北朝鮮が2022年1月14日と2021年9月15日に「鉄道機動ミサイル連隊」から発射した「戦術誘導弾」は北朝鮮版イスカンデル短距離弾道ミサイル(米軍コードネームKN-23)と見られています。

 北朝鮮版イスカンデルは既に車両搭載型があり、ミサイルのタイプ別に4軸8輪車両搭載型(通常型)と5軸10輪車両搭載型(拡大型)の2種類があります。4軸8輪車両は複数種類が確認され、更に装軌車両搭載型(クローラー車両)もありますが、5軸10輪車両搭載型以外の搭載ミサイルはどれも通常型です。

 それでは鉄道搭載型は通常型なのか拡大型なのか、どちらなのでしょうか。車両搭載型同士なら大きさを比較しやすいのですが、片方が鉄道搭載では写真に写った周囲の対象物が違ってくるので比較が難しくなります。そこで通常型、鉄道型、拡大型の各ミサイルのみの写真を直接見比べることにします。

(注意)写真のミサイルの長さを揃えて比較

北朝鮮KCNAよりイスカンデル鉄道型、通常型、拡大型
北朝鮮KCNAよりイスカンデル鉄道型、通常型、拡大型

 イスカンデル拡大型はイスカンデル通常型よりも大きく長いのですが、この比較画像では形状を比較しやすいようにミサイル全長をわざと揃えています。

 まず分かるのは、ミサイル胴体の円筒形の真っ直ぐな部分(固体燃料推進剤の搭載箇所)と、その上の傾斜が付いたノーズコーン部分(弾頭や誘導装置の搭載箇所)との長さの比率が、拡大型だけ違うという点です。拡大型は胴体の円筒形部分の比率が大きくなっています。

 また拡大型のノーズコーン先端から円筒形部分までのラインは滑らかで、イスカンデル系というよりはむしろATACMS系の特徴が少しだけですが垣間見えます。イスカンデルのノーズコーンは角度の変化がある二段円錐形(Bi-conic)が特徴ですが、それがやや変更されています。参考:Nose cone design - Wikipedia

 これに対し鉄道型と通常型は形状の特徴が全く同じです。派生型というよりは同じミサイルである可能性が高いと思われます。ただし試験発射での飛行性能の数字に気になる点があります。以下は各型の試験発射での最大飛行性能です。

  • 通常型イスカンデル・・・飛距離600km(2019年7月25日)※1
  • 拡大型イスカンデル・・・飛距離600km(2021年3月25日)※2、※3
  • 鉄道型イスカンデル・・・飛距離800km(2021年9月15日)

※1 韓国軍は発射当日の観測で飛行距離690kmと発表していたが、翌日に600kmに修正。

※2 韓国軍と自衛隊は発射当日の観測で飛行距離450kmと発表していたが、韓国軍は3カ月後に600kmに修正。

※3 拡大型イスカンデルは弾頭重量2.5トンと非常に重いため、大型化したが射程は変わらず。

 鉄道型は通常型と形状および大きさは同じだと推定されていますが、飛距離が3割以上も増しています。理由は分かりませんが、可能性としては幾つかが考えられます。

  1. 通常型も800km飛べるが性能を抑えて試験していた可能性。
  2. 弾頭重量を軽くして飛距離を伸ばした射程延伸型の可能性。
  3. 飛行制御を改良し効率の良い滑空飛行を行った可能性。
  4. 固体燃料推進剤を改良し推進力を増強した可能性。

 現時点ではまだ理由は判明していません。しかし鉄道型と通常型のミサイルが同じ物である可能性が高い以上、イスカンデルは車両搭載型の通常型も800km飛べると考えなければなりません。それに拡大型の弾頭重量を軽くすればもっと長い距離を飛べる可能性も高いと考えなければならないでしょう。