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子を冷凍庫に閉じ込めた疑いで父親逮捕 過去の事例からみえる親の「知識不足」

山脇由貴子心理カウンセラー 家族問題カウンセラー
(写真:maruco/イメージマート)

 生後間もない次男を氷点下18度の冷凍庫に閉じ込めるなどしたとして、大阪府警が10日、会社員の父親(42)=大阪市東住吉区=を暴行の疑いで逮捕した、という報道がありました。父親のスマートフォンやパソコンには、暴行時の写真や動画が複数残されており、警察は日常的な虐待があったとみています。

 逮捕容疑は21年4月15~16日ごろ、家族旅行で宿泊した福岡市内のホテルの客室で、生後2カ月だった次男を室内に設置された氷点下18度の冷凍庫に閉じこめたことだそうです。この約1カ月前には、自宅のテーブル上に次男をうつぶせにしたまま約4分間放置するなどした疑いもあるとの事です。また、次男の医療機関受診の際には、左足や肋骨に骨折痕も確認されています。

 赤ちゃんを冷凍庫に入れるとは。この父親の心理はどうなっていたのでしょう。

 まだこの事件は、骨折の理由などが解明されておらず、少ない情報の中で、考えられることとして、1つは親の知識不足です。

 私が児童相談所に勤務している時、赤ちゃんの頭蓋内出血や硬膜下血腫などで、病院から通告が来ることがありました。

 でも、赤ちゃんの脳内出血は重大なことなので、児童相談所はすぐに子どもを保護し、その後、親と話し合いを重ねたのですが、親は全く思い当たることがない、と言い、日常的な親からの虐待の証拠も出てこなかったことが多かったです。

 その中で、医師とも話し合いながら見えて来たのは、親が、赤ちゃんが喜ぶあまりに、激しく高い、高いを繰り返したり、左右に揺さぶったり、バギーで激しく揺らしたりしたことが、原因かもしれない、ということでした。つまりは親の知識不足です。どのくらいの力で揺さぶったら、赤ちゃんの見えない所、つまり脳の中が出血してしまうか?ということを親が知らない、ということです。

 この事件でも、父親は「暴行のつもりはなかった」と容疑を否認しています。事実かどうかは分かりませんが、一部報道では、父親がおもちゃのヘリコプターを次男の頭の上で旋回させたりしていたことや、テーブルの上でうつぶせのまま放置された次男が手足をばたつかせて泣き叫ぶ動画も保存されていた、とあります。これらの行動は、父親の言うには「可愛いから、意地悪をしたかった」のだそうです。

 どの程度の力で赤ちゃんは怪我をしてしまうのか。痛いと思うのか。それが全く分からずに親が行う行為が虐待につながる。その可能性は十分あります。父親の知人によれば、「良い父親だった」との報道もあります。だとすれば、生後間もない乳児の扱いを親にどのように学ばせるかが非常に重要となってきます。

 そしてもう一つ疑問なのが、冷凍庫に入れた理由です。それはあくまで可能性ですが、面白半分、楽しさ優先で写真を撮りたかったのかもしれません。

 私が児童相談所に勤務していた時も、炊飯器に赤ちゃんを入れた写真をSNSにアップしている、という虐待を疑う通告があった事がありました。もちろん、炊飯器のスイッチは入っておらず、中身も空で、親は赤ちゃんが炊飯器に入った姿があまりにも可愛いので、思わず写真に撮り、皆にみて欲しかった、という理由だったので、児童相談所としては親への指導で終わりました。

 ですが、SNSがこれだけ普及している中、自分の子どもの写真をインターネット上に載せたい、という親は増えて来ていますし、今後も増えてゆくでしょう。その中で、親が「可愛い」と思う理由だけで、赤ちゃんへのダメージを考えず、怪我をする可能性を考えずに、今回のように信じられない事をする親も出て来るかもしれません。冷凍庫や冷蔵庫に赤ちゃんを入れるなんて発想が信じられないし、それが赤ちゃんにとってのダメージになると想像できないのも信じられませんが、「可愛い」「面白い」画像を撮りたい思いを優先する親も出て来るかもしれない、ということは考えておかなくてはならないと思います。

 今回の事件は、次男の骨折痕の原因解明などの続報を待たなければ、父親の心理は究明出来ませんが、親の知識のなさやSNSへの写真のアップを優先する危険性については、解決を考えてゆかなくてはならないと思います。

*記事の一部を加筆・修正しました。

心理カウンセラー 家族問題カウンセラー

都内児童相談所に19年間勤務。現在山脇 由貴子心理オフィス代表

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