療養泉と呼ばれる酸性泉、硫黄泉、塩化物泉などの温泉は各泉質によって「泉質別適応症」が加えられます。上記の療養泉の一般的適応症には、「疲労回復」の文字があります。つまり、療養泉であれば、泉質にかかわらず疲労回復が適応症として認められることになります。そのため、療養泉に疲労回復効果が期待できるというのは間違っていないのです。

ただし、療養泉でない温泉(温泉法第2条の別表の項目に該当する温泉で、かつ鉱泉分析指針の療養泉の基準を満たさないもの)は「適応症」が存在しません。ということは疲労回復効果は温泉としては認められないことになりますから、あくまでも温浴による効果が得られるということになります。さらに言えば、お家でお湯をためた浴槽に入浴するのと基本的には同じ効果ということになります。

◆入浴はカロリー消費をしてしまう

後ほどダイエット効果についてもお話ししますが、入浴という行動はたとえ10分でもカロリー消費をするものです。ダイエット目的の方にとっては非常に小さい変化でしかないのですが、入浴で疲労回復といいながらも5分歩き続けるのと同じくらいの運動量なわけです。そう考えると僅かながらも入浴にはある程度の体への負担があるわけです。そのため、無理な長時間入浴は疲労回復には逆効果とも言えます。

※オリンパス健康保険組合では、10分のウォーキングで約33kcal、入浴で約17kcal消費するとされているため、単純計算でウォーキングは半分の5分にした場合と比較しました。

【参考】「運動や日常生活での 10分間消費カロリーと歩数」/オリンパス健康保険組合 https://www.olympus-kenpo.or.jp/kenko/walking/calorie/calorie1.html

◆まとめ

よって、温浴効果による疲労回復は温泉でなくても期待できるため、嘘とも言えるが、療養泉については適応症として認められるため、本当とも言えるということになります。どちらにせよ、入浴で疲労回復が期待できるというのには違いがないようです。

【2】「入浴はダイエットになる」は本当?

◆結論

さて二つ目は、温泉によるダイエット効果。温泉に入れば、カロリーを消費するから楽して痩せられるなんていう記事もあったりします。ただし、そんなに甘い話があるか…「入浴はダイエットになる」は本当なのでしょうか?

結論は「入浴はダイエットになる」というのは「誤り」です。

◆ダイエットで考えるべき「消費カロリー」

では、実際に1日どのくらいのkcalを消費しなければならないのか。毎日必要な摂取カロリーは、2300〜3050kcal(運動量によって変動)。女性だと1750〜2350kcal(運動量によって変動)とされています。例えば2300kcalの摂取カロリーが必要な人は簡単に言えば、毎日消費カロリーが2300kcalを上回れば体重が減っていくということになります。しかし、これは現実的ではありませんから、1ヶ月で1kg落とすと考えると、1kgの体脂肪を減らすには1ヶ月で約7200kcalのカロリー消費が必要ですから、毎日7,200(Kcal)÷30(日)で計算すると、1日あたり240kcal消費できれば達成できるということです。

◆入浴によるカロリー消費は非常にわずかなもの

先ほどカロリー消費に触れた時に想像はついたかもしれませんが、オリンパス健康保険組合では、10分のウォーキングで約33kcal、入浴で約17kcal消費するとされているとお伝えしました。ただし、この数値は色々な場所で異なっており、例えば入浴だけの時間を計測している場合もあれば、入浴に必要な入浴動作(浴槽に入る、出るなど)も含んでいる場合もあるようです。

10分の入浴で約17kcalだと、1日の目標240kcalを達成しようと思うと、約14倍ですから、140分の入浴が必要です。さすがに温泉入浴指導員としてお勧めできません。というかむしろやめてくださいというレベルです。なので、そもそも現実的ではありませんね。

◆まとめ

以上のことを考えると、ダイエット目的として入浴をすることは現実的ではありませんから、「入浴はダイエットになる」というのは「誤り」といえるでしょう。

【3】「温泉は治療に使える?」

◆結論

さて、三つ目は温泉を治療目的で使えるかという点です。よく「湯治」という治療目的の温泉利用の言葉を聞きますが、実際、温泉によって病気が治るということはあるのでしょうか?

結論は「温泉は治療に使える?」は一部正しいです。

◆昔は温泉が治療に使われていた

先ほど言った湯治というものは、奈良時代にはすでに湯治習慣があったとされ実際に日本書紀や風土記にも温泉療養の記述があります。また戦国時代でも自陣の武士を治療するため遠方から温泉を運んでいたという話があります。この時、現在ほど医療が発達していたわけではないので、薬などがそこまで多くなかったこともあると思いますが、当時の治療法として温泉が用いられていました。

◆温泉による効果

実は、温泉では「効能」という言葉を使えません。これは薬機法と呼ばれ法律上温泉は薬ではないからなのです。したがって、現在の日本の医学において薬のような治療効果を温泉には認めていないことになります。

しかし、実際には次のような効果があります。

①からだを体内の内部環境をできるだけ一定に保とうとする調整機能(ホメオスタシス機能へ還帰させる
②からだに内外からの異常刺激である寒さ、細菌感染、ストレスなどに対する抵抗性や生体防御機能が強化される
③自然治癒力が増加し、薬の量を減らしたり、効き目が良くなったりする。
④歪んだ生体リズムが正常化したり、基礎体力などが向上する。
⑤生活の質が改善され、社会的にもバランスの取れた充実した生活ができるようになる。

これらは温泉使用による「物理的作用」「化学薬理作用」「浴槽機能との相乗作用」であり、実際慢性疾患に効き目はあるとされています。それを温泉業界では「適応症」と記載します。ちなみにこの適応症については「鉱泉分析法指針」という環境省の省令に定められているので、国もその効き目は認めているということです。

◆「温泉入浴」だけで治療をするわけではない

温泉療法で勘違いされるのが、温泉には成分があるから、入るだけで治療になると考える方がいらっしゃいます。しかしこれは間違い。正確には「温泉地療法」という考え方なのです。

温泉療法による自然治癒力増強は、総合的生体調整作用と呼ばれるもので、これは温泉浴による「物理的作用」「化学薬理作用」「浴槽機能との相乗作用」だけでなく、複合療法による作用として「運動療法」「食事療法」「保養プログラム」、さらには気候環境要素の作用として「気温、気圧」「森林気候」「海洋気候」が合わさって生み出される作用なのです。

つまり、入浴のみならず、食事や運動もしっかりと調整する。そのために昔の人は何ヶ月も湯治場というところに閉じこもって病を治していたのです。

◆「温泉療法」をしてみたい方へ

温泉は特に「皮膚病」「生活習慣病」などに効き目があるとされています。最近の改正では「うつ状態」なども項目として挙げられています。

もし温泉療法に興味がある人は、「温泉療法専門医」に相談をしてみてください。その指示に基づいて、温泉利用指導者や我々のような温泉入浴指導員がサポートをするということになります。

ちなみに長期間が無理だとしても最近では「新・湯治」という取り組みも進められています。日帰りでも1泊でもいいので温泉療法の恩恵を受けに行くというものです。もちろん、1週間や1ヶ月するのとでは効果は大きく変わるかとは思いますが、今のストレス社会においては、たった1日、2日でも効果があるのかもしれません。

◆まとめ

以上のことを考えると、温泉入浴のみによる治療はなかなか難しいものの、温泉地療法という考え方で運動や食事などと組み合わせて温泉を利用することによって治療をすることは可能であるということで、「温泉は治療に使える?」は一部正しいと言えます。

【4】まとめ

ということで、今回は3つの噂についてお話ししました。温泉はまだまだ知らないこと、気になることがたくさんある不思議なものです。これをきっかけに、温泉に興味を持ってみるのはいかがでしょうか?

<参考資料>
●「温泉で体が良くなるのは本当?温泉療法医に聞く湯治の効果」/eo健康 https://health.eonet.jp/prevention/4104989.html
●「入浴で疲労回復 湯船に浸かる効果」/大正製薬           https://brand.taisho.co.jp/contents/tsukare/170/
●「運動や日常生活での 10分間消費カロリーと歩数」/オリンパス健康保険組合 https://www.olympus-kenpo.or.jp/kenko/walking/calorie/calorie1.html
●一般社団法人日本温泉保養士協会「温泉保養士養成テキスト」

温泉入浴指導員、YouTube動画クリエイター

温泉入浴指導員、温泉ソムリエ、温泉保養士、温泉観光士の温泉バカです。YouTubeチャンネル「温泉旅バカひかさ」「マイ政経予備校」で活動しています。温泉については、温泉分析書を正しく読み、その人にあった入浴法をアドバイスできるように勉強中です。

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