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台風4号が温帯低気圧に 台風一過の晴天ではなく、戻り梅雨のような天気に

饒村曜気象予報士
長崎県佐世保市付近に上陸寸前の台風4号の雲(7月5日3時)

台風4号が佐世保市付近に上陸

 令和4年(2022年)の台風4号「アイレー」は、7月1日(金)に日本の南で発生した後、2日(土)23時頃に沖縄本島付近を通過し、その後東シナ海を北上しました。

 そして、5日(火)の6時前に長崎県佐世保市付近に上陸し、その後、九州を横断中の9時に温帯低気圧に変わっています(タイトル画像参照)。

 台風4号の北側には発達した積乱雲がないなど、発達した台風ではありませんが、東側には、中心付近より広い雨雲を伴っていました。

 大気の下層では、台風4号を回り込むように、南から暖かくて湿った空気が流入していたため大気が非常に不安定となり、台風4号が東シナ海を北上していた3日(日)の段階から西日本から北日本の広い範囲で、所々で猛烈な雨が降っています。

 7月3日昼前に愛知県小牧市付近で1時間に約100ミリ、昼過ぎには京都府京丹波町南部で1時間に約100ミリ、京都府福知山市南部で1時間に約90ミリ、夜の初めころには福井県福井市付近で1時間に約80ミリという解析雨量を観測したとして、気象庁では記録的短時間大雨情報を発表しています。

 また、気象庁では、7月5日0時39分に高知県に対し、線状降水帯が発生したとして「顕著な大雨に関する全般気象情報」を発表しています。

 さらに、台風が温帯低気圧に変わった後も、5日朝に福岡県大牟田市付近と熊本県荒尾市付近で1時間に120ミリ以上、5日昼過ぎに北海道岩見沢市付近で1時間に約100ミリ、北海道三笠市付近で1時間に約110ミリ、5日夕方に青森県鰺ヶ沢町付近で1時間に約90ミリなどという解析雨量を観測したとして、気象庁では記録的短時間大雨情報を発表しています。

 このように、台風4号が通過し、温帯低気圧に変わっていますが、台風一過の晴天とは程遠い状況です。

 むしろ、戻り梅雨のような天気です。

台風一過の晴天

 騒動が収まり、晴れ晴れとすることを「台風一過」といいますが、もともとは、台風が通り過ぎたあと、空が晴れ渡りよい天気になることからできたことばです。

 といっても、ここでいう台風は、人々の印象に残る、大災害をもたらした秋の台風のことです。

 秋の台風は偏西風に乗って足早に過ぎ去り、北から乾燥した寒気を南下させますので、台風通過後は晴天をもたらすからです。

 しかし、夏の台風は、動きが遅いことが多く、通過してもすんなりと晴天にはならないことが多いのです。

 台風4号も動きが遅く、台風4号から変わった温帯低気圧も動きが遅くなっています(図1)。

図1 予想天気図(左は7月6日9時、右は7日9時の予想)
図1 予想天気図(左は7月6日9時、右は7日9時の予想)

 7月6日(水)朝でも関東の南海上で、引き続き、東日本から北日本の下層へは暖かくて湿った空気が流れ込んでいます。

 このため、西日本と東日本の太平洋側では雨が降り、雷を伴って非常に激しく降る所もあるでしょう。

 特に、西日本の太平洋側は、これまでの大雨で、土の中の水分量を示す土壌雨量指数が高くなり、土砂災害の危険度が高まっている所がありますので、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください(図2)。

図2 土の中の水分量を示す土壌雨量指数(7月6日2時現在)
図2 土の中の水分量を示す土壌雨量指数(7月6日2時現在)

 また、西~東日本の日本海側や北日本はくもりの所が多く、山陰~北陸や東北の太平洋側では所により雨や雷雨となる見込みです。

 南西諸島は概ね晴れますが、にわか雨の所があるでしょう。

 このように、台風4号や台風4号から変わった低気圧が過ぎ去っても、すんなりとは晴天にならない予報です。

梅雨明け後の記録的な猛暑から平年並みの暑さへ

 令和4年(2022年)は、太平洋高気圧の勢力が強まり、6月27日から29日にかけて、梅雨明けが相次いでいます(表)。

表 令和4年(2022年)の梅雨明け
表 令和4年(2022年)の梅雨明け

 その後は、南海上から、暖かくて湿った空気が、流入したことに加え、強い日射が加わって、各地で記録的な高温が続きました。

 最高気温が25度以上の夏日、最高気温が30度以上の真夏日と、最高気温が35度以上の猛暑日は真夏並みの多さでした(図3)。

図3 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~7月)
図3 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~7月)

 そして、群馬県の伊勢崎の最高気温は、6月25日に40.2度、30日に40.0度を観測し、全国初めての6月の40.0度超えを2回も観測しました。

 台風4号の襲来によって、7月5日は、猛暑日が1地点、真夏日が316地点しか観測がなく、記録的な高温は一服しました。

 しかし、7月6日以降は、全国的に平年並みか平年より高くなる予想となっています(図4)。

図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 猛暑日の予報はないのですが、ほとんどが真夏日の予報です。

 体が暑さになれていない時季の高温で、熱中症の危険性が高い状態は続いています。

 また、新型コロナウィルスに感染する人も増加中です。熱中症と新型コロナウィルスの感染は、症状が似ているといわれますが、熱中症は防げるという点が違います。

 今年は、これまで過去に例がない天気が続いていますが、体調管理には十分気をつけてください。

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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