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金銀花(スイカズラ)に含まれるクリソエリオール - 皮膚の健康を守る天然成分

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【金銀花(Lonicerae japonicae flos)とは?】

金銀花は、中国の伝統薬(中薬)の一つで、スイカズラの花蕾と花を乾燥させたものです。乾燥した花や蕾には、少なくとも212種類の生物活性成分が含まれています。これらの成分は、抗炎症作用や抗酸化作用など、様々な薬理作用を持つことが知られています。

金銀花は主に中国の山東省、陝西省、河南省、河北省で生産されています。特に、山東省臨沂市平邑県は最大の産地とされています。外観は、長さ2〜3cm、上部の直径約3mm、下部の直径約1.5mmの棒状で、表面は黄白色または緑白色をしています。calyx(がく)は緑色で先端に5つの裂片があり、corolla(花冠)は筒状で二唇形の先端を持っています。

【皮膚疾患に有効なクリソエリオールとは?】

クリソエリオールは、金銀花から抽出されるフラボノイドの一種です。化学式はC16H12O6で、ルテオリンの3'-O-メチル誘導体に分類されます。このフラボノイドは、抗酸化作用、抗炎症作用、抗がん作用、抗糖尿病作用、抗関節炎作用、抗菌作用、抗血栓作用、抗高脂血症作用、鎮痛作用など、幅広い薬理作用を持つことが明らかになっています。

特に、クリソエリオールの抗炎症作用と抗酸化作用は、湿疹やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の改善に役立つと考えられます。クリソエリオールは、炎症性サイトカインの産生を抑制し、活性酸素種を除去することで、皮膚の炎症を抑え、バリア機能を回復させる働きが期待できるでしょう。

【金銀花エキス(クリソエリオール)の皮膚への適用と今後の展望】

クリソエリオールは非常に疎水性が高く、水にほとんど溶けない性質を持っています。そのため、経皮吸収性に優れており、皮膚疾患の治療には最適な投与経路であると言えます。また、クリソエリオールは血管内皮細胞に発現するVEGFR2の活性を阻害することから、皮膚の毛細血管や表皮の治療にも効果が期待できます。

ただし、ヒトの表皮に対するクリソエリオールの毒性、用量、安全性評価については、さらなる研究が必要です。今後、製剤化やナノ化技術の進歩により、より効果的で安全性の高い皮膚疾患治療薬としての応用が期待されています。金銀花由来のクリソエリオールは、次世代の天然由来皮膚治療薬の有力な候補と言えるでしょう。

参考文献:

1. Li, Y., Li, W., Fu, C., Song, Y., & Fu, Q. (2020). Lonicerae japonicae flos and Lonicerae flos: A systematic review of ethnopharmacology, phytochemistry and pharmacology. Phytochemistry Reviews, 19, 1-61. https://doi.org/10.1007/s11101-019-09655-7

2. Wu, J. Y., Chen, Y. J., Bai, L., Liu, Y. X., Fu, X. Q., Zhu, P. L., Li, J. K., Chou, J. Y., Yin, C. L., Wang, Y. P., & Zhang, F. (2020). Chrysoeriol ameliorates TPA-induced acute skin inflammation in mice and inhibits NF-κB and STAT3 pathways. Phytomedicine, 68, 153173. https://doi.org/10.1016/j.phymed.2020.153173

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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