Appleが新iPadで巻き返しを狙う教育市場
KNNポール神田です!
Apple Special Event 2018年3月27日(火)
https://www.apple.com/jp/apple-events/march-2018/
Appleがシカゴの高校で教育市場向けのイベントを開催し、Apple Pencilが使える低価格な9.7インチのiPad 37,800円(32GB WiFi)〜 63,800円(128GB WiFi+CellularモデルApple SIM対応)を発表した。本日より発売開始。
学生・教職員向けストアでは、35,800円(32GB Wi-Fiモデル) 〜61,800円(128GB WiFi+Cellularモデル)
https://www.apple.com/jp_edu_1460/shop
新しいiPadは、9.7インチでApple Pencilが使える新たなラインナップ
今回発表の9.7インチのNew iPad(2018春モデル)は、10.5インチのiPad Pro(64GB 69,800円〜)の購入を検討していた人にとっては、▲3万2,000円もの価格差に背中を押されたことであろう。ただし、新しいiPadの容量は、32GBと128GBのみだ。10.5インチのiPad Proは、64GB、256GBのみであり、使う人の容量ニーズによって選択肢は大きく別れることだろう。
容量が32GBで、Apple Pencilを使いたい、もしくは49ドルで発表になったLogitech Crayonを使うには、新しい9.7インチのiPadは楽しいツールとなることだろう。
iPad現行機種のラインナップ
現行のiPadは大きく4種類となった。日本で人気のあるiPad mini4の後継機の発表はなかった。
今回の9.7インチiPadは、Wi-Fiモデルの32GBならば、消費税を入れて約4万円(税込み価格で4万824円)で買えるiPadとなった。また、どのモデルもCellularモデルと言われる通信キャリアやSIMフリーモデルは、+15,000円のアップとなる。Wi-Fi環境のみで使うかどうかでも、この選択肢は大きく変わるだろう。1万5,000円プラス月額通信料等がかかるからだ。通信キャリア契約だと割引プランがあれど、年間での縛りが発生する。
iPadをWi-Fi環境下だけでお絵かきにも使えるタブレット端末として割り切って使うのが、一番、負担が少ないのかもしれない。
Appleが重要視する『教育市場』
今回のイベントは教育市場向けに新たなiPadをリリースした構図だが、Appleという企業は、昔から『教育市場』で培われたDNAを持つ企業である。
古くはApple IIの時代(1977年発表)から、教育市場で親しんだコンピュータを生涯にわたり使い続けることを意識し、『K-12』幼稚園から高校までの13年間と『大学市場』を最も重要なマーケットにしてプロモーションしてきた。かつては、Microsoftにその市場が奪われ、近年での教育市場は、MicrosoftからGoogleのChrome OSによるChromebookに奪われている。Chrome OSの人気の要因はブラウザベースのOSであり、アップデートやウィルス対策が万全であり、維持管理コストが安いからだ。
その教育市場で、Appleは『テクノロジー×リベラルアーツ』というコンセプトで挑戦する。GoogleのWebベースのアプリケーション群とは違い、独自のインストールベースのiOSアプリで勝負を挑む。PagesやNumbersやKeynoteなどにも手書きメモが加えられるということで表現力を多彩にするという戦略を選んだ。それだけではなくGaragebandの音楽やiMovieのビデオ編集といった要素は、さながら『マルチメディア』戦略で教育市場にうってでた90年代を彷彿させるアプローチだ。
コンセプトビデオも、iPadで想像性の高いクリエイティブな「ホームワーク」が演出される。
また、新しいiPadとApple Pencilとの活用でもクリエイティブな要素が。
教育者向けの支援ツールが充実
Appleの本気度はすでに日本語サイトでも感じ取ることができる。しかし、どれもこれからのスタートといったところは否めない。
Appleの教育ウェブサイト
https://www.apple.com/jp/education/
登録制の『Apple Teacher』
https://www.apple.com/jp/education/apple-teacher/
『Swift』プログラミング学習支援サイト
https://www.apple.com/jp/education/teaching-code/
実際にiPadで『Swift』の初心者プログラミングも実践できるSwift Playgrounds
https://www.apple.com/jp/swift/playgrounds/
『スクールワーク』はまもなく登場
https://www.apple.com/jp/education/teaching-tools/
「Everyone Can Create」のカリキュラム は2018年秋に登場
https://www.apple.com/jp/education/everyone-can-create/
まだまだ、これからの教育市場でのiPadアプリの活用のアプローチのようだ。まずは、教育者をトレーニングしていこうという方針はよく理解できた。iPhoneもiPadも成熟化し、廉価版とパイを広げるフェイズに至っているのだろう。しかし、AppleWATCH以降の新たな製品カテゴリーなき今、iPadでどれだけ牽引できるのか?次の一手をどう出るのかに興味が注がれる。新カテゴリーの模索は、世界最高の時価総額企業のジレンマでもある。