今冬としては強い立春寒波も長続きせず
立春寒波
立春は、暦の上では春が始まる日とされていますが、実際は一年で一番寒い頃です。
気温は低くても、冬至のころに比べれば、日入りも遅くなって光であふれるようになります。
「光の春」ともいわれる所以です。
令和2年(2020年)2月4日の立春以降、西高東低の気圧配置となり、今冬一番の寒気が南下しています(図1)。
立春寒波です。
北日本や東~西日本の日本海側で雲が多く、雪や雨の降る所がある一方で、太平洋側の地域を中心に晴れる所が多くなっています。
日本海には筋状の雲が現れ、寒気の南下を示しています。
しかも、筋状の雲の発生場所は、大陸の沿岸に近い場所(離岸距離が短い場所)で、寒気が非常に強いことを示しています(タイトル画像参照)。
寒気の南下を知る目安の一つに、上空約5500メートルの気温があります。
この上空約5500メートルという高さは、地上気圧の約半分になる高さですので、この高さより上には空気の半分、この高さより下に空気の半分があります。
つまり、大気の真ん中の高さということができますので、寒気の南下の目安になるわけです。
6日朝の上空約5500メートルの気温は、大雪をもたらすとされる氷点下36度の寒気が、東北地方まで南下しますし、北海道には氷点下42度以下という非常に冷たい寒気が南下してきます(図2)。
地上で雨になるか、雪になるかの目安は、上空約1500メートルの気温が氷点下6度ですが、6日朝の上空約1500メートルの気温は、九州・沖縄を除いて氷点下6度以下です(図3)。
今冬の西日本は、記録的な暖冬となっており、まだ多くの地点で初雪を観測していませんが、立春寒波によって2月5日の佐賀に続いて、遅ればせながら初雪を観測するところがあるかもしれません。
ただ、初雪の日の平年値との比較、昨年との比較においては、注意が必要です。
【追記(2月7日14時)】
2月5日夜遅くに神戸で、2月6日午前に下関、広島、和歌山、高松、徳島で初雪を観測しました。
このうち、広島と和歌山は観測史上最も遅い初雪の記録を更新しました。
また、下関は115年前の最も遅い初雪の記録とタイ記録です。
佐賀の初雪
2月5日朝の佐賀市では、冬型の気圧配置によって寒気が流れ込んだことから「みぞれ」が観測され、初雪となりました。
九州の県庁所在地では、今シーズン初めての初雪で、「平年より56日遅く、昨シーズンより39日く」観測しました。
昨シーズンの初雪は、平成30年(2018年)12月28日でした。
もし、あと2日早い2月3日に初雪を観測していたら、「平年より45日遅く、昨シーズンより37日遅い観測」となります。
37日(=39-2)前年より遅くですが、54日(=56-2)平年より遅くではありません。
これは、2月3日昼過ぎに、佐賀の初雪の平年値が12月20日から12月11日に変わったからです。
これは、気象庁が行った地方気象台及び測候所における目視観測通報の自動化に伴うものです。
目視観測通報の自動化は、平成 31年(2019年) 2 月 1 日からは関東甲信地方の地方気象台、令和2年(2020年)2月3日からは残りの地方気象台や測候所で行われました。
現在、職員が目視で観測・通報を行っているのは、新潟、名古屋、高松、広島及び鹿児島の5つの地方気象台と、札幌、仙台、東京、大阪、福岡の5つの管区気象台、そして沖縄気象台の合計11観測地点です。
目視観測が自動化になると、晴れや曇りなどの天気は、気温や湿度などの各種の観測を総合判断して決めますので、職員が行う観測との差がでてきます。
初雪の観測は、この差が大きい項目の一つで、気象庁では、自動化したと仮定した場合の初雪の日を遡って計算し、新しい平年値を求めています(表)。
長続きしない立春寒波
暖冬が続いていましたので、立春寒波は寒いという印象をうけると思いますが、最高気温・最低気温ともに平年を下回るのは北日本だけです。
東日本は、立春寒波で最高気温は平年を下回りますが、最低気温は下がって平年並みです。
例えば、東京の6日の最高気温の予報は平年を大きく下回る5度位ですが、最低気温は平年並みの1度位です(図4)。
そして、西日本では、最高気温、最低気温ともに立春寒波で下がって平年並みです。
日本付近への寒気の南下は、順調に東へ移動する予報で、来週の2月11日の建国記念の日までには、最高気温、最低気温ともに平年値を上回るところが多くなります。
再び暖冬に戻る予報です。
というより、春のようになるといったほうが適切かもしれません。
令和2年(2020年)の冬は、立春寒波があったとしても、記録的な暖冬になりそうです。
来週の2月11日の建国記念の日以降は、本州の南岸を低気圧が短い周期で通過すると予想されています。
このため、東京では、最高気温、最低気温ともに平年より高くなり、雨が降る可能性がある曇を示す黒雲マークの日が続きます。
そして、その大半の日に傘マークもついています(図5)。
2月15日以降は降水の有無の信頼度が、5段階で1番低いEや、2番目に低いDが続いていますが、「3月下旬から4月上旬ころの梅雨のような曇雨天(菜種梅雨)」のような天気になりそうです。
もっとも、暖冬によって菜種の生育が進めば、「菜種が咲くころの梅雨のような曇雨天(菜種梅雨)」という定義には、あてはまります。
タイトル画像、図2、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。
表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。