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2.5次元の新たな可能性:TLで話題の「チャー研ステ」とは何なのか

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

アニメや漫画、ゲームを原作とした舞台やミュージカル、いわゆる「2.5次元作品」という言葉は皆さん既にご存知かと思います。

今やすっかり市民権を得たこのジャンルでは、「鬼滅の刃」といった直近の話題作から「サザエさん」といった国民的作品まで驚くほど幅広い作品が舞台化され、まだまだ女性向けというイメージが強いものの、最近では元NMB48・上西恵氏が主演をつとめることで話題の「キューティーハニー」など、男性ファンを意識した作品も増えてきました。

もはや毎日どこかで2.5次元関連の動きがあるほど、ありとあらゆる作品が舞台化される昨今においては、人々の注目を一手に集めるような話題作が生まれるのもなかなか難しくなってきています。

そんな2.5次元界隈において、この3連休中というわずかな期間で、SNSを中心にじわじわと注目を集め、今まさに話題となっている作品があります。

アニメ「チャージマン研!」の2.5次元作品、LIVEミュージカル演劇「チャージマン研!(チャー研ステ)」です。

アニメ「チャージマン研!」とは

舞台の原作であるアニメ「チャージマン研!」とは、1974年の平日夕方に、10分枠で放送されていた子供向けのテレビアニメです。

放送後長らく新たな展開が無かった本作でしたが、”冷静にみるとツッコミどころが満載”という内容がネット民に受け、ニコニコ動画などを中心に2000年代後半から話題となり、放送から30年以上の時を経て新たなブームが起きた珍しい作品となっています。

作品のつくりや展開を”ツッコミどころ”というネタとして扱ってしまうことに関しては手放しに是とすることはできないかもしれません。しかし本編放送から36年後に初の公式HPが作成され、昨年からは本編のBGMを使用したオーケストラコンサートも開催、そして本編放送後45周年を迎えた今年にLIVEミュージカル演劇「チャージマン研!」として舞台化されるといった数々の展開を鑑みると、たとえ入り口は珍作としてでも、本来なら知られるはずがなかった人々にまで作品が届き、楽しまれたことは、作品にとって大きな価値があることのように思います。

常識を覆す公演方法

そんな作品の舞台化だけあって、「チャー研ステ」は制作発表時から一部で話題となっていましたが、そうした前評判を凌駕するほどの勢いで、この3連休の間にネットを中心としてその評判が広がりをみせていました。

その原因として考えられるのが、これまでの舞台の常識を覆す本作の公演方法です。

例えば「普段なら禁止されるはずのスマホの操作を許可し、一部を除き本番中の写真撮影やSNSへの投稿を許可している……」と聞くだけでも驚くかもしれませんが、実はここまでならば告知のための撮影タイムが設けられている舞台は結構あったりします。

それ以外にも、4K(※1)と評判の配役や観客投票制の配役シーン、メインステージ以外の場所でお話が展開する“同時進行シーン”の導入など、本作ならではの公演方法は数多くあるものの、評判の盛り上がりを後押ししたと考えられる最も驚きの公演方法とは、舞台の全公演をニコニコ生放送にて無料配信(※2)していることです。

通常、千秋楽などの一部公演がニコニコ生放送にて配信されたり、全国の映画館にてライブビューイングされるということはありますが、映像ソフトの発売前に、本番中の全ての公演が誰でも無料で視聴できるというケースは、これまでに例をみたことがありません。

※1 4K解像度ではありません

※2 厳密には無料視聴できるのは本番前半部分。後半はプレミアム会員のみ視聴可能

2.5次元の新たな可能性

そうした、これまでの舞台の常識を覆す公演方法により、この「チャー研ステ」は本公演が開始した10月31日以降、特にこの3連休において、従来の2.5次元舞台では見られないような広がり方をみせました。

それもそのはずで、本来ならば舞台をみた人が写真をあげて「今こんな面白い舞台がやっているよ!」としか発信できないものが、「しかもネットで無料でみられるんだよ!」という情報と共に拡散できるので、元々の2.5次元ファンだけでなく、それ以外の人々にも布教しやすく、また布教された側も「無料なら試しにみてみようか」と気軽に鑑賞することが可能だったからです。

さらに本作は、無料配信されているとはいえ、実際にチケットを買って観劇する人が減ることもなく、むしろニコ生での鑑賞をきっかけに、生で観劇したいという人も出てきています。それは思わず鑑賞する人が人に勧めたくなるくらい、勧められた人が実際に観劇したくなるくらいの魅力を、本作が持っているからでもあるのでしょう。

そう考えると今後全ての2.5次元作品で同じことはできないのかもしれませんが、従来の作品ではみられなかったこのような評判の広がり方は、作品数が増え続けるこのジャンルにおいて、「チャー研ステ」が実証した2.5次元作品の新たな可能性ともいえるのではないでしょうか。

残り3公演

そんなLIVEミュージカル演劇「チャージマン研!」は、明日の千秋楽まで残すところあと3公演となっています。

原作アニメについては舞台中にも分かりやすい解説があり、原作未視聴の方でも楽しめるので、2.5次元作品ファンも、興味はあるけれどみる機会がなかったという方も、これを機に、新しい2.5次元の文化に触れてみるのはいかがでしょうか。

「チャージマン研!」全公演 生配信ページ

舞台公式HP

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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