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本日より首都高『ロードプライシング』で1,000円アップ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:首都高速道路

KNNポール神田です。

いよいよ、2020東京五輪まで、あと4日とせまった、2021年7月19日(月)の6時より昼間(6時〜22時)の自家用車の料金が1,000円上乗せされるという『ロードプライシング』がはじまった。一方、夜間(0時〜4時)はETCで5割引となる。

トラックやタクシー、バスなどは対象外だ。

https://www.shutoko.jp/ss/info2020/rp/

対象期間は、

オリンピック大会時2021年7月19日(月) 〜 8月9日(月)の22日間と、

パラリンピック大会時同年8月24日 (火)〜 9月5日(日)13日間の合計、35日間だ。

■東京五輪はきっかけにすぎない『ダイナミックプライシング』のはじまり

出典:首都高速道路
出典:首都高速道路

首都高のサイトでは、『東京2020大会では、大会関係者及び観客の安全で円滑な輸送と、物流を含めた都市活動の安定との両立を図るため、大規模な交通対策が実施されます』と明記されている。

https://www.shutoko.jp/ss/info2020/

海外ではすでにはじまっている『ロードプライシング』であるが、『東京五輪』の混雑緩和の目的ほど、試験的開始は都合が良い。

料金の『1,000円アップ』の根拠となる数字は、どこにも見受けられない。

繁忙時間の16時間(24時間の66.6%)を1,000円アップすれば、夜間の4時間(16.6%)を5割引にしても、実質は採算はとれる。夜間は、むしろ無料にしても良いくらいだ。

□日本では1956年(昭和31年)に制定された道路整備特別措置法によって、有料道路制度が創設されたため、原則すべてが有料であり、建設時の借入金を返済した後、無料開放される計画であった。

□首都高については、2050年9月30日まで(有料)となっていたが、2014年(平成26年)に、構造物の老朽化のため修繕費用を捻出する必要性から、さらに2065年9月30日まで料金徴収をすることが可能となるよう、関係法律が改正された。

https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の高速道路

つまり、『需要と供給』のバランスにより、需要過多が引き起こす『渋滞時の緩和策』として、『料金値上げ』が有効と証明されてしまうと、今回の『東京五輪』での試験的な『ロードプライシング』が、恒常的な『渋滞緩和策』としての、『ダイナミックプライシング(動的価格設定)』を生む可能性を秘めている。

公的なサービスである『道路』が『ダイナミックプライシング』で、コスト負担を気にしない富裕層にとっては、より良いサービスとなり、コスト負担が大きくのしかかる層にとっては利用できないサービスになりかねない。ひいてはコスト負担できる層だけがよりサービスの恩恵を受けやすいしくみになるのかもしれない。

むしろ、付加価値を与える有料道路とするならば、個々のユーザーが、渋滞や環境に貢献しているならば個別に料金を変化させていくこともできそうだ。

米国では昔から、『CarPool(カープール)』専用レーンという、高速道路が存在している。渋滞を解消するために、一人以上の相乗りであれば、CarPool専用の高速レーンが走れるのだ。一人しか乗っていないクルマはそのレーンが使えない。また、罰則も用意されている。しかし、ハックするやからも多く…、

助手席に、マネキンにサングラスをかけて載せているツワモノなども出てきたり、高速道路の前で、子供がCarPoolレーン用に乗るという小遣い稼ぎもでてくるほどだ。その子供は帰りはどうするのか?と心配になった20年前のカリフォルニアの思い出がある。

■『ETC3.0』が実現する、『一物多価』のサービス時代

今回のような、『ロードプライシング』が実現できるのも、高速道路での『無人化』が進んできた背景がある。

今後、西暦2065年(今から44年後)の高速道路無料化は現実的でないので、『有料

』であり続ける『高速道路』であるが、『ETC2.0』などでも、クルマの個体に応じてサービスを提供できる時代になりつつある。

・道の駅などの3時間以内の立ち寄りサービスなど

・『圏央道』などの割引サービス

・『ITSスポット』へのアクセス

https://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/etc2/

さらに、今後は『AI』や『IoT』『自動運転』サービスなどにより、ETC搭載車は、もっときめの細やかなサービスが実現できる。

Googleが、2013年に買収した『Waze(ウェイズ)』は、海外ではUBERドライバーなどにも愛用されているアプリのサービスだ。日本での普及は、まだまだだが、『ソーシャルマッピング』を得意としており、目的地に何分に到達するかという表示ではなく、渋滞を避けて到達するには何時に出発するのが良いのかというアドバイスがあるので、海外で愛用していた。

ガソリン価格から、警察のスピード違反の取締の場所、事故の場所などを、ユーザー同士がアプリを通じて情報を共有するのだ。乗り合い(CarPool)で乗る時の情報も教えてくれる。

このように、スマートフォンのアプリがGPSを通じて、情報を共有しはじめると、ETCに頼らずに各種個体の情報が道路のセンサーとして、現在の道路状況をリアルタイムに把握できるようになる。

もちろん、未来のETC3.0時代になれば、高速道路も一人で走ると値段が高くなり、シェアリングで人を乗せると、価格が割引されるなどというソフト面での運用も可能になってくるだろう。

もちろん、その前に、アプリを立ち上げて、カーシェアリングすることによって、より格安で便利で地球にやさしいクルマ社会を実現する方法もできそうだ。

むしろ、日本人特有の知らない人への不安感や、自分のクルマへの異常なまでの愛着心がカーシェアリングを遠ざけているのかもしれない。

■首都高の状況を『マップ』や『アプリ』や『メール』で知ることができる

首都高速のサイトでは、現在の交通状況マップなども公開されている。ルート検索アプリ緊急情報メールなども提供されている。

出典:首都高速
出典:首都高速

https://search.shutoko-eng.jp/rtmap.html

むしろ、『首都高速』のようなプラットフォーマーは、自らが、単一のサービスをここに提供するよりも、広く情報のアクセスを許可させ、『API』を公開して利用させることによって、より便利で使いやすいサービスを民間が勝手に作ってくれるほうに期待したほうがよくないだろうか?

基本的に、気のつかないサービスが生まれることによって、本来の業務にプラスになる情報が可視化できるはずである。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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