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マライア・キャリーの破局が明かした衝撃の婚前契約(prenup)内容。ほかのセレブもなかなかすごい

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ブランジェリーナは2年前結婚するにあたり101ページの契約を交わした(写真:REX FEATURES/アフロ)

アメリカの金持ちにとって、結婚とはなんとも大変なもの。

日本でいうところの“慰謝料”がなく、離婚の時、どっちが悪かったかは関係なくして、金を多く稼ぐほうが少なく稼ぐほうに対して払うカリフォルニアでは、結婚前に、十分その時に備えなければいけない。だから、結婚が決まったら、高い弁護士料を払い、相手の弁護士と話し合いをさせ、綿密なる婚前契約(prenup)を作成し、署名するのだ。ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーは、2年前、正式に結婚するにあたり、101ページに及ぶprenupを用意し、サインしたそうである。それがあるからだけではないと思うが、このふたりの離婚で焦点になっているのは親権だけである。

Prenupがない場合、基本的には、結婚中にふたりが築いた財産は共同財産として二分割される。また、収入の差や、結婚していた年月により、一方が元配偶者サポートを一定期間払うよう命令されることもある。最近では、ジョニー・デップが、圧倒的に稼ぎの低いアンバー・ハードとの結婚においてprenupを交わしていなかったことがわかり、業界を驚かせている(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160527-00058122/)。

そうは言っても、ブランジェリーナのように100ページも書くことがあるものかと凡人の我々は思ってしまうが、億単位の金が絡む場合、決めておくべきことはたくさんあるようだ。その内容が時にいかに突飛であるかについて、最近のマライア・キャリーの婚約破棄騒動で、あらためて焦点が当たった。

2014年末、二度目の夫ニック・キャノンと破局したキャリーは、まだ離婚が完全に成立していなかった今年1月、オーストラリアのビリオネア、ジェームズ・パッカーと婚約している。だが、パッカーは、最近になって、ウエディングドレスの購入まで終わらせていたキャリーを突然捨てた。

彼らはまさにprenupを煮詰めていたところで、合意には至っていなかったが、今になって、その内容がメディアに流出している。それによると、離婚になった場合、パッカーは、結婚していた時期1年ごとにつき、キャリーに600万ドル(約6億2,500万円)、最大3,000万ドルを払うことを提案していたようだ。しかしキャリーはそれに不満で、5,000万ドル(約52億円)の一括支払いを求めていたようである。資産価値5億2,000万ドル(約542億円)のキャリーがそこまでごねる理由があるのかどうかは理解しかねるところだが、わからない部分はまだいろいろある。

たとえば、誕生日、婚約、結婚、結婚記念日など、理由が明らかな時に渡された物を除き、その商品の値段が25万ドル(約2,600万円)以上である場合、「これは自分からあなたへのプレゼントです」という書面が添えられていなければならないというのがひとつ。「プレゼントである=つまりこれはあなたが所有するものである」ということがはっきりしなければ、離婚において、それは共同財産とみなされてしまう可能性はある。とは言っても、愛する人に何かをあげるたびに、いちいち離婚した時のことを考えて証拠文面を添えるというのも、奇妙な話だ。

また、パッカーは、キャリーが使えるクレジットカードを渡すことに同意していたが、1ヶ月に彼女が使える上限を決めるつもりだった。その上限は確定しないまま、ふたりは破局している。さらには、彼女が彼のプライベートジェットを使う場合の規定まで述べられていた。

結局、ふたりは結婚しないままで終わったので、もはやこのことについて心配する必要はない。しかし、一般人からすれば驚きのprenupにサインしたセレブは、ほかにもいる。何人かの例を紹介しよう。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズとマイケル・ダグラス

25歳年上(ふたりは誕生日も同じで、ぴったり25歳違いである)で、ニューヨークの金持ち一家の生まれであるダグラスと結婚した時、ウェールズ出身のゼタ=ジョーンズは、一部から、「玉の輿狙い」などという揶揄も受けた。prenupを提案したのは、おそらく財産のあるダグラスのほうだったと思われるが、その内容はなかなか寛大。離婚した場合、ゼタ=ジョーンズは、結婚していた時期1年につき280万ドル(約2億9,000万円)をもらえ、さらに、離婚の原因がダグラスの不倫にあった場合、500万ドル(5億2,000万円)のボーナスをもらえることになっているのだ。夫妻の関係は近年危機に直面しているが、離婚はしておらず、まもなく結婚丸16年目を迎える。

ニコール・キッドマンとキース・アーバン

トム・クルーズと離婚し、アーバンと再び真の愛を見つけた時、アーバンより多くを稼ぐキッドマンは、prenupというロマンチックでない取り決めに乗り気でなかった。だが、周囲に説得され、彼女は、離婚した場合、結婚していた時期1年あたり64万ドル(約6,700万円)を払うと決める。しかし、アーバンには、コカインなどドラッグにはまった過去があることから、結婚中に違法ドラッグを使ったことがわかった場合、彼はいっさいこのお金を受け取れないという条件を付けている。

ところでキッドマンは、クルーズとの離婚において、クルーズに、実際よりも早い日を離婚/別居した日として申請されている。カリフォルニアでは、結婚期間が10 年を超えると、配偶者サポートの条件が払うほうにとって不利になると考えられていることからクルーズがそうしたのではないかと推測されている。

ジャスティン・ティンバーレイクとジェシカ・ビール

モテ男のティンバーレイクと結婚するにあたってprenupを主張したのは、ビール。しかし、彼女が強調したのは、離婚の原因が彼の浮気にある場合だった。ティンバーレイクが浮気したことでふたりが破局した場合、彼は彼女に50万ドル(約5,200万円)を払うということでふたりは合意している。かつてはブリトニー・スピアーズやキャメロン・ディアスとつきあったティンバーレイクだが、2012年にビールと結婚してからは良き夫ぶりを見せつけている。昨年4月、ふたりの間には長男が誕生した。

トム・クルーズとケイティ・ホームズ

ふたりのprenupでは、離婚した場合、ホームズは、結婚していた期間1年あたり300万ドル(約3億1,250万円)、最大3,300万ドルをクルーズから受け取れることになっていたと報道されている。さらに、結婚期間が11年以上だった場合、彼女は彼の財産の半分をもらえるともある。だが、5年半ほどでふたりは離婚。Prenupに明記されていたにも関わらず、ホームズは、年40万ドルの養育費をもらうにとどまっている。ふたりの離婚調停が驚異的なスピードで解決しているところを見ると、彼女はお金よりも、とにかく早く終わらせることを重視したのではないかと思われる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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