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平成版「七色のユニフォーム」。オリックス・バファローズの七変化

阿佐智ベースボールジャーナリスト
昨日実施された「オリ達」デー。オリックスは今季6着目となるユニフォームを披露した

 昭和の昔、「七色のユニフォーム」をまとって試合に臨んだチームがあった。

 日拓ホームフライヤーズ。1973(昭和48)年、1シーズンだけ存在した球団である。正確に言えば、この年のキャンプイン時に日拓ホームはフライヤーズを買収し、11月には現在のオーナー、日本ハムに売り渡しているから、この会社は球団を1年も保有していない。当時、巨人を擁するセ・リーグとパ・リーグとの人気の差は埋めがたく、リーグの将来に悲観したこの会社は早々に球団経営から撤退してしまったのだが、それでも、シーズン中は、本拠・後楽園球場に客を呼び込もうと、あの手この手を繰り出した。そのひとつが後期シーズンに採用した、ホーム用4種、ビジター用3種の計7種類のユニフォームである。前期シーズンには、前年までの東映フライヤーズのユニフォームのロゴを入れ替えただけのものを使用していたので、このシーズン、このチームは都合9種のユニフォームを使ったことになる。

 しかし、この企画は当時の選手たちには不評で、そのビビッドなデザインもさることながら、とにかく種類が多く、どれを着ていいのかわからなかったということが最大の難点だったようだ。

重要な集客アイテムとなった企画ユニフォーム

 同じような話をオリックスの元選手に聞いたことがある。近鉄との合併後、ダブルフランチャイズ制をとっていた頃、ホームユニフォームが神戸用と大阪用の2種類あったことがずいぶんと煩わしかったらしい。

 その話を、球団関係者に言うと、このような返事が返ってきた。

「今はそんなことないと思いますよ。試合当日に選手に渡していますから」

 

 近年のプロ野球は、ユニフォーム花盛りだ。その昔は、先述の日拓などは例外で、どの球団もユニフォームは、ホーム、ビジター用が1着ずつというのが相場だった。ところが今では各球団、復刻ユニフォームやイベント用などシーズンを通して数種のユニフォームを採用している。

 このような流れは、野球ビジネスの本場アメリカでは、すでに30年ほど前から起こっている。メジャー、マイナー問わず、復刻ユニフォームで集客に努めたり、サードユニフォームを採用してマーチャンダイズ強化を図っていた。お隣の韓国も、日本に先んじて、これをまね、すでに10年以上前から、復刻ユニフォームイベントを頻繁に行っている。

合併球団という歴史を生かして

休日を中心に使用されるBs spirits ユニフォーム。今年はシンプルなデザインだ
休日を中心に使用されるBs spirits ユニフォーム。今年はシンプルなデザインだ

 合併という歴史もあり、オリックス球団がシーズンを通して採用するユニフォームの数は多い。ここ数年は7種をファンに披露している。まさに現代版「七色のユニフォーム」である。基本バージョンは3種。ホーム、ビジターに加え、休日の試合を中心にサードユニフォームを選手たちは身にまとう。「Bs spiritsユニフォーム」と名付けられたこのサードユニフォームは、例年、ファンクラブの入会特典となっており、これを目当てに入会するファンも多い。

 そして、毎年恒例のイベントユニフォームが4種。前身球団を偲ぶ意味で、5月前後に実施される「関西クラシック」の際には、阪急ブレーブスもしくはオリックスブルーウェーブと近鉄バファローズのユニフォームが登場、そして6月末の「オリ達・オリ姫デー」に合わせた特別ユニフォーム、そして夏休みの恒例行事になっている「夏の陣」ユニフォームだ。「オリ達・オリ姫デー」、「夏の陣」の際は、前売り券購入者にレプリカがプレゼントされるとあって、毎年スタンドは大入りとなる。

選手にも好評なユニフォーム企画

若きセットアッパー、山本投手も企画ユニフォームを楽しみにしているという
若きセットアッパー、山本投手も企画ユニフォームを楽しみにしているという

 このユニフォーム企画、選手の評判も上々だ。若手のホープ、山本由伸投手は、「すごく楽しみですよ。こないだの復刻のやつも格好良かったんで、できればとっておきたいんですけど、オークションに出すんで…」と手元に残らないことを残念がる。各イベントが終わると、企画ユニフォームは回収され、オークションでファンに譲られるのだ。その際、サインを選手に入れてもらうこともあり、球団は各選手に来場者プレゼントや販売用のレプリカを支給するのだが、中には、本物を取っておきたいからと、余分に作ってもらう選手もいるという。

 昭和の昔と違い、現在はユニフォームの管理は基本、球団がやってくれる。ユニフォームの種類が多くても、選手の負担にはならないだろう。日々真剣勝負を繰り広げる中、普段とは違うユニフォームに袖を通すことはいい気分転換にもなっているようだ。

ユニフォームで一体化するフィールドとスタンド

「オリ達」ユニフォームで応援するライトスタンドのファン
「オリ達」ユニフォームで応援するライトスタンドのファン

 この日、6月24日の福岡ソフトバンク戦は「オリ達・オリ姫デー」。日曜で様々なイベントがあるということで、早くから多くのファンが京セラドーム大阪に集まっていた。開門直後には両軍の選手により、先日大阪北部で起こった地震の義援金募金活動が実施された。スタンドは、満員の3万人の観客で埋め尽くされ、その多くが、入場者プレゼントとして配布された選手と同じデザインの「オリ達」ユニフォームを着てバファローズに声援を送っている。ちなみにこの配布用ユニフォームにはスポンサーが付き、球団の持ち出しはほとんどない。1万4000着のレプリカユニフォームをスポンサードする企業にしても、グローバル化の進む中、布製品の原価は落ちる一方で、国外に発注すれば、広告料の相場でこれを用意することができる。

 そして、本物志向のファンは、選手仕様のものと同じようにチームロゴがプリントではなく縫い付けられたハイクオリティのレプリカをチームショップで購入する。この日もチームグッズをあつかう京セラドーム内のBsショップにはハイクオリティバージョンの「オリ達・オリ姫」ユニフォーム(選手が試合で着用することはないが、女子バージョンの「オリ姫」ユニフォームは、チームロゴの縁取りがピンクになっている)や、このユニフォームの地模様をあしらったキャップ、バットメガホンなどが新商品として加わっていた。

ユニフォームだけが原因ではないだろうが、この日京セラドームには「満員御礼」が出た
ユニフォームだけが原因ではないだろうが、この日京セラドームには「満員御礼」が出た

 

 「七色のユニフォーム」は現代プロ野球にとって、球団経営の重要な戦略アイテムとなっている。

(写真は全て筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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