原油先物の2020年からの変動を再確認
原油価格の動向をみるのに使われているもののひとつにWTI原油先物がある。これは米国の代表的な原油先物商品で、WTI(West Texas Intermediate)とは、西テキサス地方の原油で含有硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油が多く採れるといった特徴がある。
取引量と市場参加者が多いことから、原油価格の代表的な指標のひとつとなっている。
このWTI先物が2020年に一時マイナスとなる事態が発生した。
2020年4月20日の原油先物市場では史上初の事態が発生した。WTI先物5月限が一時マイナスに転じ、マイナス40.32ドルを記録したのである。
これは原油の供給そのものも過多となっていたところに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で石油そのものの需要が大きく後退した。先行きの需要も見えなくなっていた。
そのタイミングで21日がWTI5月限の取引最終日となり、貯蔵施設がほぼ満タンの状況下、原油先物の買い方が現引き(先物の買い方が現物を引き取ること)を恐れて、投げ売ったことが要因とみられた。
これ以降のWTI先物は上昇基調となった。新型コロナウイルスの世界的な感染は続いていたが徐々に経済活動が回復したためである。
2022年3月7日にWTI先物は130ドル台を付け、2008年7月に付けた147.27ドルの過去最高値に接近した。
ロシアによるウクライナ侵攻により、米欧がロシア産石油の禁輸措置を検討する一方、イラン産原油の輸出再開が遅れる見通しとなり、供給逼迫懸念が強まったことが要因となっていた。
その後のWTI先物は下落基調となり、65ドルを割り込む場面もあった。2023年あたりからは654ドルから95ドルの間での上げ下げとなっている。
ここにきて中東情勢の緊迫化から買い戻しが入っていたが、それでも80ドルには届かず、引き続きレンジ内の動きとなっている。