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コンピュータサイエンスで『結婚&恋愛』は科学できるのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
デーティング・サイエンスに特化した研究所 Diverse技術研究所

KNNポール神田です!

ヒトの人生の歩みや、生涯支出の中で、パートナーとの結婚は多大な影響を及ぼしているのは事実だ。しかし!その大事なパートナー選びは、このネット時代にもかかわらず、なにも科学されてこなかったのだ…。

日本のSNSの老舗、mixiのミクシィグループのDiverse(ダイバース)技術研究所で『結婚&恋愛』を科学しているというので、興味を抱き、お話を伺いにいってきた…。

いままでのデーティングサービスのイメージを払拭したい!

Diverse技術研究所は、あくまでもテクノロジーやコンピュータ・サイエンスで恋愛の技術を研究する社内機関。

今までのデーティングサイトのイメージを、数値や過去のデータに裏付けられた研究で払拭したいと主任研究員の岩本拓也氏は語る。

「たとえば…Match.comを運営するmatch groupは、match.com, tinder,okcupid,Plenty of Fishを45サービスを190ヶ国、38の言語で提供している世界最大のマッチングサービス運営会社で、アクティブユーザは全世界で5900万人、有料メンバーは470万人というサービス。また、2015年11月にNASDAQにIPOしている上場企業だ(MTCH:時価総額40億ドル 4440億円)。世界的に確実にネット上での出会いは進化してきている。米国では、オンラインデーティング経由が15.7%で一位。SNS経由を合計すると35%、3組に一組はネット経由で出会っている(2013年シカゴ大学調査)。ネットは、場所や時間にまったく左右されず、たとえ離れていてもコミュニケーションできる場である。しかしながら、日本の結婚にいたる出会いは、「学校時代」、「職場」、「友人の紹介」という近隣のコミュニティ圏内が圧倒的である。たとえば、VR技術などで「恋愛」にITが参画することによりコミュニティの枠を越えたコミュニケーションが可能となるだろう。日本のデーティングサービスが、単なる「出会い系」の延長ではなく、恋愛を科学的にデータマイニングによって、恋愛の成就の確率を高めていくサービスにならなければならない」岩本拓也主任研究員。

Diverse技術研究所の研究活動

Diverse技術研究所は、ユニークな「恋愛」に関する研究活動をおこなっている。たとえば、マッチングサイトや婚活プロフィールにおける「盛られすぎたプロフィール写真」では、オンライン上での夢は広がるが、実際に会った時には落差が生じる。それを少なくするために、写真の加工を除々に解除していくと、変化にかける時間が長いほど気づきづらいことが判明した。つまり、リアルのデートまでに加工写真を加工前の自然写真にもどしていくと、リアルにあった時の盛られた写真とのギャップがなくなるというのだ。つまり、ファーストインプレッションは加工で盛りこんだプロフィール写真で、ネットでやり取りをしている間に、除々に加工前に戻し、デート直前には自然なガチのプロフィール写真にすり替えておくと、リアルで会った時にバレにくいというのだ。

プロフィール写真の理想と現実の乖離を緩和させるDating Service

また、「Anemone」という花型デバイスのアート作品は、互いの発汗・心拍・対応の生体情報を愛の肥料としてリアルな対面の時に花が咲くかどうかで、相手との相性を花によって可視化させている。

生体情報を呈示する婚活イベント支援システムAnemoneの開発
生体情報を呈示する婚活イベント支援システムAnemoneの開発

「Anemone」の主研究者の藤田芽衣氏は、恋人間のノンバーバルなコミュニケーションにデータ分析や視覚化を取り入れている。

Diverse技術研究所

http://research.diverse-inc.com/

恋愛のプロセスが違う日本とアメリカ

Macth.comの恋愛マイルストーン
Macth.comの恋愛マイルストーン

「こちらはMatch.comが提供したデータなんですが、最初のデートでキスをし、1〜2週間でベッドイン、友達に紹介して、3ヶ月目ではじめて、ボーイフレンド、ガールフレンドとなるというわけです。なんだか、日本とでは順番が逆な気がしてなりません。また、デーティングサイトにおける振る舞いも、日米では開きがあります。日本の場合はあくまでもリアルに会うことが最初のスタートとしますが、米国では、ある意味、リアルの情報ではなくスタティックな情報を元にネットでの相性をファースト・デートとして捉える傾向があるようです。リアルに合う時にはまるでセカンドデートとなるよう既視感をすでにネット上で感じているようです。これは、デーティングサイトにおける可能性を広げるものかと思います」岩本拓也主任研究員

さらば!『東京タラレバ娘』

http://tver.jp/episode/27669476

第10話(最終話)

テレビの「東京タラレバ娘」も最終回で3人の30代女子がそれぞれの道を歩みはじめたが、結婚紹介所を利用しようとした人は榮倉奈々さん一人だけ。主人公の吉高由里子さんは、近隣コミュニティの中だけで、付き合うも、なんだか違う…という違和感を繰り返す…ばかり…。もう少し、自分と相手との相性のマッチングで絞りこんでいたならば、データマイニングで恋愛の数値の定量化が測れていたならば…。マッチングの可能性の高い人とネットで出会うのは偶然の近隣コミュニティよりも、恋愛が成就する可能性は高いだろう。むしろ一番、注意したいのが、実らぬ恋愛にかけた時間だ。タラレバ…を語る前に、恋愛の時間を科学するべきだ。

シングルマザーシェアハウス

筆者の経験を元にすると…。

結婚は人生のゴールではない。むしろスタートだ。そして、結婚が幸せとも限らない。子供ができても離婚でシングルマザーという未来もありえる…。筆者はシングルマザーのシェアハウスを運営していたがシングルマザーほど過酷な職業はないと思う。今まで主婦だったのに、いきなり育児と給与所得者の間に立たされる。養育費もままならぬ時もある。しかし、シングルマザーが一緒に集うことにより、子育てはかなり楽になる。ある意味セーフティーネットとなった。そんなリスクが恋愛や結婚にはつきまとう。一時の熱病に冒されて、結婚というのが吉とでるか凶とでるかは紙一重だ。

ピースボートの船マジック

『ピースボート』という世界一周の旅では「船マジック」という言葉がある。ピースボートの船の上では非日常が日常だ。船旅は、毎朝、外国がやってくる感覚になる。また、船の中では、食事は3食つきで「経済」という力学が見えにくい。船で出会って、一緒に食事をする仲になっても、船内では支払いが一切発生しない。最初から料金にコミコミだからだ。しかし、陸にあがった途端に経済力学が働き「船マジック」が一瞬にして溶けてしまうことがある。非日常な状態の出会いが続くからだ。

シェアハウスの恋愛力学

シェアハウスにも、「シェアハウスの恋愛力学」が働く。それは、付き合ってもいない異性との台所での仕事ぶり、女性とのすっぴんでパジャマ姿での過去の恋バナトークなど。非日常が日常となる。シェアハウスも近隣コミュニティだが、シェアハウス住人という、今までの近隣友達コミュニティではない、場所への関心によって集まる住人コミュニティとなる。さらに、シェアハウス内のイベントで出会う友達の数が増える。大規模なシェアハウスならば毎週、どこかでイベントが開催されている。知人の知人の知人がリアルに増えていく…。30過ぎて独身ならば、試しに、住居を移すのではなく、セカンドハウスとして、シェアハウス住まいを経験するのは悪くないと思う。海外旅行に行ったと思って、借りてみて、週末はセカンドハウスとしてのシェアハウスで暮らしてみるだけでもかなり出会いの数は変化するはずだ。

加給年金という名のプレイボーイ年金

筆者は現在55歳で新婚5ヶ月目となった。相手は27歳年下であり、離婚した娘と同い年だ。ご想像どおり、先方のご両親は筆者とあまり年が変わらない…。プロポーズの許しを得たのは、「加給年金」の話をしたからだ。別名「プレイボーイ年金」と呼ばれるものだ。

加給年金額と振替加算

厚生年金保険の加入期間が20年以上あれば、65歳になった時に、生計を維持している配偶者または子がいるときには、年金に「加給年金」が加算されるのだ。しかも、配偶者が65歳になるまで、子供が18歳になるまで加給年金が支給され続けるのだ。つまり、年の差が開けばひらくほど支給年数が増える。これで先方の両親にあと10年後に筆者が、死んでも加給年金がもらえることを説明し、プロポーズの許しを得たのだ。法制度を知っているだけで、年の差婚の不安が解消される場合もある。

結婚&恋愛には出会いの科学が必要だ

Diverse技術研究所さんとお話をしているうちに、この市場の大きさを感じるようになった。デーティングサイトの市場規模は3000億円程度だが、人生のパートナーを選ぶことは、人生史上最大の意思決定に近いものだと考えるようになった。たとえば、家を買う、建てる、住宅ローンを借りる。両親の土地に二世代住宅を家を建てる時などには、子供の数と部屋数などを念頭に設計する。しかし、そこには、旦那が浮気をして、離婚していくなどの将来のリスクは誰も考えていない。親が他界した時の部屋の賃貸やAirbnbでの収入なども考えていない…。人がいなくなった時や万一の運用も考えて家は設計しなければならない。

また、保険会社の保険を選ぶ主体者は、主人よりも妻や配偶者に決済権があり、年間数十万円の金額が何十年も続く…判断をあまり検討もせずに選択してしまっているのが実情だ。

自分と一緒に世帯を持ったパートナーには、離婚の場合は、資産の半分近くもらえる権利も発生する。そんな、理想のパートナー探しを近隣コミュニティだけや偶然の運だけに依存するのはリスクが大きすぎると思った。

インターネットで、AIでディープラーニングで、SNSで、そしてデータマイニングによるアルゴリズムで本来ならば、出会えなかった、ご縁が出会えるようになっているにもかかわらずだ。

ネットの出会いが非日常だった時代から、日常で当たり前になる時、互いのプロフィールが互いを引き合い寄せるデータになることだろう。デーティングサービスというプラットフォームが、お見合い時代の世話役同等になるのかもしれない。なによりも、これだけ大きな市場に影響するデータに、各業界がもっと興味・関心を示してもおかしくないと感じた…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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